4-2
今まで黙っていた母がゆっくりと話し始めた。
「朝も話したけど、私も最後は駿佑の判断に任せるべきだと思ってる……。けど、あの子がそこまで追いこまれてるのであれば、親として放っておくことなんか出来ないし、出来ることは何でもしてあげたい。いくつになっても子どもは子どもだしね。私はまず仕事を辞めるだけ辞めて、少しゆっくり休みつつ先のことは追々考えていっても遅くはない気がする。あの子はああ見えて慎重派な所あるし、考えるべき所はちゃんと考えてる子だからね」
朝に比べて母の表情は幾分穏やかになっている。
「悠から駿の話聞いて、私ものすごく反省したの。もっと、あなた達と連絡を取っておくべきだった、って。親なのに子どもの変化に気付けなかったなんて…。自分が情けなくて…」
母が目を潤ませる。
「母さんが悪いわけじゃないよ、俺だって同じ東京にいても、何年もまともに連絡取ってなかったわけだし。俺もそのことは正直かなり後悔してる。だから今はなるべく時間ができたらアイツの家いくようにしてるし、連絡もこまめにするようにしてる。ここ二週間ぐらいでアイツの表情も大分マシになってきたよ。それを見てて、『何でもっと早く気付いてやれなかっただ』って余計に思う」
「まぁ、そうやって言ってもどうにかなることじゃないだろ。別に母さんも悠も落ち度があったわけじゃないんだから。幸いなことに、まだ打つ手はいくらでもある。そう後ろ向きにならずに、これからのことを考えよう」
父が努めて明るく振る舞う。
「それと、悠、」
「ん?」
「教えてくれてありがとな。まだ打つ手がある段階で気付けてよかった。お前のお陰だ」
「そんなことないよ」
「いや本当よ。悠がたまたま駿に連絡しなきゃ、誰も気付けなかったわよ」
「母さんの言う通りだな」
そう言いながら、父はジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩める。
「悠、夕飯食べてけ」
「うん」
「母さんもそのつもりで準備してるんだろ?」
「ええ、もちろん。せっかく久しぶりに帰ってきたんだから」
「母さん、酒持ってきてくれ」
「はいはい」
母が腰を浮かす。
「悠、お前も飲め」
「いやいや、俺はこれから車運転して帰らなきゃいけないし…」
「お前疲れてるんだから新幹線で帰れ。車は明後日俺達が乗っていってやるから。それまでは家の車庫に入れておけば問題ないだろ。自転車どかせばもう一台入るし」
「じゃぁ、一杯だけ」
悠佑はコップを持ち上げる。その中にチューハイが注がれていく。
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