第11話 幕間3

 ヴァイスは難なく盗賊達が来た道をたどっていく・・・

「あそこだな・・・」

峠の中腹にある分かれ道。上から来たから気がつかなかったけど、来た村の方向ではない方にもうっすら道がある。

「山菜採りに使っているんだろうな。」

再び僕の腕に巻き付いたヴァイスが示す方向へ進む・・・

『おい、音を立てるな。』

『そりゃ無理だよ。鎧着てるんだから。』


崖のそばの木々の間に入り口が巧妙に隠されていた。

『お。すごい。認識阻害の魔法がかけられているぞ。』

『うん。すごいな。』

『・・・オーリ、おまえ?』

『・・ん?』

『魔力が戻ったのか?』

『魔力?僕何か言ったのかい?』

ヴァイスはため息をついた。

『無意識か・・・』


入り口には男が一人立っていた。

「おい。異常はないか?」

奥から声がする。

「何にもありませんぜ。」

「なんというかな。空気の揺れがあるってお頭が言ってるんだ。お頭のカンは鋭いからな。何かあるに違えねえ。」


『おお。よく分かる奴がお頭らしいぜ。』

『大丈夫なの?』

『任せろ』


ヴァイスはするりと僕の腕から降りて透明になった・・・僕の足下に袋を投げ出す。

『行ってくる。少したったら入ってこいよ。』

袋の中は縄だ・・・ヴァイスの方を見ると、脇を通った途端、見張りの男が崩れ落ちた。

「おい、」

慌てた声が近づく・・・と、倒れる音・・・

ヴァイスはそのまま侵入していった。そっと男に近づく。眠っている。僕は二人を背中合わせに縛った。

これは楽ちん・・・僕はそのまま歩を進めた。所々に倒れている男達を順に縛る・・・

10人ぐらい縛ったところで縄がつきた。後は、奴らが着ている服を使って縛るしかない。キョロキョロしながら先を急ぐ・・・おや?ヴァイスが扉の前に立っていた。

「この中にお頭っって奴がいるぜ。あと2人くらい・・・結構強そうだし、開けると魔法の攻撃を受けるだろうな。」

「で?」

「おまえの出番だ。」

「僕、魔法なんて使えないよ。」

「おまえの鎧は魔法の攻撃をはねのけるはずだぜ。それを着る前におまえが言ってたからな。確かだ。」

「・・・魔法攻撃なんて、受けたことないからわかんないよ。」

「よかったな。ここで試せるじゃねえか。」

うわあ・・・

「結界は張ってくれないの?」

「馬鹿だな、試せるチャンスにそんなの張るわけねえだろ。大丈夫だ。だが、・・・そうだな、よっぽど危なくなったら張ってやる。」

あんまり安心できないけれど・・・



戸を開けるのと一緒に炎が飛んできた。

「うわっ!」

炎は鎧に当たって霧散した。

「ああ驚いた。」

続けてまた飛んでくる今度は近くに来たと一緒に爆発・・・と思ったら、消えた。この鎧すごい。

『おお。本当におまえが言ってたとおりだぜ。』

『ちょっと待って、確かだと言ってたじゃないか。』

『そうだといいな・・・とな・・さあ、こっちから反撃しろよ。俺は見ているからさ。』

 僕は腰にある細剣を抜いた。慌てて何発も炎の爆弾を続けて出している男の方へ進んでいく。何度試しても目の前で魔法が消えていくのを見て、男も剣を抜いた。

「でっかい剣だなあ。」

ぶんぶん振り回すから危なくて仕方ない。

『危ないのは当たり前だろ。お頭必死だろうよ。』

このまま剣同士が当たったら、細剣が折れちゃうかも。僕はとっさに細剣をしまい背中の大剣に手をかけた。そのまま剣を抜く。抜いてから気がついた。

「あ。この剣、抜けたんだ。」

「あほ。抜けるようになったんだ。剣の力が解放されたんだ。」

その剣で相手の剣を受け止めた。一合、二合・・・三合目で僕は相手の剣を絡め取ってたたき落とした。剣が軽い?

男は自分の手を信じられないものを見るように見ていた。

「まて、」

男が両方の手の平をこちらに向けて叫んだ。

「なんで待たないといけないの?」

「降参だ。」

にやついているような感じがする

「ふうん?」

『嘘だぞ。こいつ、何かよからぬことを考えてるぞ。』

「だまされないよ。降参しちゃったら、君、死刑になるって知ってるんでしょ。」

「ちっ」

手のひらからまた炎だ。でも、効かないよ。

『魔力切れを起こすぞ、そいつ。』

くらりと倒れるお頭。

動けないのを確認してヴァイスが新しく出した縄で縛る。

『この縄は、魔法使い向けの縄なんだぜ。』

『ふうん?』

『縛られている間、縄がどんどん魔力をすっちまうのさ。』

『あれ?もう魔力切れを起こしてるって?』

『魔力切れを起こしても、また魔力はたまっていくだろ。あれ?たまるより吸う方が多くなるかもだな。』

『死んじゃわない?』

『俺は、食うこと以外の殺生は禁じられているんだぜ。』

大丈夫なのかな。少し不安だけど・・・

「おい、扉だ。中からよい匂いがするぜ。」

「臭い?」

くさいのか・・・

「お宝の匂いだぜ。」

お宝?ヴァイスがお頭の後ろにあった扉を開けろと言うから開けたんだけど。

「すげえ。」

「本当にお宝の山だね。」

二人してごそごそお宝の山をひっくり返してみていたら、不意にヴァイスが僕を呼んだ。

「おい。これ。」

「なに?」

「杖だ。これ、おまえがなくした杖だぞ。」

 杖?どう見てもピンだ。ピンには、飾りが付いていた。小さな透き通った石の周りに赤・緑・青・黄色・・そして、白くて中に何かきらめく虹のようなモノが入っている少し細長い石たちがまるで花びらのように取り囲んでいる飾りだ。

「ピンの間違いじゃないの?」

「馬鹿。持って行くんだ。」

「どこに入れるのさ。」

「胸のところに入れる場所があるだろ。」

確かにピンが刺さるくらいの穴が一つ開いている。

「そうだ。そこに刺しとけ。」

胸の小さな穴にピンを刺したら、

「なんだか懐かしいような、温かいような気持ちになったんだけど。」

「おまえの杖だからだ。」

また一つ自分の何かが帰ってきたってこと?あ。大剣も抜けるようになったんだ。二つ?


入り口の近くに厩と馬車があった。馬は2頭しか残っていなかったけど、荷馬車に盗賊連中を積んでいざ、元の場所へ・・・・

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