第13話 ヒコウキ③
「大きなパーツは、宝の山のわかりやすいところにな。」
歯を磨きながら、眠そうにヨウが言った。
昨日の夜、二枚目の設計図を書きながら二人で決めたことだ。パーツはバレないように箱に入れて運ぶこと。そして大きいパーツは一人じゃ運べないから夜に二人で運ぶこと。仮に一人で運べる重さでも、箱に入りきらない大きさだと他の人に見られちゃうから夜に運ぶこと。昨晩、この三つが飛行機作成のルールに追加された。
「うん、わかってる。」
二人とも眠い目を擦りながら準備をした。
僕は今日、休みだから、午後まで寝ていても大丈夫だ。だけどヨウが少しでも作業を進めやすいように朝からパーツを集めに行くことにした。
「んじゃ、バレないようにな。」
ヨウにそう念を押され、家を出た。
宝の山に着くと、ヨウが書き足してくれた設計図を開いた。
そこにはどんなパーツが必要かはもちろん、どんな動きをして飛行機を動かすのにどう必要なのかまで書いてあった。
「へ〜、このパーツはこういう意味があったんだ。」
他の言語で書かれた本を読んで設計図を書いた。だけどルイには、飛行機の専門的な説明はよくわからなくて、とりあえず必要なんだろうな、という感じで設計図に書き込んだ。
ヨウはその本を読んでいない。きっと読もうとしても読めないだろう。だけど文字が一つもない、図形だらけの設計図を見ただけで、どのパーツがどんな役目をしているかを理解したみたいで、ルイでもわかるぐらい詳しく書いてあった。
それを見るとパーツを拾いにきたことも忘れ、設計図にのめり込んでしまった。
「やばい!僕、パーツを拾いにきたんだった!」
自分がパーツを集めにきたことを思い出した。その時にはもう太陽が真上まで登っていた。
それから日が沈むまで、パーツを集めては空き工場まで走り、パーツを集めては空き工場まで走り、を繰り返していた。
その日の夜、家で食事を済ませると、ヨウと一緒に空き工場に向かった。
日中走り回ったせいか、ルイはヘトヘトで、今から何か作業をする気分にはなれなかった。だけどいざ作り始めると疲れなんて忘れるぐらい楽しかった。
設計図とパーツを照らし合わせながら似ているものを選んでは合わせて見て、小さなパーツで少しずつ形にしていく。だけどゴミ捨て場から取ってきた部品には限界があった。
「これ形はいいんだけどなぁ・・・・。」
形が良くてもどうしてもくっつけることができない。
「くっつけるパーツも探さないとかな・・・?」
「そんな都合よくないだろ・・・。」
作り始めてすぐに息詰まってしまった。それはまるで飛行機に「チェックメイト」と言われているような気がした。
「とりあえずできることをやろう。まだ方法はあるはずだから。」
ヨウのその言葉からまだ諦めたくない気持ちが伝わってくる。いつもの僕だったら、どうにもできない壁に当たってしまったら諦めてしまっているだろう。だけど「まだ方法はある」と模索しようとしているヨウと一緒ならできるような気がした。
「わかった。とりあえず今あるパーツの中から形が似ているものを並べていくね。」
ヨウよりも機械を組み立てることができない僕が、部品をどう組み立てるかを考えたところできっといい案なんて浮かばないだろう。だけど、ヨウがどうにかしようと考えてくれている姿を見ると、「僕も何かしなきゃ。」そう言う思いが勝手にルイを動かした。
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