ねんねこにゃんにゃん

LeeArgent

ねんねこにゃんにゃん

お日さまはポカポカ。

風はそよそよ。

今日はとってもいい天気。ホノカちゃんはお家の縁側で、両手を広げて寝転がっていました。

とってもとってもお日さまが気持ちよくて、なんだか頭がポワーンとしてきます。

 

なんだか眠たいなあ。

でも、学校の宿題をまだやっていないなあ。

やらなきゃいけないけど、めんどくさいなあ。

後でやればいいや。明日までにやっておけばいいんだから。

 

おきるのがめんどくさくて、ホノカちゃんはぼーっと空を見上げて、寝転がったまま。

空を泳いでいる雲が、フカフカのお布団に見えてきました。

縁側の床は木の板で、寝るにはちょっと痛いのです。あのお布団が欲しいなあと思って、ホノカちゃんは雲を見ているのです。

 

「ホノカちゃん、起きて起きて」

 

誰かに呼ばれて、ホノカちゃんは起きました。周りを見ても、誰もいません。

誰がわたしを呼んだんだろう。そう思っていると、また誰かに呼ばれました。

 

「ホノカちゃん、こっちこっち」

 

縁側に何かが上がってきました。

1匹のネコでした。シマ模様で、茶色くて、尻尾が長いトラネコでした。

トラネコは金色の目をまあるく開いて言いました。

 

「ヒマならちょっと手伝っておくれよ」

 

ネコが喋るなんてフシギですね。

それに、手伝っておくれだなんて。何を手伝えばいいのでしょう。

でもホノカちゃんは優しい女の子でしたから、ネコを手伝うことにしたのです。

 

「何をすればいいの?トラネコさん」

 

「ボクと一緒におどっておくれよ」

 

トラネコは縁側からとび降りて、後ろ足で立ちました。そして、前足を手のように、パチンパチンと叩きます。

 

「ねんねこにゃんにゃん、トットット」

 

フシギな歌にあわせて、フシギなおどりをおどります。

両手をパチパチ、も一度パチパチ、片足立ちでトットット。尻尾は左右にフーラフラ。

 

「面白いおどりだね」

 

ホノカちゃんも楽しくなって、体が左右にフーラフラ。

 

「さあさ、手伝っておくれ。あのエネコログサを、空高くまで伸ばすんだ」

 

庭にポツンと生えたエネコログサ。そのまわりでトラネコがおどります。

 

「ねんねこにゃんにゃん、トットット」

 

両手をパチパチ、足をトットッ。

するとびっくり。エネコログサがグンと伸びました。

でもでも、まだまだ。空にはぜんぜん届きません。

 

「ほらほら、ホノカちゃんも一緒に」

 

ホノカちゃんは庭に出て、トラネコのマネしておどります。

 

「ねんねこにゃんにゃん、トットット」

 

パチパチ、パチパチ、トットット。

 

「ねんねこにゃんにゃん、トットット」

 

パチパチ、パチパチ、トットット。

エネコログサはグングン伸びる。空にはまだまだ届きません。

 

「伸びろ、伸びろ、どんどん伸びろ」

 

「ねんねこにゃんにゃん、トットット」

 

パチパチ、パチパチ、トットット。

エネコログサはグングン伸びる。空にはまだ届きません。

 

「伸びろ、伸びろ、も一度伸びろ」

 

「ねんねこにゃんにゃん、トットット」

 

パチパチ、パチパチ、トットット。

エネコログサはグングン伸びる。空にはもうちょっとで届きそう!

 

「いまだ!じゃれつけ!」

 

「じゃれつけ!」

 

トラネコがピョーンととぶ。

ホノカちゃんもピョーンととぶ。

エネコログサの先っぽにしがみつくと、エネコログサはグーンと伸びました。

屋根より高く、ビルより高く、山よりももっと高く。

雲より高くなると、エネコログサは伸びるのをやめました。その雲は、縁側で見た、お布団によくにたあの雲でした。

 

「やったー!ついた!」

 

トラネコはガッツポーズをして喜びます。そして、雲の上に寝転がりました。

ホノカちゃんも寝転がりました。フカフカの雲は、とっても気持ちがいいものです。

 

「ボクもホノカちゃんもがんばったね」

 

トラネコはニッコリ笑顔。ホノカちゃんはききました。

 

「どうしてトラネコさんは、がんばってエネコログサを伸ばしていたの?」

 

トラネコは言いました。

 

「ここまで来れたっていう嬉しいキモチは、がんばらないと手に入らない。だからボクはおどったのさ」

 

トラネコは大きなお口であくびして、丸くなってねむります。

ホノカちゃんもあくびして、両手を広げて目を閉じます。


パチリと目を覚ますと、縁側で寝転がっていました。ついさっきまで雲の上にいたのに、なぜでしょう。エネコログサも庭からなくなって、トラネコもいなくなっていました。フシギですね。

ホノカちゃんは、宿題が残っていたことに気付きました。めんどくさいなあと思ったけれど……

 

「トラネコさんもがんばったんだもの。わたしもがんばらなきゃ」

 

ホノカちゃんは、宿題をがんばることにしたようですよ。

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