第9話 新しい物は排斥されがち。特に軍だと。

 史上最高な面倒事を入団3日目にして押し付けられた。何が近衛銃兵隊だ。第五近衛団長の面倒を私に押し付けられたと見るが正しい。

 腹いせに練兵場で銃をぶっ放してやると意気込んでやって来たのが終業1時間前。


「さぁ、撃ってみな!」


 私の前には完全武装したドラクロア副団長。

 馬鹿なのだろう。


「えー、じゃあ、まぁ、死んでも文句言わないとの事なのでぇ撃ちます」


 火縄銃には弾も入っていれば火の付いた火縄も付けてある。つまり、何時でも撃てますよと言う物だ。火蓋はまだ開けてないが、今開けた。

 前世ではサバゲも時々やってたんだ。銃の構えくらい知ってラァ!!

 脇をしっかりと閉じてキュッと体を細める。右足を後ろに引いて左足を前に。そして、引き金を引くと、銃自体が軽く震えた。火縄の付いた火縄挟みが火蓋に落ちたのだ。

 一拍あるかないかぐらいの所でスバァンと銃口が跳ね上がる。青白い煙が辺り一面に広がり、同時にドラクロア副団長が後ろにもんどりうって倒れるのが見えた。


「おお、当たった」

 

 距離は15メートルも無い。しかし、当たると嬉しい物だ。

 近付いて見ると、ドラクロア副団長は目を見開いて倒れている。胴鎧には人差し指が入る位の穴が空いていた。


「どれどれ?」


 ドラクロア副団長の首に手を当てると脈は無い。


「おー死んでる。

 取り敢えず、傷口を見てみよう」


 胴鎧を急いで脱がせると、彼女の下に着ている綿の服が真っ赤になっていた。


「まだ心臓止まってる?あ、心臓に当たってるや。この人、どうやったら蘇生するの?」


 脇で銃すげーとなっている彼女の部下に尋ねると心臓の異物を取り除けば蘇生するとのこと。


「つーことは、心臓から弾を抜き取らねばならないと言うことですかぁ?」

「そうだ」


 誰がやるの?と見回すと、一人の女騎士が前に出て来る。他の騎士と違って教会所属を示すシスターが被る頭巾を被り、死者蘇生のマークみたいなマークをした前垂れ付きの貫頭衣を被った鎧を纏っている。

 教会所属の騎士は聖騎士と呼ばれ、所謂衛生兵だ。いや、衛生兵より偉いので軍医か。


「私が」

「うっすー」


 どーぞ、と変わると聖騎士は素早く服を破く。ドラクロア副団長の褐色の肌が現れて実に豊満なおっぱいが露わになるも、被弾によりグチャっててグロい。

 男の騎士達は慌てて後ろを向いていた。


「あ、聖騎士ちゃんストップして。

 全員注目!」


 だが敢えてみんなに見てもらおう。


「銃士隊の人達も来てー」

「サブーリン殿!見せ物ではありません!」

「いーえ、見せ物にします。

 銃で撃たれるとはどう言う事なのかを理解して下さい。距離が15メートル程。しかも、ドラクロア副団長は鎧も着ていた。

 それでも鎧の一番硬いところを貫通して、不死身のドラクロアを即死させた訳ですねー

 今は私が撃ったっすけど、誰が撃ってもこうなりまーす。グロいですねー副団長のオッパイはでっかいですねー」


 無事な方を揉んでおこう。


「はい、続きをどーぞ」


 オッパイモミモミした後に聖騎士ちゃんとバトンタッチ。流れるような手つきで胸をナイフで切り、心臓を露出。それから弾をパンチで掴むと一気に引っ張り出す。すると、驚くべき速さで傷口が引っ付いて直り始めた。


「おーすげー」


 ズブリとくっついていく傷口に指を突っ込むと聖騎士ちゃんにそこそこの勢いで手を叩かれた。


「何をなさってるのですか!?」

「いやー指突っ込んだらどーなるのかなーって」


 結果は指に引っ付きそうになった。


「経歴柄色んなやべー奴を見てきたつもりだけど、アンタには負けるな」


 気を取り直したドラクロア副団長が私を呆れた顔で見ていた。

 そんな褒めるなよ。何もでねぇぞ?


「あざまーす。

 ドラクロア副団長みたいな死なない人ってこの騎士団に一杯います?」

「いてたまるか」


 なんだーつまらん。


「暫くはあれだなー

 練習は木の的とかにするかー」


 人とか撃った方がええよなー実戦的に考えたら。


「んーどうするかなぁ。

 まぁ、ちぇるみなーと殿下に聞けば良いか」


 なー?と銃士隊の連中に言うと首を傾げられた。


「ちぇ、チェルミナート殿下とは何方でしょうか?」

「え?あー、えーっと……あ、あー……あうりゅえーれ殿下?」

「全然違うだろうが。

 そして、エウリュアーレ殿下だ。お前、近衛なんだから王族の名前ぐらい覚えろ」


 ミュルッケン団長が私を睨んだ。


「エウリュアーレ、エウリュアーレ殿下。

 エウリュアーレー殿下了解」


 何かで聞いたことある気がする。

 何だっけかなぁ。


「まぁ、良い。

 殿下の機嫌を損ねて首を刎ねられんようにしろよ」


 それじゃあ、頑張ってと完全に放り投げられた。何じゃそりゃ……

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