第11話 近衛騎士は暗躍したい。
さて、エウリュアーレ殿下の側仕えではないが一緒にいろと言われたら文字通り一日中一緒にいろと言う意味だったらしく、施設紹介から始まり部隊設立までの間私が住まう部屋まで案内された。
近衛騎士団の方には伝来が出されていた。
「近衛騎士団から貰った部屋より狭いし質素」
私の世話係として銃士隊の女性兵士があてがわれた。真面目そうな顔で部屋の隅で直立不動にしているので、休めと言ったら休めの姿勢を取った。何か、自衛隊とかのアレみたい。
流石軍隊って変な所で感心した。私は取り敢えず、やる事ないから椅子に座ってバランス取り。最近のマイブーム。暇さえあればやってる。
バランスとりを始めて何分かしてると部屋をノックされる。
「どうぞー」
返事をすると兵士が素早く扉を開けた。そして、慌てて気を付けをして敬礼をする。見ればエウリュアーレ殿下だった。
「あ、殿下。どーも。何か御用ですか?
仰ればお伺い致しましたのに」
新記録樹立しそうだったけど、殿下が来たのでしょうがない途中でやめる。
「あ、うん。いや、何してたの?」
「暇だったのでバランスとってました」
「……楽しい?」
「ここ最近のマイブームです」
「そ、そう。
それより、明後日から直轄領への視察に行くのだが準備をして貰いたい」
「急っすねぇー了解」
準備って何すんだろ?
まぁ、いつもの旅行セットで良いか。
「まだ諸々が宿舎にあるんで取りに行っても良いですか?」
「うん、馬車を貸すからついでに引っ越してくると良い」
「えー?そんな長くここに居るんっすか私?」
二、三日で終わらんの?
「半年から一年はあると思う。
何せ一から部隊を作るんだから」
うへー面倒臭い。
「そう言うわけだから行ってきなさい」
そう言うわけだから私はお付きの兵士と共に近衛騎士団に向かう。兵士の顔が緊張の色に染まる。緊張の色って何色なのか知らんけど。
「今度は何だ?」
事務所に顔を出すとミュルッケン団長が眉を顰めた。そんな、迷惑ごとを毎回持ち込んでくるみたいな顔をするなよ。
「何か、エウリュアーレ殿下が視察行くから付いて来いって言うのでついて行きます」
「そう。行ってらっしゃい」
「あと、あの要塞に住むことになりました。
引っ越しもします」
「週に一度こっちに顔を出して報告しなさい。
無理なら理由を添えて事前に報告に来るように」
「わかりましたー」
しつれいしまーすと頭を下げて後にする。兵士は私の後ろをついてくるだけ。なんか、アレっぽい。FFとかドラクエの仲間。
全く関係ない場所とかを彷徨いてみるが、やはり付いてくるのでちょっと楽しくなった。闘技場に向かい、各近衛騎士団の事務所に向かいドラクロア副団長に挨拶しに行く。
「なんだサブーリン?」
「いえ、特に用はないです。
この子がエウリュアーレ殿下が私につけて下さった銃士です」
「そうかい」
だから何だと言う顔をされたが、別に用はない。
「それでは失礼します」
「……ああ」
それからあちこちで案内してやってから隊舎に向かう。
それから荷物を運び出すのだが荷解きすら終わっておらず直ぐに終わる。
「短い部屋だった」
腰に火かき棒を提げて外に出る。
外に出ると近衛騎士団長が立って居た。
「あ、団長。お疲れ様でーす」
「やあ、君は外せ」
団長は傍で敬礼して居た兵士に命じると兵士は失礼しますと去っていく。
「少し歩こうか」
「はぁ、構いませんよ」
団長と共に中庭を散歩。
「僕は、この国と陛下を愛している」
いきなりの愛の告白。
「私ではなく、女王陛下に直接おっしゃれば?」
「そういことではない。
まぁ、良い。陛下はエウリュアーレ殿下の謀反を本気で考えている」
ふむ。
「理由を聞いても?」
「女王陛下が即位する時にエウリュアーレ殿下は陛下に仰ったそうだ。我が王たるステンノ姉様。私は貴女が賢王ならば忠実なる僕として国を庇護しましょう。しかし、国民や国を乱すならば謀叛の最尖兵として立ち上がり貴女の首を取り、国を国民に返す」
成程ね。
「国を正しく導けよと言うエウリュアーレ殿下なりの激励では?」
「確かにあの方らしい激励ではあるが、陛下は幼少より殿下と共に過ごされた。エウリュアーレ殿下は、此処だけの話にして欲しいが我が王よりも能力があるのだ。幼少期まではエウリュアーレ殿下が次期王であるとまで噂されていた。
しかし、実際は姉たる現女王陛下が即位なされた」
なーほーね。
「そして、此処十数年で軍を改革し領地平定に奔走。国民の気持ちは女王よりも殿下に」
「そうだ」
「殿下を殺せと?」
私の言葉に団長はにっこり笑う。
「謀叛の疑いがあり計画が停められぬ段階ならば、ね。
だが、それまでは君は情報を集めミュルッケン団長を通じて報告をするだけで良い」
「成程、理解しました」
ワタクシ一大任務を受けてましたよ?
「では、任せるよ。
これは僕からの信頼の証だ」
団長が懐から一本のダガーを取り出した。
「魔剣、死の刃だ」
「はぁ……はぁ?」
聞いたことある。伝説の殺し屋が使っていた国家指定の禁封武器。一太刀斬りつければ如何なる者でも死に至る恐ろしいダガーだと。
「女王陛下から使用の許可も降りている」
「……使わぬ事を祈ります」
「まったくだ」
何の飾り気もない片刃の大振りなナイフだ。革製の鞘に収まり、引き抜くと真っ黒く禍々しい雰囲気を醸し出す黒い刀身が現れる。
鞘に納め、腰にぶら下げておく。
「じゃあ、宜しくね。
君には毎月自由裁量で何に使っても良い金貨10枚を届ける。それは僕個人から君に渡すものだ。
励んでくれ」
めちゃくちゃ重大な任務じゃん。
「がんばりまーす」
そう答えるしかないよね。
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