第8話 目が覚めたらなぜか後輩幼馴染が添い寝しているASMR
朝、目が覚めた。寝返りを打つと、後輩幼馴染の有栖川みすずが制服を着たまま、俺の横で寝ていた。
「えっ」と驚きながら、俺は彼女の顔を見つめる。彼女の吐息が、体をくすぐってくる。みすずから発せられる香りは、俺の寝起きの頭を覚醒させた。
『おはよ、センパイ?』
俺の動きで目を覚ましたみすずは、いたずらな笑顔で語りかける。
『えっ、なんで横で寝ているのかって? 覚えてないの、自分で誘ったくせに?』
『冗談だよ、冗談。センパイが慌てているのが、おもしろくって、ついからかっちゃった』
『でも、ちょっと憧れない? かわいい後輩が制服姿で、ベッドにもぐりこんでくるなんて、めったにできない体験だよ。私のいろんなところが、同じ布団の中にあるんだよ』
『センパイ、どこ触ってるんですか。まだ早いよ。まだってことは、後ならいいのかって? センパイが覚悟を固めてくれたならいいよ。責任取ってくださいね』
『センパイってほんとにからかいがいがあるなぁ。でも、余裕に見える私だって、ホントはドキドキなんだよ。センパイに変態だと思われたどうしよう。嫌われたらどうしようってすごく不安なんです』
『信じてください。ほら、私の心音、こうすれば聞こえるでしょ』
「トクン、トクン……」と、みすずの心音は早く高鳴っている。本当にみすずも緊張しているようだ。
『ねっ、緊張してるでしょ? 人の心音ってなんだか落ち着きますよね。時間もあるし、もう少し聞いていてください。わたし、こうしているのがすごく幸せだよ』
『ずっとこうしていたいね。ねぇ、センパイ? 私をお嫁さんにしてくれたら、お休みの日は、ずっとこうしてイチャイチャしてあげるよ。私のすべてをあげるから、センパイの全部も私にちょうだい?』
『からかうなって……ごめん、ごめん。でもね、こんなことセンパイにしか言えないんだよ。嘘じゃないって言ったらどうする?』
みすずは、俺の耳元に「ふっ」と息を吹きかける。
『責任、取ってくださいね。早く起きないと制服がしわになっちゃうんだから』
彼女は優しくささやいた。そして、『愛していますよ、センパイ』と耳元で続けた。リップ音が俺たちの頭を直撃する。
※
俺は、昼休みに有栖川みすずのアーカイブ配信を再視聴していた。
正直、イヤホン越しで聞いているだけでも、吐息がやばい。すべて計算された無駄のない音たちだった。
「こんなの思いつくなんて、しずか、絶対……じゃん」
俺は必死に理性をこらえて、アーカイブの視聴を続けた。
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