第14話 ヒコウキ④
次の夜、ヨウは空き工場ではなく、おじさんの工場にいた。
中に誰もいないことを確認してから一部分だけ電気をつける。箱の中に入っているパーツを取り出し、どこでつなげるかを確認する。そして防護用のヘルメットと少し厚めのグローブをしてある機械の電源を入れた。
ジリジリジリと音を立て強い光を放つ。ヨウが小さい頃、おじさんがこれを使って車のパーツを作っていたのを覚えている。何をしているんだろう?と思い近づくとよく「危ないから近づくな」と言って注意されていた。遠くから見ていたその作業の映像は今でも鮮明に思い出せる。
その当時、おじさんのやっていた作業をどうしても自分でやりたくて夜中に工場に忍び込んでは不要な鉄の板をくっつけたり、切ったりして遊んでいた。機械の使い方はある程度わかっていた。
もしかしたらおじさんが戻ってくるんじゃないか、もしかしたら誰かがまだ残っているんじゃないか、そう言ったドキドキと戦いながらもヨウはパーツをくっつけていった。
「これでオッケー。」
くっつけたパーツを再び箱に入れ、機械を片付けると電気を消した。そして誰にもバレないよう空き工場までの暗闇を走った。
空き工場の扉を開けるとルイが待っていた。ルイは開く扉の音に驚いたのか、肩をびくっとさせてこちらを向いた。
「ヨウ!どこ行ってたの?」
振り向いたルイは、扉を開いたのがヨウだとわかったのか、ホッと安心した表情を浮かべ言った。
「これ」
ヨウは、箱の中のパーツをルイに見せた。ルイはそのパーツを手に取るとさっきよりも驚いた表情をしてパーツを見ていた。
「これ、どうやってくっつけたの?」
ルイの表情は驚きからだんだんと笑顔に変わり、目をキラキラと輝かせていた。
「溶接したんだ。おじさんの工場で。」
「すごいよヨウ!」
おじさんの工場からここに来るまでは、誰かにバレないか冷や冷やしていて、溶接ができた嬉しさなんて感じなかった。
だけど今、こうしてルイが目を輝かせているのを見ると、ヨウもパーツを溶接できた嬉しさが心の底からゆっくりと浮かんできて、素直に喜びたい自分と、ルイに褒められて照れている自分とがいた。
「これで作れるな」
「うん!!」
その日から拾ってきたパーツを大まかな形に組んでは、夜中におじさんの工場で溶接をして必要なパーツへと作り替えていった
日中は相変わらずおじさんの工場で働き、夜は、空き工場でパーツを組み、街の人が眠った頃を狙って溶接をして飛行機に必要なパーツを揃えていった。
ルイは溶接ができない。だけど設計図を見ながら拾ってきたパーツを組むことに注力してもらっている。そして午前の仕事から上がり、午後の明るい時間、勉強の時間を割いてパーツを探しに行ってもらった。
時には大きなパーツを見つけて夜中二人で運んだ。
そんな日が続いていたせいか、起きている時はずっと眠い、と言う日が続いていた。
「どうした?ルイ、あくびなんかして。夜更かしか?」
おじさんの工場であくびをしながら働いていると、おじさんが銃のパーツを運んできた。
「最近は素直に働くようになったな。」
箱に入った銃のパーツを置きながらおじさんは言った。
「まぁね」
銃を組み立てる時、ヨウの頭の中は飛行機のことでいっぱいで、おじさんへの受け答えなんて適当だった。
今晩は、どのパーツを溶接するか、そのイメージトレーニングをしていると時々、作業している手が溶接をする動きに流れてしまう。
早く夜にならないかな、そう思いながら仕事をしていた。
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