第8話 女王陛下のダウナー騎士

 と、言うわけで王城に戻ってきた。戻るとそのまま女王陛下の前に呼ばれる。待ってました感。


「この格好で陛下の前に?」


 銃士の一人がコチラを見てきた。


「え?そうだよ。

 じゃ、行こうか」


 謁見の間に入ろうとすると近衛騎士達が武器を置いていけと言い出した。


「馬鹿。そんな事したら陛下に銃の凄さが伝わらんだろうが」


 ミュルッケン団長の許可もあると嘯いてみるとミュルッケン団長は凄まじい反応速度で私を見た。


「早く開けろ。

 女王陛下を待たせるな」


 顎で扉をしゃくると新人の癖にと悪態をつかれて扉が開いた。中に入り、取り敢えず5人には扉のすぐ前に傅けといっておく。

 私はその前で傅いておく。因みに謁見の間には全近衛騎士団長達が勢揃いしている。

 暫くして女王陛下の登場だ。背後で生唾を飲み込む音が聞こえて来た。


「面をあげよ」


 顔を上げると女王陛下は相変わらず立っていた。


「それで、銃はどうだった?」

「銃は昨日まで農奴だった者でも今すぐに騎士を殺せますね。凄い武器ですよ」

「ほう。お前をもってしても対処出来ぬか?」


 女王陛下が少し興味を持ったのか玉座に手を掛けた。


「ええ、銃はすごいですよ」

「どの様に?」

「この銃士達のいる場所から女王陛下を殺す事は非常に簡単です」


 銃隊気を付けと怒鳴り付けると背後の銃士達はバンと立ち上がった。反射神経だ。最早。


「構え!」


 その号令にも反応して銃を構え、銃士達は慌てて銃口を下ろす。それもそのはず、近衛騎士団長達が殺気ムンムンで普通に剣を抜いて女王陛下の前に立って居たのだから。


「冗談ですよ?

 火縄に火すら付いてないし、そもそも装填してませんって」

「サブーリン!!」


 ドラクロア副団長の怒鳴り声に合わせて後ろの扉から近衛騎士達が飛び込んで来る。


「何でもない。戻れ」


 女王陛下の言葉に近衛騎士達は困惑した様子で外に出て行った。


「その号令が無ければ打てないのなら意味がないだろう」

「銃を撃つならなんら号令はいりません。

 銃士隊、何時もの射撃姿勢を取れ」


 告げると銃士達は女王陛下を見た。女王陛下は構わんと告げ、その体制をとった。案の定、三段打ちみたいな体制を取っている。


「此処からはイメージして下さい。想像です。

 この組が十数組並んでます」


 ずらーっと。

 部屋の隅から隅を歩いてみせる。


「号令知らないけど、なんて言うの?」

「前列射撃姿勢を取れ、です」


 古兵に訊ねると答えてくれた。


「前列射撃姿勢を取れ!

 あ、団長達はこっちに突っ込んできてください。

 次は?」

「撃鉄下ろせ」

「撃鉄下ろせ!」


 カキンと最前列の兵士が火縄を挟む所を下ろす。


「あとは団長達が突っ込んでくるまでお前達が何時もやってる撃ち方を続けろ」


 古兵の肩を叩き、脇に下がる。

 古兵はそこから真っ直ぐこちらに突っ込んで来る団長達に撃つ。撃つ。撃つ。最初にたどり着いた騎士団長はこっちにと告げ、最後の1人がかけて抜けてくるまで6回は銃を撃った。


「6度貴方方は弾丸を浴びました。

 騎馬ならば1発しか撃てないはずですが、馬をやられます」

「成程、銃とは凄いものだな」


 女王陛下は興味を失った様に告げた。

 多分、此処迄は方法が違えどえありゅあーれ殿下が話したのだろう。


「それで、銃士を近衛が装備する利点と欠点を端的に述べよ」

「利点はー……近衛も国軍も銃持ってんのかーこの国はすげー金持ちなんだなー戦争仕掛けるのやーめよって思わせる事っすかねぇ?

 欠点は金かかる事ですねぇ。この銃士一人で王立軍騎士と同じぐらいの金必要ですよ。

 銃、火薬、火縄に弾。それだけの金を騎士ではなく銃に割けますか?って所ですねぇ」


 金こそ力。マネーイズパワー。パワー!


「成程。

 よし、第五近衛騎士団に銃兵隊を組織させる。ミュルッケン」

「御前に!」


 ミュルッケン団長が素早く傅いた。


「お前の権限で銃兵隊を組織し、近衛銃兵隊を確立せよ。人選等もお前に任せる」


 女王陛下はそんな適当な感じで任命すると去って行った。


「サブーリン。貴方は明日からエウリュアーレ殿下の許に出向して銃士隊設立に向けていろいろとなさい」

「えぇ?そんな適当なー」

「貴女には言われたくないわ!

 殿下から情報を集めて貴女が指揮を取りなさい。今日はもう戻って良いわ」


 別れと半ば強制的に言われて取り敢えず解散した。

 どーすんのよ、これ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る