第76話 伝説の天使五人が再び揃った日
「美桜ちゃん、やっぱりすごいなぁ」
「そうかな……?」
病院への搬送を無事に終わらせて、帰路についた三人。やはり機内での話題の中心は美桜だった。
実際に、彼女の判断には間違いがなかった。薬の種類や量なども適切であり、回復のために点滴の処方までが行われていたため、病院では経過観察として引き継がれるだけだったという。
「面白かったのは、院長先生だよねぇ。『なんで美桜ちゃんが?』って顔をしてたもん」
やはり、この小島美桜という少女も話題に上がるだけのことはあるのだろう。彼女が
「私、そろそろちゃんと答えを出さなくちゃいけないね」
留守を守る二人が待つ島が見えてくる。
「渚珠ちゃん……」
「うん?」
「着いたら、時間ありますか?」
「いいよぉ」
「奏空ちゃんも……」
「もちろん」
機体を着陸させて、片付けもそこそこに、渚珠は全員を宿泊フロントのソファーに集めた。
「美桜ちゃん、答え出たの?」
「はい。決めました」
渚珠以外が見守る中、美桜は頷いて、正面に座ってうつむいている渚珠の手を取った。
「…………まだ、駆け出しですが、ここで一緒にいさせてください」
「美桜ちゃん……」
結果的には美桜がどちらの答えを出しても、同じだったかもしれない。顔をあげた渚珠の目は真っ赤で、涙がすでに何本もの筋を作っていた。
「さっき言ってくれたんです。新しいメンバーですって。すごく嬉しかった。あの緊急事態で、まだ答えを出せていなかった私のことを言い切ってくれて。あとで責任問題になっちゃうかもしれないのに。この最強チームの正規メンバーとして迎えてもらえるなんて、夢みたいです。精いっぱい頑張ります」
「渚珠ちゃん、よかったね」
「うん……、うん……。ありがとぉ……」
美桜の手を握りながら、カーペットの床に座り込んでいる渚珠に声をかける。
「渚珠ちゃん、これで揃ったよ」
「そうか。これで五人揃った……」
美桜の加入、単にそれだけではない。彼女たちに課せられた重大な任務がこれで果たされる。
「第2期ALICEポート結成は今日になるんだ」
美桜は正式に画面への電子サインをすませて、凪紗がデータベースへの登録と即時反映を行った。これで彼女が迷惑がっていた勧誘を停めることが出来る。
その日は、手続きや歓迎の用意で午後の時間はあっという間に過ぎていく。
「ご家族には報告した?」
「はい。今朝連絡しました。あれだけ考えて決めたのだから、自信持ってやりなさいって」
「なんだぁ、そんな早くに決めていたんだぁ」
その日の夕食の席はいつもより賑やかだった。
「いつからこっちに移ってくるの?」
「そうだよ、制服とか家具とか用意しなくちゃ」
「わー、やることいっぱいなんだぁ」
忙しくなると口々に言うものの全員が嬉しそうだ。
「でも、美桜ちゃん、ポートの就任研修受けてないでしょ? あれどうするの?」
規模が小さいとは言え、星間連絡ポートへの就職になるのだから、その基礎研修とやらが必要になる。
「その辺は戻ってコロニーでも、こっちに来てからでも大丈夫。美桜ちゃんと相談して決めるから」
その忙しさは美桜も同じで、翌日は渚珠と二人で必要最低限の家具の購入や制服の採寸の予定を入れた。
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