戦国ロボットで勧誘
結名と一緒に戦国時代でロボットに乗るために次元ゲートを通ったら、和室に立っていた。
本当に自分でもなにがなんだかわからない。
「はい、戦国時代につきましたー」
「おーここが戦国時代かーってなるわけねえだろ! なんだよここ。城の中か?」
「天守閣です。さ、後ろを振り返ってくださいな」
「なんか男の人がいる……」
振り返るとザ・戦国武将! みたいな人達がいる。三人いる。どちら様ですか。
「そこに三人の戦国武将がいますね?」
「いますけども」
「一人選んで勢力に加担しましょう」
「ええぇぇ……」
お邪魔にならないですかね。失礼なことして切腹とか嫌なんだけど。
「では向かって左側から、上杉謙信さん」
頭に白い布みたいなものをつけている。ゲームとかでよく見る格好だ。
「上杉謙信と申す。好きな武将は武田信玄だ」
「何を言っているんですか? ってか謙信さん武田と戦ってますよね?」
戦国に詳しくはないけれど、宿命のライバル的なイメージがある。
「そちらの言葉でいえばツンデレというものだ」
「ツン強すぎませんかね!?」
「上杉さんは東北全土を支配しています」
「全部? 武田と戦いながらやったってのか?」
そんなに楽勝な相手か? なんか有名な武将とかいたような気がするぞい。
「ぶっちゃけ権利関係でめんどくさい部分がありまして、だったらもう全部東北は支配されちゃったーということで、上杉の名前で統一しようかと」
「凄いことぶっちゃけたな」
「安全・安心がモットーです」
「すでに綱渡りだよ」
綱っていうか紐だよもう。紐から糸になる前に話題を変えよう。
「上杉軍のロボットはリアル系です。運動能力に優れ、超人的な感覚によって動かす超未来の技術です」
「戦国だよ。完全に過去の世界なんだよ」
リアル系ってまたざっくりした区分けしやがって。
その感覚がない俺には使いこなせねえだろ。
「説明書が辞書くらいあるのが欠点ですね」
「そらきついわ」
覚えきれないっての。軍人が乗るやつだろ。無理無理。高校生を乗せるな。
「そしてお二人目が毛利元就さんでーす! わーわー!」
「毛利元就だ。よろしく頼む。加勢していただければ最上のもてなしを約束しよう」
威圧感のなかに優しさが垣間見える、長くて白い髭のおじさまだ。
がっしりした体のおかげで戦国武将として見ると超頼もしい。
「こちらは西国全部を完全に支配化においていますね」
「この世界は西・中央・東の三勢力だ」
わかりやすくてよろしい。ごちゃごちゃしてても俺は覚えられないからな。
「元就さんのロボはスーパー系です」
「ああ、悪の軍団と戦うロボットアニメのだろ? 謎エネルギーで動くやつ」
腕が飛んだり、合体変形がかっこいいやつだ。ロマンがある。
「いいえ、そっちではなくて……日曜の朝にやっているような五人で五色な人達が操るロボです」
「スーパーってそっちの!?」
「私と息子三人が乗ることが決まっている」
「大和様でちょうど五人ですね」
俺は数合わせだなこれ。ちょいと不安だけど、変身もできるならここがいいな。
「大和様は毛利シルバーに変身です」
「俺入ってんの!?」
「もちろんですよ。そこは大前提です」
嘘やん学園生活一週間以内で毛利シルバーに変身することが決まったんですが。
「レッツモウリィ! と言いながらこの腕輪をくるっと回して下さい」
うわあ凄くスーパーな人達みたいなグッズだぞう。セリフが恥ずかしくてきついな。もう五年前くらいなら乗っていたかも。
「叫んでポーズとれば、ロボが勝手に動くことがポイントです」
「操縦が楽なんだな」
「子供向けですし、最後のオマケみたいなものですから」
楽しそうではある。でもどうせなら操縦している感は欲しいかなあ。
「最後は浅井長政さんでーす!!」
戦国っぽい鎧のイケメンさんだ。礼儀正しく頼れるイケメンという感じがする。
「浅井長政でございます。信長殿の代理で参りました」
