第3話 ソウゲン③
次の日、ルイたちはおじさんの工場にいた。
ルイたちは、おじさんの工場で働いて、お金をもらっている。2人合わせてなんとか生活ができるぐらいだった。ヨウは毎日、太陽が沈むまで働いているが、ルイはそうじゃなかった。本当はルイももっと働きたいと思っていたが、ヨウが「お前は頭いいからもっと勉強しろ」って言って短い時間であげられてしまう。
「ヒィ、やめてください・・・!!」
ルイたちが働いていると開けていた工場の扉の外から声が聞こえた。
工場の外で喧嘩が起こった。いや、それは喧嘩と言うにはあまりにも一方的すぎるものだった。
「ヨウ・・・今のもしかして。」
「・・・きっとそうだよ。」
紺色の服に身を包んだ男たちが一人の住民を囲んで一方的に暴力を振るっている。
この街では、警官に少しでも逆らうと撃たれるか、立てなくなるぐらいまで集団で殴られてしまう。きっとあの人は何もしていないつもりでも、何かしらが警官の一人の気に触ったんだろう。
「なぁ、誰か!誰か助けてくれ!」
ルイたちはその光景を知りながらも、「何も知りません、何も見ていません」と言うように黙々と手を進めた。
こう言うとき、この街の住民は見て見ぬ振りしかできない。「何も見ていない」そう言わなければ、次の標的はその人になってしまう。視線をそこに移せば明日がこないことだってあり得るのだ。
お昼休みを過ぎて街のみんなが働き始めたころ。ルイは家にいた。午前中はおじさんの工場で働いていたが、いつも通り、ヨウに「お前は勉強しろ」と言われ、お昼であげられた。ご飯を食べてもいまいち勉強する気が起きなかったから僕は、大きな紙にあるものを書いていた。
「これを見たらヨウはびっくりするぞ!」
書き終えた紙を丸め、急いでヨウのいる工場に向かう。工場に向かう途中、ヨウがこれを見てどんな表情をするのか、楽しみだった。
「ヨウ!」
工場に着くとヨウは、車の整備をしていた。
「なんだルイか。勉強は?」
「ヨウ、これ見て!」
息を切らしながらヨウの目の前で紙を広げる。それは、ルイが書いた設計図で、ヨウも紙を広げてすぐに理解した様子で設計図をじっと見つめた。
「これなんの設計図だよ?」
「飛行機だよ!」
「飛行機?」
機械いじりが好きなヨウでも飛行機は知らなかった。それもそもはずだ。この街で飛行機なんて作っている工場もなければ、通ることもない。きっとこの街のほとんどの人が飛行機なんて知らないだろう。だけどルイは知っていた。家にある本で読んだんだ。飛行機で人は空を飛べるって。
「空を飛ぶ乗り物だよ。これに乗って空を飛べれば、きっと街の外にも行けるよ!そうすればソウゲンを見に行ける!」
空を飛んで街の外に行く、飛行機はどうやって動くのか、風は気持ちいいのか、太陽に近づいて熱くないのか、自分たちだけが知っている自分たちだけの冒険がそこにある、想像しただけでもワクワクした。
「これ、本当に飛べるのか?」
ヨウが設計図からルイの顔に視線を移して聞いた。
「飛べるさ!だって本に書いてあったんだもん!」
「じゃぁ、動力は?」
「ど、動力・・・?」
「どうやってこのプロペラ動かすんだよ?」
「ええと・・・・」
ヨウは設計図に指を刺しながら言った。
「だいたいこれ何で作るんだ?」
「えっと・・・鉄とか」
「鉄だと重くて飛べないんじゃないか?」
ヨウは、飛行機なんて見たこともないはずなのに設計図を見ると、何が足りないか、どんなものが必要かをズバズバと言った。だけどルイはそれについていけず、何度も同じことを聞き返したり、わかっているふりをしながらうなずくので精一杯だった。
「そこは僕たちが頑張って自転車みたいにこげばいいよ」
「だから、それだと力が小さすぎるんだって。だからエンジンはどうしても必要。そうじゃないと飛ぶどころか前にも進めないぞ。」
工場の前で設計図を広げ、こうすればいい、ああすればいいと話し合っていると後ろから声をかけられた。
「君たち、それ何?」
振り返るとそこには紺色の服を着た大人が3人立っていた。
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