第5話ときめくマドンナ

マドンナは旭高校で数学教師をしている。教師歴4年の26歳の若者である。

この高校に今年の春赴任して、直ぐにヒロ坊とトノ様が声を掛けてくれて、仕事がしやすい環境にあった。

恋する余裕は無かった。


それは、いつもの様にグランドの端っこのベンチで昼食を摂っている時だった。

「僕もここで食べていいかな?」

声の主は英語教師の久保田だった。アダ名はジャニー。

「ど、どうぞ」

久保田は惣菜パンを食べながら、ペットボトルのお茶を飲んでいた。

浅黒い肌は健康的で腕が太く、胸がキュンとなった。

「マドンナ先生、ここ慣れた?」

「は、はい。先輩に恵まれてるので」

「あ~、ヒロ坊とトノ様でしょ。俺もあの2人に助けてられたよ。面白い先生たちだよね?」

「はい。ジャニー先生はお酒好きですか?」

「タバコ吸っていい?」

「どうぞ、どうぞ」

「俺は酒、好きだよ!そうそう、始めはヒロ坊とトノ様によく飲ませてもらったよ。あの2人同い年でね30歳なのよ。で、俺が27歳だから、弟みたいだ!って言われてさ」

マドンナはカフェオレをチューチュー吸いながら、

「わたしも、先週の金曜日、飲みに誘われて楽しかったです。今週の金曜日、どうですか?」

マドンナはぐいぐい行くタチなのだ。


「おやおや、お熱いですな~お二人さん」

「何ナニ~、妊娠した?」

ヒロ坊とトノ様だった。

「ウワサをすればナンとやら」

「ジャニー君、何の話しだい?」

「いや、この4人で金曜日また飲みにいきませんか?」

「先輩、宜しくお願いします」

「あらっ、マドンナちゃん、この2人にに頭下げて何してんの?」

そこには、タバコを吸いにキャサリンが現れたのだ。

「分かった、今夜飲みに行こう。キャサリンも用事ないでしょ?」

「トノ様、あんた失礼ね。わたしは忙しいの、だけど今夜はいいわよ」


放課後、マドンナは保健室にいた。

「こういう気持ち久しぶりなんです。ジャニー先生に胸がキュンってなって」

「それは恋ね。ジャニーはバスケ部の顧問だし、カッコいいし、ま~若いっていいわね」

「キャサリン先生、わたし26なんです。適齢期じゃないですか?」

「わたしはあなたより、だいぶ年上だけど、1人よ。わたしの場合、更年期」

「今夜は宜しくお願いします」

「任して、バカ2人はわたしが相手してあげるから、あなたはジャニーとプライベートな話して盛り上がりなさい。もうすぐ、6時半ね。帰り支度しましょ」

「はいっ!」

マドンナは楽しみでしょうがなかった。出来れば、酔ったふりしてあの腕に抱かれたい。

この先生は意外に妄想癖があるのだ。


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