第23話 セイギ①
ルイとヨウは大人になった。
ヨウはおじさんの工場で働き、ルイは警官になっていた。
「ただいま。」
ルイが家に帰っても「おかえり」の声はない。
ヨウは先に帰ってきて、ルイが家に帰る頃にはもう寝てしまっている。ルイもヨウが作っておいた晩御飯を食べて、お風呂に入ったらすぐに寝る。そして朝起きる頃にはヨウはもう家にいない。
そんな生活のおかげか、ルイの選んだ仕事が悪いのか、ルイとヨウはここ数ヶ月、まともに話していない。
仕事を決める時、お互い戦争に行かないような仕事にすることがヨウとの約束だった。だからルイは警官を選んだ。警官は街の治安を守るため戦争に行かなくていいのだから。
当時、警官になることを話すと、おじさんは「好きなように生きろ」と言ってくれたがヨウはそれに猛反対して。
あいつらは俺たちのお父さんとお母さんを殺したんだぞ!罪のない人たちを意味もなく殴るんだぞ!ルイはそんなになっていいのかよ!
両親の話を聞いた日から飛行機のことも両親のことも話したがらなかったヨウは、ルイの肩を掴みながらそう怒っていた。
だけどルイは、人を殴りたいから警官になると決めたわけじゃない。
組織を作り変える。ルイの狙いはそれだった。
意味もなく人を殴る、罪のない人を死刑にする、住民を街の外には出さない、これらは普通じゃないことだ。外の世界の本では人は自由に街の外は愚か、国の外ヘまで行っていた。外の世界の本では、人が意味もなく暴力を振るうことはなかった。
この普通じゃないことの原因は、この街の警官にある。この組織がまともになれば、きっと街も普通になる。そうすればいつか外の世界に自分の足で行くことができる。ルイはそう考えていた。
もちろんその考えをヨウにも話した。だけどヨウはルイが警官になることを納得しなかった。
世界を変えようと警官になった人なんてきっと何人もいる。だけどこの街は変わっていない。それはみんな警官という組織に飲まれてしまうからだ。そうヨウは言っていた。
事実、警官に入ってすぐの頃は「俺がこのおかしい世界を変える」と言っていたルイと同じ考えの人は多かった。だけど時が経つにつれ、「俺がこのおかしい世界を変える」なんていう人はいなくなった。
その理由は上からの圧力ももちろんあったが、街を歩いているだけで金がもらえる、気に入らないことがあったら人を殴ってもいい、それらの理由が彼らを腐らせてしまった。
「行ってきます。」
ルイは誰もいない家にそう告げると仕事へと向かった。
「異常があれば報告するように」
上官にそう言われ、今日も3人1組で街の中を警備する。ルイはこの街で異常が起こっているところは見たことがない。異常を報告しろと毎日のように言われているが、この街で異常があるとしたら、この組織だろう。そう思っていると目の前で異常が発生した。
「おい、お前今ぶつかったろ?」
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