第8話 定着率40/100

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 ギルドを出て、街の外へ向かいます。明日以降の宿代を得なければなりませんし、管理者さんに頂いた武器も試さなければ。


 やって来たのは昨日と同じ街道から少し外れた位置にある広場。ここで例のアレを出します。はい、玉虫色の球体です。武器になる予定のやつですが、ヤバい雰囲気しか感じられません。

 しかしまあ、管理者さんに渡されたものですし、と意を決して欲しい武器の姿を思い浮かべると、その球体はぐにょぐにょと動いて形を変えていきます。

 そして一瞬光ったかのち、姿を現したのは、一振りの大剣。盾とする事を考えたからか、どこか異様な雰囲気をもつそれは一般的なものより大きく、それでいて、取り回すのに邪魔にならない。まさに望んだ通りの武器です。


 白い刀身のそれは刃に血管のような文様が刻まれており、どこか不気味に感じました。


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<母なる塔の剣> 伝説 (不壊/神呪)

転生者アルジュエロに与えられた神器が変化して生まれた大型の大剣。

彼の者の願いを聞き、盾としての役割も果たしつつ取り回しに困らない大きさをしている。

アルジュエロの性質に影響を受けた結果、大地母神の力を一部具現化した。

生物を眷属とする能力がある。

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 おおぅ……。やはりぶっ壊れてますね。

 というか、白い塔、大地母神、眷属化ってアレですよね? もうアレしかないですよね? という事は『副王』ってアレで確定ですよね?


 ……私は恐ろしいものと関係を持ってしまったようです。本当にあの話の通りならですが。今更ながら、管理者さんとか気軽に呼んでいいんですかね?


 ともかく、この剣の実験は大樹海の奥の方でしましょう。


 先に<飛行>の実験をします。


 まず、<創翼>で翼をつくります。

 その結果できたのはコウモリのような、二対の翼。

 lv5だけあって、それなりに弄れるので色を真っ黒にして、少し大きく――広げた状態で一対が170センチ弱、つまりは身長と同じぐらい――にします。


 ……うん、いい感じ。


 さて、いよいよ飛んでみるわけですが、<飛行>スキルは先程創った翼を媒介にして空間に作用するものです。つまりドレスの補正が効くはず!


 まず翼に魔力を纏わせます。量は普段魔法を使う時と同じくらい。

 からの、アイ、キャン、ふらぁぁああああああああああいいいいいっ!? 

 ……うん、はい、魔力が多すぎました。あまりの急加速にちびるかと思いました。……ちびってませんからね? すぐに魔力供給を減らして上昇を止めましたし。

 それにしても、ずいぶん高くまで上がりましたね。リムリアの街がはるか下にあります。


 そのまま茜色に染まる街並みを眺めていると、バクバクいっていた心臓が徐々に落ち着いていくのが分かります。ここで、私は初めて街から目をそらしました。


 そこにあったのは、どこまでも続く樹海と、澄んだ空気。さらに別の方向の遥か彼方には天を衝くような巨木が見えます。

 おそらくは世界樹。

 左右二つの夕陽に斜め後方から照らされたそれは、この距離からでさえまるで自ら光を放っているかのような存在感を感じます。


「ほぅ…」


 美しい景色に思わずため息が漏れます。

 私はそのまま暫く、これから自分が生きる事になるその美しい世界に見入っていました。


 日の暮れようとしている頃、空に浮いたまま街から離れます。ドレスのおかげか、飛ぶのにほとんど魔力がいりません。思った方向に飛んでくれます。

 そして、適当なところで森に降り、昨日と同量の薬草を採取してからリムリアに戻りました。


 

◆◇◆

 ギルドで薬草を換金したあとは宿へ帰ります。五の鐘は暫く前に聞こえたので、もう夕食が食べられるはず。


 星の波止場亭に着きました。案の定中から賑やかな声が聞こえます。

 私も早く中に入って夕食へありつこうと思い、ドアノブに手をかけた時、ふと、二つの果実が目に入りました。


 私、女になったんですよね。アレ、どんな感じでしょう。……今夜やってみましょう。



◆◇◆

 食事を終え部屋に帰った私はドアを閉め、急ぎ鍵をかけます。雨戸も閉め、夕食をたべながら作ったある魔法を発動。

 ふっふっふ。防音の魔法です! 〈風魔導〉でチョチョイのチョイでしたよ。

 それでは、今夜はお楽しみしましょうか。



◆◇◆

 素晴らしかったと言っておきましょう。

 男だった時と全然違います。

 まさか、あんな事になるなんて……。


チリン

【魂の定着率が40%を超えました。『副王の加護』により、『世界の声』へのアクセス権を付与されます。また、一部能力制限が解除されました。詳細は鑑定にて、称号より確認できます】


 WHAT!?

 急いで確認します。


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<ステータス>

名前:アルジュエロ /F

種族:吸血族(人族)

年齢:18

スキル:

《身体スキル》

鑑定眼 言語適正 (魔力視) (神聖属性適性)→光属性適性 吸血lv5 高速再生lv4 大剣術lv2 淫乱lv3

《魔法スキル》

ストレージ 創翼lv6 飛行lv4 魔力操作lv5 火魔導lv3 水魔導lv4 土魔導lv3 風魔導lv4 光魔導lv5 闇魔導lv5 隠蔽lv MAX


称号:(転生者) 吸血族の真祖 (12/10^16の奇跡) 強き魂  魔性の女 (副王の加護) 寂しい人 うっかり屋


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 いくつかスキルに変化が見られますが、今は置いておきましょう。

魂が定着した事で()で表されていた前世の情報が種族を除いて消えています。


 それだけ確認したら加護の称号に<鑑定眼>をつかいます。ってん?

【魔性の女】?


 いや、確かにそんな感じでつくりましたけど……。

 よくみたら<淫乱>なんてスキルも生えてますし。しかももうレベル三……。

 ……うん。忘れましょう。


 気を取り直して、【副王の加護】を鑑定しましょう。

 結果わかったのはスキルや称号の獲得など、世界のシステムに関わる事を『世界の声』にアクセスして聞けるようになったという事でした。

 アナウンスもしてくれるようですね。タイミングは任意だそうなので、レベル五ごとと、進化、獲得した時にしておきます。


 ゲームみたいになりましたね。

 これは実験、でしょうか?

 そもそもの話、実験的な世界なら、私の影響はそこまで関係ないはず。なぜ………?


 ――今考えても仕方のないことですね。


 ていうか、原因、さっきのアレですかね?

 ……これも気にしない事にしましょう。


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