第19話 トイレ・・・

「ねえ、トイレは失敗しなくなったの?」

「・・・・・」

僕が子どもたちを眺めながらぼけっとしていたらララがやってきた。

「返事くらいしたら?」

「僕にかまうのはやめてくれないかな。」

「あら、こんなおもし・・・いえ。心配してるのに。」

「今、面白いことって言いそうになったよね?」

ララはニヤニヤしながら、

「ちょっと外に出かけましょうよ。そして、攻撃魔法の練習をしましょ。」

僕は簡単な魔法を使えるようになったし、トイレや清潔の魔法も使えるようになったんだけれど、攻撃の方はさっぱりなんだ。ちょろっと炎が出てひょろひょろ飛ぶくらい・・・何でだろう。

「あんた、やさしすぎるのよ。」

「へ?」

「剣はふるえるのにねえ・・・。」

ララが言うには以前、剣を振るうことができた僕は剣士そのもの、魔法を自在に使えた僕は大魔法士さながらだったそうだ・・・知らんがな。そんなことを言われても。

「今はただのポンコツね。」

・・・・・

ララに促されて城の中庭に出た。中庭と言っても結構広く、木々や花などが雑多なようででもなぜか秩序だって整然と並んでいる。木陰に入ると何故か池があったり池があったはずだと思っていくと築山だったり・・不思議な空間なんだ。

「庭師が空間魔法得意みたいよ。」

「空間魔法?」

「そう。こうやって・・・」

ララは手に持っていた扇を広げてそれから少し縮めて見せた。

「ほら、絵が違うでしょ。ちょっとしただまし絵なんだけど。」

人の顔?さっきまで違うように見えたのにな。

「これが空間いっぱいになるってことって言ったらわかりやすい?」

・・・うーん。


困っている僕にじれて、

「ほら。」

と、今度はポケットから小さな紙を出した。

「こうやって。」

髪に挿してあったピンで対角にある角と角に穴を開けた。

「?」

「この点と点を結ぶにはどうする?」

「重ねる?」

「そうそれ。こことここを結ぶにはこういう風に折ったり曲げたりして、近づけてやればいいの。」

それで分かった。

「空間をゆがめてくっつけるってこと?」

「そうよ。分かっているんじゃない。じゃあできるわよ。」

「いや。それとこれは別だろ?」

「あら。トイレはできているでしょ。」

え?

「気がついていないの?空間ゆがめて体に不要なモノを排出しているじゃないの。」

「え?あれって空間魔法?」

「の一種だと思うわよ。」

考えもしなかったな。

「じゃあ?体の清潔も?」

「の一種だと思うけどねえ。体のいらないモノを空間のどこかに排出しているのには変わりないじゃないの。」

「じゃあ、アルファさんは?」

「攻撃魔法も得意だし、体の清潔も持ってくれていたんでしょ。」

僕は考え込んだ・・・

「もしかしたら、炎の塊を相手の陣に空間をゆがめて打ち込む・・・なんてこともできるんじゃないか?」

「まさしく。それをあんたはやっていたのよ。だから、爆煙のオーリなのよ。」

池の畔でララが僕に言う。僕は

「その変な呼び名どうにかならない?」

と思わず言う。

「何言ってんのよ。自分で名乗ってたくせに。」

うわあ。恥ずかしい・・・


気を取り直して、ひょろひょろの僕の炎を出す。そしてそれが池の上に出現するようなイメージを持つ・・・

ぽすっジュッ・・・

「あら。出た途端に池の上に移動したわね。やればできるじゃないの。」

「ひょろひょろだけどね・・・」

「そこは練習よ。がんばってね。」

と言った途端ララは消えた。

「転移・・・もしかしたら。」

・・・できた・・・城の僕の部屋に移動できていた。一瞬でもといた池の畔に・・・


後は炎の大きさ?

僕が考え込んでいたらアルファさんがやってきた。

「さっきは空間がゆがみましたね。転移を思い出したんですね。」

「ララのおかげです。」

「うんうん。彼女、いい仕事してますねえ。」

それからしばらくアルファさんについて炎の出し方とかを教えてもらった・・

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