第二章 ヒコウキ
第11話 ヒコウキ①
次の日、珍しく二人とも休みで、おじさんの工場を通り越して、ルイの言っていたゴミ捨て場に居た。
「ここだよ!ここが宝の山だ!」
ルイが元気いっぱいの声で言った。
ヨウの目の前には、確かに鉄屑の山があった。以前のヨウの目には、ただのゴミの山にしか見えなかった。「宝の山だなんて大げさだろ」なんて言っていたと思う。だけど今はルイの言う通り、宝の山に見えた。
捨てられているサビだらけのパーツは、ヨウとルイの目には光り輝く未来への希望のように見えていた。
「すごい・・・!これだけあればできる!」
「うん!」
ヨウとルイは、はしゃぎながら使えそうなものを探した。
二人で集めたパーツを前にすると、ルイは目を輝かせていた。
「ヨウ、これからどうする?どのパーツを使う?設計図のどこから組み立てる?」
ルイはずっとはしゃいだ様子でヨウに質問をし続けた。だけどヨウがその質問に答えることはなく、集まったパーツを見ながら何か考えていた。
「・・・ルイ」
「どうしたの?」
ふと呼ばれ、ルイはパーツから視線を移すことなく、反応した。
「これ・・・・どうやって運ぶ?」
ヨウが言ったことは、ルイは全く想像もしていないことで、頭にクエスチョンマークが浮かんでいた。
「こんなたくさんのパーツを運ぶのには、俺たちだけの力じゃ何回も往復しないといけない。だから何か大きな力があればいいんだけど・・・」
「運ぶって?ここで組み立てるんじゃないの?」
ルイの中では、ここで使えそうなパーツを見つけて、ここで組み立てて、それで空を飛んで街の外に行く予定だった。だけど世の中はそんなに甘いものじゃなく、ヨウから現実を突きつけられる。
「組み立てるのには何日もかかるし、その間に雨が降ったらパーツが錆びちゃってすぐ壊れちゃうかもしれない。だから屋根のある広いところで組み立てなきゃいけない。それにあいつらに見つかったらもう組み立てることも、街の外に行くこともできないよ。」
ルイは言われるまで気づかなかったが、ヨウの言っていることは正しかった。それでもルイの中ではまだ解決していないことがあった。
「でも、どこに運ぶの?」
場所が見つかるまで、家に置いておくことはできる。だけど場所が見つからない限り、飛行機作りが進むことはない。ルイの目には、ヨウが既に飛行機を組み立てる広い屋根のある場所を見つけていて、その上でどうやって運ぶかを考えているように見えた。
集めたパーツを手に持てるだけ持って、ルイとヨウはおじさんの工場から家を3つ挟んだ少し古く大きな建物にいた。
「ここで組み立てる。」
ちゃんと屋根もあって、中は広く何もない。飛行機を作るのに十分な建物だった。
「ここは・・・?」
「おじさんの工場」
ルイはヨウの言ったことに耳を疑った。おじさんの工場なら実際に働いているから間違えるわけがない。それにヨウの方がルイ以上に工場にいる時間は長い。だから尚更おじさんの工場を間違えるわけがない。それなのにヨウは「おじさんの工場」と言った。
「昔、おじさんの工場はこの街一番の大きな工場だったんだって。その時はここでも従業員がいて働いていたみたい。だけど今は従業員を雇っている余裕もなくてこの建物だけが残っているんだって。」
「そうなんだ。」
何はともあれ、飛行機作りがスタートする。両手いっぱいに持ったパーツをその場に置きながらヨウが「ルールを決めよう」と言った。
「どんなルール?」
「まず、これは二人だけの秘密だ。近所の子供にも、大人たちにも、おじさんにも言っちゃいけない。」
「どうして言っちゃいけないの?」
ルイはわざわざルールを決める理由がわからなかった。飛行機を作っていることをみんなに教えればもしかしたらみんなも手伝ってくれるんじゃないか、そう思っていた。
「もし、僕たちが飛行機を完成させて出て行ったら、おじさんたちはこのことを知っていただけでもきっと警官からひどい目に遭うと思うんだ。」
ヨウは、少し視線を逸らしながら言った。
ヨウはいつもルイに「お前は頭がいいから」と言う。だけどルイはこう言う時によく思う。本当はヨウの方が頭がいいんじゃないかって。ルイの考えもしない問題をどんどん思いつくし、その対処もしっかりと考えている。それに、ルイでもわからないことを急に言い出す。現に今、ルイはヨウの言っていることがよくわからなかった。『どうして僕たちが飛行機を作っていることを知っているだけでひどい目にあうの?』と思っていた。
「わかった」
だけどヨウの言うことだからヨウを信じて誰にも言わないことにした。
「次は、明日から作業は全部夜にすること。日中はおじさんのところで働かないといけないし、ルイは勉強もある。それにここに出入りしていることがバレたらおじさんに怒られちゃうと思うから。」
「おじさんにここ使っていることは言わないの?」
「もちろん、言えないよ。言ったらここで飛行機を作っていることも言わないといけない。」
「あ、そっか。」
「とりあえずはこの二つ!今日はもう遅いから家に帰って明日の準備をしよう。」
あたりは暗くなり始めていた。ルイとヨウはその場で指切りをして家に帰った。
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