第14話 二章 2 ここはどこ?え?魔界???

魔物が沈んだ後は、ボロボロになった船が一隻残っているだけだった。




・・・・

「オーリ様は?」

「魔物と一緒に海へ・・・」

「なんと言うことでしょう・・・」




・・・・・



ぶくぶくぶく・・・・・


途中までは覚えていたけれど、なんだか苦しくなってそのまま気絶しちゃったようだ。

目が覚めたらふかふかの布団の上にいた。もちろん鎧のままだ・・・ああ。脱ぎたい。なんかからだが重い。口の中がしょっぱい・・・

「おう、おきたか?」

「ヴァイス?ねえ、口の中が気持ち悪いんだけど。」

「お、口の中かぁ気がつかなかったぜ。」

すうっと何かが僕の口中をふき抜ける。

「さわやかだね。」

「そうだろう。」

偉そうに言う。

「そういえば、今まで気にしたこともなかったけど、僕って鎧の中に何を着ているのかな。」

「いまさら?」

「そう。いまさら。」

「おまえは・・・鎧と闘う前は・・いつも同じ白服だったぞ。」

「鎧と戦う?白?」

「おまえの背景からだと、白は無難だな。」

「背景って何だよ。」

「ま、そのうち分かるさ。」

またか・・・いつも自分のことを知ろうとするとはぐらかされてしまう。

「魔王が飯を一緒に食おうって誘ってきてるぞ。」

僕はガバッと起き上がった。

「魔王だって??」

悪い奴に捕まっちゃったの?

「ばあか。魔王と俺たちは友達だぜ。」

えええ???


召使いに案内されながら長い廊下を歩く。歩きながら頭を整理する。

僕は前、白い服を着て行動していたらしい。魔王と友達らしい。鎧と戦ったらしい。鎧と戦う?今来ているこの鎧?え???


あれ?じゃああの船のところにいた魔物、倒しちゃいけなかった?

「ああ。気にするな。すぐ復活するからな。」

え?


え?が多すぎる。ぼくっていったい?



魔王はずんぐりした人の良さそうなおじちゃんだった・・・あれ?魔王って、美貌の人じゃなかったっけ?じっと見ていたら

「いやあ、照れるなあ。久しぶりだね、オーリ、記憶をなくしちゃったんだって?難儀なことだね。」

って親しそうだ・・・

「魔王、それだけじゃねえぞ。剣も魔法も、なんもかんも忘れちまってたんだ。」

ヴァイスが食前酒に鼻を突っ込みながら言うと、

「なんだって。」

っと魔王はさらに驚いていた。

「剣の方は人の国でなんとか勘は取り戻しつつあるんだが、他はさっぱりだ。」

僕が口を挟む隙なんてない。二人で勝手に盛り上がってどんどん話は進んでいく。


 テーブルの上にところ狭しと並ぶ皿。給仕の人が取り分けてくれる。

給仕の人も僕を知っているらしく、

「これがお好きでしたよね。」

僕が好きだったという料理を僕のお皿にたくさんのせてくれる・・・王とヴァイスの話を遠くに聞きながら僕は黙々と食事を続けた・・・・


「・・・で、オーリだが。この城でしばらく魔法の修行をさせてやってくれ。俺はちょっと出かけなくちゃならねえとこができたから・・・」

「ああ。安心しろ、ここなら安全だ。」

ふと自分の名が呼ばれたような気がして意識を料理から二人の方に向けたら、勝手に話が進んでいた。

「いや、僕、あの船に戻らなくちゃ。それに、ヴァイス、どこに行くの?」

「ああ。ジークのところだ。皇帝にも会わなくちゃな。」

「ええ!!僕も行きたいよ。」

「いや。俺だけでいい。おまえはここで修行だ。」

スープの入った器から顔も上げずに応えるんだ。ちょっと腹が立つ。

「でも・・」

「魔法の力を取り戻してからでも遅くはないだろ。」

魔王も参戦してくる。

・・ 確かに前は使えたという魔法の力を取り戻せたら、トイレ問題も簡単に解決する。あ、トイレ!!

「僕・・・トイレはどうしたらいいの?

・・・それに、船の上で心配していると思うから。」

そう言っても、

「そういえばトイレね。体の清潔もそうだったな。」

「そうだよ。誰に頼めばいいの?」

肉を切る手を休めて魔王が

「ああ、宰相のアルファに頼むとよい。」

って、だれ?

「忘れちまっているようだが。まあ・・俺の片腕さ。こいつに魔法のことも習うといい。」

「おいおい、奴、死ぬほど忙しいって言っていたのにいいのか?」

ヴァイスも心配してくれているのかな?

「ははは。おい、アルファを呼んでこい。」

豪快に笑った魔王が給仕の人に言いつけた。


しばらくたって、細身の、黒いマントを羽織った人がやってきた。

「なんですか、私は忙しいんです。暇な魔王様と一緒にしないでください。こっちはまだご飯も食べていないのに。」

入ってくるなり魔王にかみついたよ、この人。あれ?マントからのぞいているうねうね・・・もしかして、船の上の魔物?

僕の心を読んだみたいに

「はい。そうですよ。船の上では楽しかったですね。」

って。大丈夫なの?僕、剣を突き刺しちゃったんだけど。

「大丈夫ですよ。あれは私の作り出した物ですから。・・・すぐに復活していますしね。」

へえ。

「で、オーリ様を私が教えるんですか?」

「そうだ。頼むぞ。」

「いいですよ。でも。魔王様、その間の仕事は魔王様が全てするんですよ。」

「・・・・お・・・・おぅ・・・・・」

「いいですね。逃げはいけませんよ。」

「おぉ・・ぅ・・」

肉を刺しているフォークが揺れているね・・

「ま、まあ、おまえも席に着け。おい、追加だ。」

アルファさんが席に着いたところで、明日からの打ち合わせが再開した。いいさ。どうせ僕は空気だ・・・・


・・・・

「大丈夫だ。寸分違わず元のところに返してやるさ。」

・・・・

「そうそう。すぐに一緒に行動することになるさ。」



・・・・・


なんか不満はつきないけれど、食事の後、ヴァイスは本当に飛び立ってしまった。

「心配するな。修行の後で送ってやるから。」

心配するよ・・・

「送るのは私ですしね。」

じゃあ大丈夫か。

「おい、今、失礼なことを考えなかったか?」

・・・・・


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