第4話 ソウゲン④

 「君たち、それ何?」


 紺色の服を着た大人が3人、きっと午前中に住民の一人に暴力を振るっていた警官たちだ。


 「ええと・・・・。」


 この瞬間、どうして飛行機がこの街にないのかが分かった気がする。

 きっと飛行機を作っていることがバレたら、この街の警官たちに殺されてしまうんだ。

 

 「なに?その大きな紙。」

 「せ、設計図です。」


 ルイは一生懸命考えた。考えた末にでた答えだった。嘘もついていなければ、飛行機の設計図だってバレることもない。だが、設計図をみられてしまったらきっとルイたちも午前中見たあの光景のようにされてしまう。


 「設計図?何の?」

 「えっと・・・」


 設計図に書いてあることが見られないようにそっと隠さないといけない。だけど恐怖で体を動かすことが全くできない。

 設計図を持っている手に力が入り、紙が小さくクシャクシャと言う音を立てる。


 「ああ、すみません。こいつらに車の設計図見せていたんですよ。」


 工場の奥からおじさんが急いだ様子で出てきた。


 「こいつら設計図見たことなかったから、ほら、車を整備するのだって車の作りを知らなきゃできないでしょ?」


 急いで話すおじさんに警官の人は「ふーん」と言いながら僕たちを見下してた。

 すると警官の一人がおじさんに近づき大きく振りかぶっておじさんの頬を殴った。

 殴られたおじさんは大きくよろけ、ガシャンと大きな音を立てて、積んであったオイルの空き缶とともに倒れた。

 おじさんを殴ると3人は「全く」と言い残して何処かへ向かい歩き出した。

 

 「おじさん!」


 警官の3人の姿が見えなくなった頃、僕とヨウは設計図そっちのけで空き缶に埋もれたおじさんのもとへ駆け寄り、缶をどかした。


 「おじさん大丈夫!?」


 ヨウがおじさんに聞くとおじさんは、立ち上がった。


 「ハハハ、大丈夫さこれぐらい。先代のゲンコツに比べたら何ともねーよ。」


 笑いながらそう言うおじさんの頬は、赤く腫れてとても痛そうだった。


 「お前らが殴られなくてよかったよ。」


 ホッと一息ついたおじさんは、ニコッと笑うとルイとヨウの頭を撫でた。


 「お前らこう言うことは工場の中でやれよ。工場の表でこんなことしてるとまたあいつらに絡まれるからな。」


 おじさんが工場に戻って行った。


 「ルイもこんなことしてないでちゃんと家で勉強してろ。」


 ルイが設計図をたたんでいると、ヨウはそうルイをしかった。


 「今日も夕方ぐらいに帰るから、できたらご飯作っておいて。」

 「なにが食べたい?」

 「何でもいいよ」

 「うん、分かった。またお風呂上がったら一緒にチェスしようよ!」

 「えー、ルイは弱いからなー」

 「そんなこと言わないでやろうよー。」

 「まぁ、考えておく。」


 ヨウはそう言って工場に戻って行った。

 ルイも設計図をたたみ終えると家へと足を進めた。

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