第18話 第二章6 ヴァイスはその頃2

 わいわいと食事をしながら、飛竜隊だった頃の話に盛り上がる・・・

「そういや、鎧野郎は?」

 ニールの声にヴァイスが微妙な顔をした。もちろん表情の変化など、細かいところはジーク達には分からない。

「大丈夫だ。それより、さっきの連中に話をしたんじゃないのか?」

ヴァイスの声に、

「あ・・・ジーク様、あの連中、頭が固いのなんのって・・・」

急に疲れた様子を見せるニール・・


「明日もう一度絵を描いて説明するよ・・・」

「頼む。」


寝静まった真夜中・・ヴァイスは魔王と話をしていた。

『へえ。ララがねえ。』

『驚いたことにな。』

『ララは基本オーリのことが好きだからな。』

『そうなのか?』

『なんだ?気がつかなかったのか?』

『いや・・・』

『分かっているくせに。ララは大丈夫だって。』


・・・

『いつまで預かればいいんだ?』

『自分で用足しができるまでだな。』

『うむ。分かった。』

その声を最後に言葉は途切れた。



・・


「学び舎ですか?」

「そうだ。彼らが私の言葉受け入れられないことの一端にものを知らないと言うことがあるだろう。」

「まあ、もしくは、単に王のことを信用していないってこともあるでしょうがね。」

「・・・」

「王と王妃、宰相が結構やらかしていましたからね。ある程度は仕方ないかと・・・」

一部屋に飛竜隊だった者と、ジークの採用した文官が何人か集まり、ジークを囲んで話をしていた。

「ここは、思い切って投資していきたい。でなければ、愚者の集まりの国になってしまう。」

ジークは額にしわを寄せた。

「貴族だけの学び舎でなく、庶民農民のための学び舎ですよね。」

文官の一人が確認をしてきた。そこに大きく頷いたジークを見て、

「かなり難しいかと・・」

と、言葉を濁した。

「なぜだ?」

ニールが

「子どもは彼らの重要な働き手の一人ですからね。」

と言うと、みんな渋い顔になった。

「何か特典がなければ、誰も学びになんか来ませんよ。」

「特典?」

みんな顔を見合わせた。

「俺だったら、酒だな。」

「ああ。だったら、食べ物はどうですかね?」

「食べ物・・・」

ニールが頷いた。

「その子の分だけでなく、来たら家族分のパンを持たせるんですよ。」

「それだけでくるかなあ?」

「来ますよ。彼ら、明日の食べ物にも困ることがありますからね。」

「農家でも?」

「農家でも。」

みんなシーンとなった。

「ふうん。前の王と宰相はろくなことしてなかったんだな。私腹を肥やすだけで、民のことを考えなかったのか。」

王冠の上のヴァイスがあくびをしながら起き上がった。

「一月(ひとつき)に一度くらいテストして、成績がよかったら肉でも褒美につけてやったらどうだ?」

「肉!!」

ニールが笑った。

「それはいい。」

「おい、ドラゴン様だぞ。」

誰かがいさめるが、

「気にすんな。」

ヴァイスはのんきな声でこたえてから、

「一位の奴には大きく、他はそれなりに。にすればいい。」

と続けた。

「一位でなくてもやるんですか?」

「ああ。妬みそねみが出るとやっかいだからな。」

「なるほど・・・」


その後は文官達に任せることになり、解散した。


ジークの国はその後さらにいろいろなことに改革の手を進める。その結果、飛躍的な発展を遂げ、帝国と肩を並べるようになる。今はまだ、若き王の下、様々なことに挑戦しているだけだが・・・

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