第32話 ダッソウ②

 ルイが警官になることを猛反対したあの日。あの日からヨウの人生はまた動き出した。

 

 おじさんに頼まれ、いつもの場所にゴミを捨てに行った。その時に出会った。

 1台の車が捨ててあった。ヨウはその部品を分解して、ルイと飛行機を作っていた工場だった古い建物に持ち込んだ。

 最初は分解する目的でその場で車をいじっていた。だけどエンジンを見ると飛行機のことを思い出した。

 2枚あった設計図の一枚はおじさんに没収された。もう一枚は、今後飛行機を作らないようにルイも全く読まない本に挟んでいた。本に挟んだ設計図を取り出し、その日から作業を始めた。

 小さい頃に比べて時間は無くなった。夜から作業にかかろうとするとルイに怪しまれる。だからルイよりも早く起きて工場に出勤しなきゃ行けない短い時間で作っていった。

 朝が早いせいか、夜はすぐに眠くなる。ルイが警官になってからはルイが帰ってくる前にもう眠ってしまっていた。そして起きるとルイはまだ眠っていた。

 そんな日々を送り、ついに飛行機を完成させた。そしてすぐにおじさんが殺された。


 「この街にはもう俺の居場所はない。だから頼んだぜ。外へ連れていってくれ。」


 飛行機のボディを撫で、操縦席に乗り込んだ。後ろにはもう一人分の席がある。本当ならそこにルイが乗るはずだった。だけどルイはいない。

 外の戦争が続いていることはヨウもわかっていた。だけどヨウの中では、ここで警官に殺されるよりは、外の世界にいって殺される方がマシだと思っていた。


 父親の肩身であるゴーグルをかけるとエンジンを動かした。メーターを見る。針が刺している数値はどれも正常だ。


 「逃げよう!」


 プロペラを回し、ゆっくりと前に進む。

 この建物の前はだだっ広い道が続いている。小さな飛行機の滑走路としては十分なくらいの道がある。

 この薄い建物を破るぐらいで、飛行機の翼は脆くない。


 「行ける・・・・!!!」


 操縦桿を強く握り、飛行機が通るにしては小さい工場の入り口に飛び込んだ。


 バキバキバキ!!!


 工場を破り、外に出た。翼を確認するが曲がっていない。


 走るスピードも徐々に上がり、徐々に機体が浮いていく。


 「ヨウ!!」


 機体が完全に浮いた頃、ルイの声が聞こえた。

 振り向くとルイが追いかけてくるのが見える。その姿を確認してすぐ、ヨウはスロットルを目一杯押し込んだ。


 「じゃぁな、ルイ」


 ヨウはボソッと言った。もちろんその声はルイには届いていない。

 機体は、ルイの声を聞く気などないように上昇し、速度を上げていった。


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