第6話 ソウゲン⑥
「どうした?お前ら。今日は元気ないな」
翌日、工場に行くとおじさんが俺たちにそう言った。
昨日の夜、ヨウとルイは飛行機の設計図について議論が白熱していた。その議論は、『パーツを作るにしてもその材料が手に入らない』と言う結果に落ち着いた。
夜遅くまで議論したせいか、ヨウとルイは寝不足でいつもより目がショボショボして、目の前のことに集中できない。『頭の中は早く帰って寝たい』と言う願望でいっぱいで、他のことを考えることができない。そのせいか周りからはいつもより元気がなく見えてしまうんだろう。
もしかしたらルイの場合、寝不足に加えて設計した飛行機を作ることができないということが元気をなくしている原因なのかもしれない。
「ルイ」
「・・・ん?」
「今日も午前で帰れよ。」
「・・・うん。」
仕事を終え昼休みに入ると、いつも通りルイに午前であがるようにいう。だが、ルイの心はここにないみたいで返事をしているが本当に伝わっているかわからないような、空っぽの返事だった。
どうしてそんなに飛行機を作りたかったのか。ヨウにルイの気持ちはわからなかった。ソウゲンを見ることに何の意味があるんだろうか。
ヨウは昼食をいつもより早めに済ませて、お昼休みが終わるまで寝ていた。
もうそろそろ昼休みも終わろうとしていた時。眠りが浅くなり、おじさんが従業員に話す声が聞こえてきた。
「いや〜、うちもじいちゃんの代は、もっと大きい工場だったんだよ。従業員も持っといてな〜」
「えー!そうなんですか!」
「今昔はこの街一番の工場だったんだよ。」
「だからここもこんなに広いんですね。」
「そうなんだよ、今じゃ小さくなっちゃったけどな。ここ以外にも、もうひとつ工場があったんだけど、今じゃ従業員を雇う余裕も振り分ける仕事もないから、空っぽの建物だけが残ってるんだよな。」
「へー、それどこにあるんですか?」
「ここから3つ家を挟んだところにちょっと古くて大きな建物あるだろ?それだよ。」
「え、あれ、うちの工場だったんですね!」
「そう、うちの工場『だった』んだよ。さぁ、そろそろ午後の仕事だぞ。」
おじさんは「おい、起きろ」とヨウを起こして仕事に戻った。
ヨウは大きくあくびをして、おじさんに続いて午後の仕事に戻った。
昼休みの間、寝たとはいえ、まだ眠い。今日は、お風呂上がったらすぐに寝よ。きっとルイも同じだろうからチェスには誘われないだろうし。
ウトウトしながら仕事をしていると、「いつもよりペースが落ちているぞ」とおじさんに注意された。
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