戦国戦隊で勧誘

 戦国時代で戦隊モノのヒーローとしてロボットに乗ることになった。


「改めて考えるとわけがわからんな」


「では大和様、こちらのお部屋へどうぞ」


「なんだここ?」


「陰陽術の力を高める場所です」


 入ってみると暗い部屋に大きなツボ。魔法陣と黒いローブを着た毛利さんたち。


「我は求めて訴える……訴える……」


「トカゲと吸血鬼の血とサソリの尻尾……牛乳とのどあめを入れて」


「黒魔術だこれ!?」


 黒魔術の現場だった。毛利元就さんがこちらを見つけて話しかけてくる。


「ひぇひぇひぇ、よく来なさったのう大和様」


「あなたそんな口調じゃなかったでしょう!?」


「このミサの主役。魔女のモウリーヌですじゃ」


「完全に男でしょうが!」


 なんで魔女っぽい名前にした。しかも毛利を。それでいいのか頭首よ。


「どうでしょう? 特性スープでも」


「いりませんよ! トカゲが入ってるでしょうが!」


 がっつり原型残してトカゲが入っている。これ食うのは現代っ子には無理です。


「苦手な方のために、トカゲ抜きのムカデ入りがございますが」


「ムカデはもっといやです! この空間不安しかないですよ!」


「ご安心を。もうじき悪魔召喚の儀式は成功いたします」


「安心できる要素がねえ!?」


 ツボから紫の煙と一緒に知らない人が出てきた。


「我が名は小早川」


「変な人来ちゃったー!?」


 真っ黒な着物を着たイケメンさんが出てきましたよ。胡散臭いけど賢そうなイケメンだ。なんとなく軍師とかやっていそう。


「ここより東から悪意に満ちた瘴気が漂っておる」


「ここからも出てますよ」


「ゆけ、モウリファイブ。この世界を正義の力で守るのだ!」


「センキュー小早川! さあ戦国戦隊モウリファイブ、出動だ!」


「レッツモウリィ!!」


 こっ恥ずかしい号令と共に出動開始。特別なジェット機『スリーアロー』で現場に急行。

 ここに毛利元就さんとその息子三人。そして俺という五人が終結した。

 ちなみに結名はナビゲーターだ。


「あれは……上杉軍の機動鎧武者『ウエスギンヌ』だ!」


「ネーミングがおかしい!?」


 二足歩行で龍を模した機動兵器が飛んでくる。空を飛んでいます。五百メートルくらいある。


「ウエスギンヌ……いつ聞いてもヨーロッパに相応しい名前だぜ」


「ここ日本ですけど!?」


「正式機体名は『上杉機動戦国武者ぬ型』だ。い・ろ・は型や、ほ型のバージョンアップ版です」


 なーるほど。戦国だから型番がいろはにほへとなんだな。


「変なとこだけ戦国だ!!」


 その後ろからもなんか変な白くて龍っぽい頭部の人型兵器が来る。機械の馬に乗っているよ。ちょっとかっこいいぞ。


「あれは上杉最終兵器……『ウエスギーヌ』!?」


「名前あんま変わんねえ!?」


「大和様聞こえますか?」


 結名から通信が入る。忙しいなもう。初出動でやること多くね?


