第7話 後輩とイチャイチャしながら登校する現実
俺たちは、少しだけ気まずそうにして、学校に向かう。なんだか気恥ずかしいんだ。小学校時代は一緒に登校するのが当たり前だったが、思春期になって少しずつ恥ずかしくなっていき、部活を理由に別登校になってしまった。高校に入ってからも、それが継続中で、半年が経過している。
セーラー服のスカートをひらひらとしながら、家の入口で俺を待っているしずかはそわそわしていた。
「じゃあ、いきましょ、センパイ?」
「うん」
「こうして、歩くの久しぶりですね」
「そうだな。お前はバイトで忙しそうだったから」
「ですよ。高校に入ってちゃんとバイトできるようになったから、いっぱいシフト入れたんです。でも、なかなかお金がたまらなくて……そんな時、クリスタル・クリエイトの社長に、声をかけられたんだ」
「えっ」
たしかに、みすずはオーディションを介して採用されたわけではないとよく言っていた。どこから、こんな逸材を見つけてきたんだとリスナーたちは思っていたが、まさか社長の一本釣りとはな。
業界の風雲児とも呼ばれているあの社長は、優秀な人材を集めることには、右に出る者がいないと言われている。
業界では無名だった配信者や人気が出ずに引退した配信者の才能を見い出して、ブレイクさせる神業を何度も成し遂げている。
クリスタル・クリエイトは、Vチューバー事務所だが、実態は人材育成企業と言われている。人材育成によって、小規模事務所から2年で一気に業界大手にのし上がった社長に才能を見い出されてということは、しずかもダイヤモンドの原石なんだろうな。すげぇな。
「センパイ、さっきから心ここにあらずって感じですね。もしかして、いやらしいこと考えていたりします?」
「はぁ?」
「センパイのことだから、どうせみすずの『後輩とイチャイチャ登校するだけのASMR』とか『朝起きたら隣で後輩が添い寝していた件について』とかを思い出していたんでしょ、変態っ」
ちなみに、その2つのASMRは結構過激な内容だったことを追記しておこう。
「というか、お前そんなに頭ピンクだったのかよ? それはバイトの影響か?」
「……っ。なぁ、なにを言っているのっ」
「だって、俺は久しぶりにしずかと登校できて嬉しいなくらいしか考えてなかったのに、お前だけなぜか過激なASMRの話になってるんだもん」
「過激っ! 私だけっ!? もしかして、相当、クリスタル・クリエイトのノリに毒されてきちゃってるのかな、私」
「まぁ、そういうところにグッと来ないかと言えば嘘になるけど」
「むぅ……そうやって、センパイはいつも私をからかうんだから。今度、配信でぎゃふんと言わせてやる」
「ああ、楽しみにしているよ」
こんな感じで昔に戻ったかのように、ふたりで過ごすと会話が続いていく。それがどうしようもなく嬉しかった。
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