第8話 ソウゲン⑧

 おじさんに頼まれたとおり、地図に従い、箱に入った物を捨てに行く。

 箱の中身は、車に使われていたパーツが入っていた。グニャリと曲がっているものや、千切れているもの、穴が外れいているものばかりだった。ルイが見てもわかる。パーツとして使えないものが、この箱の中にはたくさんあった。


 「これ、もしかして使えるかも・・・!」


 外の世界や街の大人たちが「戦争だ。」と騒いでいる間も、ルイの頭の中は「飛行機の材料をどうしようか」という課題でいっぱいだった。

 その場で箱の中を漁ると、いろいろなパーツが入ってた。


 「こんな使えそうなものをどうして捨てちゃうんだろ?僕にくれればいいのに。」


 箱の中身を見て、ルイは自分でもわかるぐらいワクワクしていた。

 これは何のパーツだったんだろう、どんなことに使えるんだろう、どうすれば飛行機にこのパーツを活かせるかな。ヨウと一緒に飛行機を作るところをイメージしながらパーツの一つ一つをじっくり見る。


 「そうだ!ヨウに聞けばいいんだ!」


 ルイ一人じゃどのパーツがどんなことに使われているのかなんてわからない。だとしたらそれがわかるヨウに聞こう。そう思い立ち、工場へと戻ろうとした時、僕の頭の中にパッと閃きが降りてきた。

 おじさんは、「似たようなのがたくさん捨ててあるから行けばすぐわかるよ。」と言っていた。ってことは、これを捨てる場所には、こんなパーツがたくさんあるってことだ!

 工場へと戻ろうとした足を再び、地図に書いてある目的地へと向けて走り出した。

 おじさんから受け取った時は少し重いと思っていたこの箱も、目的地にどんなものがあるのかを考えていると不思議と軽く感じた。

 緑色の家がある角を曲がり、しばらくまっすぐ行くと、だんだん建物が少なくなり、少し先に土が高く盛り上げているのが見えた。


 「きっとあそこだ!」


 盛り上がっている土を登り、てっぺんについた時、目に入っていたのは想像以上の風景だった。

 大きく掘られた広い穴の中には、金属片や鉄の棒、よくわからないパイプに、カゴが大きく曲がった自転車までたくさんのゴミが積み上げられていた。だけどその山はルイにとってはゴミではなく、宝物のように見えた。


 「わぁ!これだけあれば飛行機が作れるかもしれない!」


 箱を置き、積み上げられている宝物に近づき、じっくりとそれを物色する。


 「このパーツは何だろう?こっちの自転車はまだ乗れるかな?これは錆びているけど形はしっかりしているな。」


 たくさんある宝物の一つに目が移っては、すぐに別のものへと目が移っていく。


 「そうだ、ヨウにこのことを伝えなきゃ!」


 しばらく宝物を見て、飛行機が作れるかもしれないと言うワクワクがさらに増した。その嬉しさをヨウにも伝えたかった。そして早くヨウと一緒に飛行機を作りたくてウズウズしていた。

 盛り上げられた土をまた駆け上り、工場へと走り出す。この時には、おじさんから鉄屑を捨ててくれと頼まれていることなんてもう頭の中にはなかった。

 急いで来た道を戻る。まっすぐ進み、緑の家の角を曲がり、工場へ向かう。

 工場が見えてきた時、工場の前にヨウとおじさんが立っていた。


 「ヨウ!!」


 大きな声でヨウを呼ぶが、その声にヨウは反応せず、おじさんがこちらを見ただけだった。


 「ああ、ルイ、おかえり。」

 「うん、ヨウ?どうしたの?」


 おじさんの声よりもルイが、どうして反応しないかの方が気になった。

 近くで話しかけるルイの声にヨウはやっと反応した。

 ヨウは、ゆっくりとこちらに顔を向けた。その顔にはさっきまでのイライラはなく、何か怖いものを見たような表情だった。その『怖いもの』と言うのは、怒ったおじさんとかそう言うレベルではなく、もっと生き物として何か訴えてくるような怖さのものだ。


 「ヨウ・・・?」


 ヨウはもう一度顔を戻し、指をさした。


 その先には、血だらけの人がぐったりと倒れていた。



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