「あれは上杉謙信専用機です!」


「あいつだけ千メートルはあるな。大将機だけあるぜ」


「正式機体名『上杉のテリーヌ季節の野菜ピューレ添え』です」


「名前がフランス料理っぽい!?」


「我が名は上杉謙信。貴様ら! 名を名乗れい!!」


 敵がスピーカー越しに話しかけてくる。つまりやんなきゃダメか。掛け声。


「真紅の焔、モウリレッド!」


「蒼き激流、モウリブルー!」


「新緑の息吹、モウリグリーン!」


「漆黒の闇、モウリイエロー!」


「銀河の救世主、モウリシルバー!」


「天下御免の五本の矢! 戦国戦隊! モウリファイブ!!」


 背後でドーンと五色の大爆発。正直……正直超楽しい。

 全員でポーズとっている時はもう胸に味わったことのない興奮があった。


「これは大和様……じゃなかった、モウリシルバー! こちらも機神を呼びましょう」


「よし、機神降臨!!」


 俺はモウリシルバーだ。ゴールドだとイエローと被るのでシルバーだぜ。


「毛利合心!!」


 五色の機体が合体し、一体のロボットへと変形する。スリーアローからワープして機体内へ。

 中には広いスペースと、五人分の刀や弓形コントローラがある。

 これに動きを念じてがちゃがちゃやればいい。戦隊もののお約束だ。


「毛利ダイショーグン! 只今参上!!」


「ええい大将軍とは小癪な! 皆の者かかれえええい!!」


「シルバーソード!」


 刀を握って念じると、銀色に煌く刀を持ったダイショーグンが動き出す。

 こいつは全長千メートル以上。雑魚なんざ蹴散らしてやるぜ。


「うおおおりゃああ!!」


 擦れ違い様に敵の胴体を切りつけ真っ二つにしてやる。

 雑魚は爆発して跡形もなく消えた。はい気持ちいい。超気持ちいいわこれ。


「ふっ、いい筋をしているな。モウリシルバー」


「サンキューブルー」


「ならば私も見せるとしよう。ブルーアロー!」


 ブルーが弓を持つと、ダイショーグンの武器も弓に変わる。


「百発必中! ブルーショオオオオット!!」


 青いエネルギの矢が敵を貫く。機動鎧武者の鎧すらも紙くずのようだ。


「今度は僕がやらせてもらうよ。グリーンクロー!」


 今度は緑色の鉤爪が両手に装着された。


「そりゃそりゃそりゃ!! グリーンハリケーン!」


 風に乗り加速したダイショーグンは、次から次へと敵を狩り続ける。


「ぬうううううう! やってくれたな! ならばこの謙信自らが相手をしよう!!」


 グリーンの巻き起こす暴風の中を馬で突っ切り、七支刀で怒涛の斬撃を繰り出す謙信。その太刀捌きは軍神を名乗るだけあって苛烈にして繊細だ。


「うわあああぁぁ!?」


 衝撃でダイショーグンが激しく揺れる。俺にダメージはなくても結構怖いぞ。


「やってやらあ! オレに代われ! あの馬から叩き落してやる! イエローランス!!」


 イエローの装備は槍というよりハルバードであった。


「イエロースラアアアァァァッシュ!!」


 豪快に振り回し、機械仕掛けの馬の首を切り落とす。


「ぬおおおぉぉぉ!?」


 馬から転げ落ちて動きを止める敵。今がチャンスだ。


「ここでワシの登場じゃ! レッドバスター!」


 レッドの武器はなんと大砲。肩に担ぐタイプのでっかいやつだ。


「今だ! 五人の力をレッドに!」


 五色の光が大砲に集る。全員で手を合わせ、ついさっきまで知らなかったパワーが吸い取られていく。これが合体技なのだろう。


「モウリバスター…………ファイアアアアアァァァ!!」


 実にカラフルなビームは上杉のロボを貫き、胴体に大穴を開けた。


「ぐぬううぅぅぅ……ここまでか。見事だモウリファイブ。だが我は所詮影武者……謙信様の勝利は揺るがない!」


「なんだって!?」


「おのれ上杉!」


「ふっふははははははは!! 上杉家に栄光あれええええぇぇぇ!!」


 今日一番の大爆発を起こして影武者は散った。


「宿敵上杉家のロボを打ち倒したモウリファイブ。だがそれは影武者に過ぎなかった。いつか謙信を倒すまで、負けるなモウリファイブ! 戦えモウリファイブ!!」


 結名のナレーションがうるさい。お前どうしてナレーション完璧なんだよ。


「初戦闘はどうだったシルバー?」


「いやあテンション上がりっぱなしでしたよ」


「楽しんでもらえてなによりです」


 本当に楽しかったので、感謝を込めて握手した。戦国武将らしい力強い手だ。この手で平和を守っていって欲しい。


「お疲れ様です大和様。帰ったら晩御飯ですよ」


「そっか、戦ったら腹減っちまった」


「今日は地方の名産品をたっぷり用意してあるぜい!」


「そいつは楽しみだ」


「トカゲのスープもございますですじゃ」


「それはもういいですって!!」


 戦隊ヒーローというものはかなりの重労働だ。

 やってみて実感できたよ。これからはテレビで見ても、ちょっと見方が変わるかもな。なんだかんだとても楽しかったのは確かだ。

 男の子なら一度は憧れる変身もできたし。いい経験になったよ。

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