第6話 人の心を持たない王妹様と第五近衛騎士と人の心を持つエルフ

 さて、妹様の正体で私達は謁見の間らしいどう考えても作戦会議室に通された。

 作戦会議室だから部屋のど真ん中に地図が置いてあり、四方の壁も地図と資料で埋まっていた。


「この部屋は?」

「戦闘指揮所だ。

 エウリュアーレ殿下がお考えになられた戦争の指揮を取る最適化した場所だ。

 外側の情報は遠話の魔術で逐次集められる」


 部屋の隅にいたナポレオンみたいな格好をしたダンディおじが教えてくれた。誰だろ?


「成程」

「そんなもの、前線で指揮官が指揮を取れば良いのでは?」

「近衛騎士は相変わらず大局が見えてない」


 ミュルッケン団長の言葉にエウリュアーレ殿下が笑いながら椅子に座った。


「戦争ってのは政治の結果だ。

 政治の不手際が戦争に直結し、戦争の結果が戦後交渉に直結する。

 さらに、戦争はそれまでの準備により結果が終着する。国家間の戦争は戦場の状況を把握して適時適切な支援を与える事だ。

 それを可能にするのかこの部屋だ」


 ほーん。私に関係なくね?


「はぁ……成程」


 ミュルッケン団長も半信半疑だ。


「まぁ、今回お前達を呼んだのはそっちじゃない。

 先程そっちの美人ちゃんが皆殺しにしてくれた銃士隊の近衛騎士団に本格的導入だ」


 銃、火縄銃。この世界でもあるが、まぁ、高いし当たらないし、火薬準備するだけでかなり金が掛かるし、何より全てにおいて金が掛かる。

 故に大量導入している国はほぼない。王国周辺でも基本的にクロスボウや弓矢が基本だ。

 

「ステン姉様は金の無駄と言うが、銃を装備するのはこれからの時代必須なのだ」


 エウリュアーレ殿下は熱弁し始めた。銃の未来とこれからの戦場の展望を。全く興味無いしどうでも良い。漸くすると、銃は如何なる人間でも兵士に出来るし騎士をも殺せる。故に大量導入して兵力の基盤を整えるのに活躍出来るとのことだった。


「だから、銃士隊設立の為にお前達に協力して欲しい。第五近衛は弓矢を主力としているようだし」


 ミュルッケン団長を見るとミュルッケン団長は首を小さく左右に振っている。


「話を漸くすると、えありゃあーれ殿下は近衛騎士ををはじめとして騎士階級を撤廃したいと言う事ですか?」

「ん?んー……騎士階級の撤廃はせん。

 但し、騎士の仕事は馬に乗って鎧を着て剣を振るのではなく兵士達の指揮統制役の取りまとめと後方での兵站を単にする部隊等の取りまとめだ」


 あー……多分この人は軍隊の士官を騎士にやらせたいんだ。


「兵站?そんな物商人がやれば良いのでは?」


 戦争では商人が戦場まで来て食事を販売する。後方に作られるテント村では娼婦までやってくる。


「私の構想を伝えるのは至難の業だな」


 私は何が言いたいかわかるけどね。言わんが。


「殿下の言いたいことがわかる?」

「商人の仕事を国がやって補給を確実にしたいって事では?」


 兵站はもちろん商人に全て委託しているわけでは無い。しかし、大部分の細かいところは商人に請け負ってやらせている。物資の移動、調理、分配。武器や防具の整備や新調などなど全て商人が引き連れてきた商隊にいる鍛冶屋などだ。



「商人ギルドが怒りそうだな」


 ミュルッケン団長は首を振って無理な事を言うなと言う顔だった。


「そこで、軍が出す食事は質素な物にする。金の無い兵士達はそっちで飯を食う。それが嫌な奴は商人から食事を買う」


 ほう、成程な。

 考えたな。どちらかを完璧にしないのか。


「それで、えありゃーれ殿下はその兵站軍を組織して騎士を指揮官に当てると?」

「うむ」

「反乱起こされますよ?

 領地すら無い騎士は貴族のお眼鏡に叶うべく武勲を立てるのに、兵站なんて後ろの前線に出てこない部隊に付けられたら……ねぇ?」


 ミュルッケン団長を見ると団長もその通りだと頷いた。

 そう言えば騎士ってどうやっていなくなっていったんだろ?


「うーむ。領土は本当に必要なのか?

 給金ではダメなのか?」

「食っていけないじゃ無いですかー

 あうりゅーれ殿下は王族なんで大丈夫ですけも、地方騎士なんて地方貴族の下に居て貴族のの治める領土の村の代理統治や納税監督とかして暮らしたんですよ?」

「なるほど。

 それを金でやるのは不可能か」

「金なんて街でしか使えません。

 地方の村は金より物ですよ。酒もパンも基本的にはブツブツ交換してます。教会が無償でパンと酒振る舞ってそのついでに神の教えとか解いてますけど」


 私は一切興味ないから聞いてなかった。


「まぁ、女王陛下と相談してやればいいんじゃないっすかねー?」

「お前は銃士をどう思う?」

「国王軍には、まぁ、はぁ、良いのでは?」


 国王軍は貧民救済策の一つであり、強制徴募はせず自主的に入る物だ。食い詰めて入るものもいるが、無理矢理入れされらるよりは質や士気は段違いだ。

 また、この国では魔物の駆除を国王軍の仕事として他国では冒険者という制度を採用していない。魔物と戦い、その資源やダンジョンの管理も国が一元化してその宝や鉱石は全て国が吸い上げている。

 対外戦争でも魔物の大規模発生も他国よりも高い統制と質で当たれる。勿論、兵士一人の質は他国の冒険者の上位に比べれば劣る。

 あと、騎士として食えなくなった者も国王軍に居たりする。


「近衛騎士団には不要、と?」

「んー……あれば良いけどなくても良いのでは?程度の存在かと」

「その心は?」

「人が足らない」


 銃士隊を作るにしても一個小隊程度ではどうにもならんやろ。


「……成程なぁ」

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