「代理? そういや信長はいないんだったな」
「今日だけで異世界人が五人来るはずですからね……スケジュールかっつかつですよ」
「秀吉殿と家康殿も不可能ですぞ。やはり異世界人が来るはずです」
信長さん関係は大人気だなあ。そんなに異世界人が来たら迷惑だろう。
まあ来ちゃった俺が言えた事じゃないけどな。
「長政さんは正義のスーパーロボットです! 必殺のジャスティスビームで悪を討つ!」
「おー古風なデザインだな」
写真見せてもらった。鎧武者とロボの融合とでもいおうか。
胸にジャスティスと書かれている。そこ正義でいいんじゃね。
「ロケット長政パンチとか出ますよ」
「なんでも長政つければいいってもんじゃねえぞ」
「このロボは正の長政エネルギーで動いています」
「まるで負の長政エネルギーがあるかのような」
「ダーク長政ロボが使ってましたね」
「偽者いるんだ!? こってこてだな!」
古風というか古典的とでも言うか。嫌いじゃないよ。
俺の勝手なイメージだけど昭和のロボだ。今がっつり戦国時代にいるけどな。
「四話かけて倒しました」
「話数でいうなや」
「そこから急遽二人乗りに改造しまして」
「俺が来るからか……なんだどうなった?」
そんなポンポン改造ってできるもんなのか?
妙に結名が得意気なのが腹立つ。
「大和様が右足と左腕を。長政さんが左足と右腕担当です」
「ややこしいな!? どっちか両足でいいだろ!」
「気をつけないと両足出しちゃって転びますよ」
「いやそうなるって! なんでそんな作りにしたのさ!」
「だって一人乗りですもん」
「だったら上半身と下半身で分けたらいいだろ!」
「間違って配線繋げちゃったんですよ」
「直せや!!」
なんでスーパーロボットをやっつけ仕事で改造するのさ。ロマンの欠片もねえな。
「はいじゃあ選んでください。誰がいいですか? 属性の相性も考慮して選んでくださいね」
「属性ってなんだよ!?」
「火は水に弱い的なあれですよ」
「それをどう判断しろと!?」
「戦士としての直感で」
「普通の高校生だよ!!」
やばい。まず長政ロボはダメだ。操縦に難がある。似た理由で上杉もダメ。
上杉さんリアル路線ってことは人が死ぬ世界観だろうし。消去法でいくか。
「んじゃ毛利さんで」
「ほうほう、ちなみに理由はなんですか?」
「戦隊ものなら最後はハッピーエンドかなって。あと操縦楽そうだし」
それなりに無難な理由だろう。完全な嘘ではない。ちょっとマジだ。
「なるほど、それなりに無難な理由ですね」
「うっさいわ」
「歓迎しますぞ大和様!」
「どうもよろしくお願いします」
挨拶しているうちに、結名が俺の左腕へせっせと腕輪をつけている。
無許可でやるなや。なんか未来の技術っぽい腕輪だ。
なにかを差し込むスロットがある。
「ここに毛利の家紋が入ったモウリチェンジャーをはめこみます」
「んで家紋を回すんだろ?」
「決め台詞を忘れずにお願いしますね」
高校生にもなってこれやるの、すっごい恥ずかしいんですけど。
「頑張ってください毛利シルバー」
「うーわそうだ俺シルバーなのか」
中途半端に気持ちの整理ができる時間があると、現実を直視してしまうよね。
「色変えます? 元就さんがレッドは確定ですけど」
「では大和様には毛利パッションピンクを……」
「派手すぎません!?」
「いっそゲーミング毛利とかにしませんか?」
「やめろや! 俺ずっと光ってることになるだろ!!」
なんとかやめさせよう。何が悲しくて七色に光り続けなきゃいけないんだ。
「じゃあひとまず毛利さんのお家で会議しましょうか」
「そうしてくれ」
「では皆様ご案内いたします」
ゲーミングだけは絶対に阻止しよう。悪の野望よりも優先的に。
そんなわけで変身してロボットに乗ることになった。
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