第12話 ヒコウキ②

 ルイと一緒に飛行機を組み立てる。そう思うと眠れなかった。

 早く寝て、明日、パーツを探しに行ったり、設計図を頭に入れたりしていた方がいいということは、馬鹿なヨウでもわかっていた。だけど飛行機を一緒に作って完成したところを想像するとワクワクして寝ることなんてできなかった。


 「ルイ・・・?」


 きっとルイも一緒なんじゃないか。そう思って横の布団で寝ているルイに声をかけても寝息が返ってくるだけだった。

 ルイはやっぱり頭がいい。次の日のことを考えてちゃんと寝ている。

 もしかしたらルイはこう言った時のワクワクに鈍いのかもしれない。そうも思ったけど、次の日のことを考えていると思い込んで目を閉じた。


 羊が1匹羊が2匹・・・・。


 数を重ねていくとだんだん羊に機械的な翼が生えてくる。


 羊が6匹・・・ひこじが7匹・・・飛行機が8匹・・・・。


 ついに飛行機になってしまった。

 そしてその飛行機にヨウとルイで乗って空を飛ぶ。下にいる羊は、「メェェ」という声を上げてヨウたちを見上げている。その中に機械的な翼の生えた羊もいるが、彼らは飛べないのかヨウたちが乗っている飛行機の後を、走りながらついてくるだけだった。


□□□□□□□□□□


 次の朝、少し寝坊してしまい、急いで支度をしてなんとかおじさんの工場に間に合った。


 「どうしたの?」


 あくびをしながら作業しているとルイが呑気に話してきた。


 「ちょっとね。」


 ワクワクして昨日眠れなかった。なんてルイには言えない。そんなこと言ったら、もう一度、ヨウらしくない、という意味で「どうしたの?」と聞かれる羽目になるだろう。


 「僕、今日午前で終わりだから、午後はパーツ探してるね。」


 ルイは、ヨウにだけ聞こえる声でいった。


 「おい、ルイ、忘れたのか?作業は夜だけ。パーツ集めも作業の一つだぞ。」


 そういうとルイは「わかった」と小さくいってしょんぼりしながら作業に戻った。


□□□□□□□□□□


 その日の夜、二人は宝の山にいた。


 薄暗いライトが照らす鉄屑はとても鈍くサビも相まって、光が反射することはなく、近づくまでは真っ黒の塊にしか見えなかった。

 暗く足元が見えない中、黒い塊をライトに近づけて、使えそうなものは箱の中に入れ、ダメそうなものは遠くに投げて、を繰り返していた。


 「ヨウ、やっぱり僕が明るいうちに集めておくよー。」


 痺れを切らしたのか、ルイがそう言い出した。

 確かに暗い中でのパーツ集めは、ただ効率が悪いだけだった。効率を上げるには、明るいうちに集めた方が絶対にいい。みんなが働いている時なら1〜2往復ぐらいならきっとバレないかな。


 「そうだな。日中の仕事がない時にパーツは集めよう。」

 「そうだね。」


 ヨウたちは、パーツ集めだけ、日中にやることにして、この夜は拾ったパーツを持ち、空き工場に行った。

 そして空き工場で、宝の山からここまでどうすればバレないように来れるかを二人で考えた。


 「こっちの道ならバレないかな。」

 「うーん、そのルートだとここの道が人通りが多いよ。だからそこは、遠回りになっちゃうけど、こっちの道を通って行こう」


 ルートが決まるとルイは、集めたパーツを見て言った。


 「でも僕だけだと、どんなパーツを拾ってきたらいいのかわからないよ。」


 昨日の夜、ルイが眠れた理由がわかったような気がした。やっぱりルイは、頭のネジが外れている。そんな気がした。


 「設計図見ていけばわかるだろ・・・?」

 「あ、そっか。」


 いくら機械に疎いと言っても設計図を書いたのはルイだ。どんなパーツが必要で、似ているパーツぐらい見ればわかるだろう。


 「でもでも、ここに一枚は設計図あった方がいいよね?どうしよう・・・」


 ルイはそういうと一枚しかない設計図を見て悩んでいた。きっとパーツを取りに行く時、ルイが設計図を常に持ち歩くことになる。そうするとルイがここにいない間、ヨウが飛行機を組み立てられない。そのことを心配しているんだろう。


 「もう一枚必要なら書けばいいだろ。」


ルイのネジは確かに何処かへ行っている。ヨウはそう確信し、言った。


 「確かに!」


 大して名案でもないのに、ルイは「その手があったか」と言わんばかりに驚いていた。

 頭はいいけど、どこか外れている。ヨウからすれば、他言語で書かれている本をスラスラと読むことができるほど頭がいいのに、どうしてこんなことが考えられないんだろうと不思議に思っていた。


 この日、残った時間でルイはもう一枚設計図を書いて作業を終えた。

 ヨウは、ルイにもわかるようにどこにどのパーツを使うかを詳しく書き込んだ。天然なルイでもわかりやすいように詳しく。



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