#39 今後のこと



 買い物から帰り荷物等を片づけると、少し早い時間だったがお店に行って仕込みを始めることにした。 夕食を二人で食べながら、お金のことや今後の生活の事を相談したかったので、早めに仕込みを終えるようにそうした。


 マドカにもそう話すと、「だったら私もお店に付いて行っていい? 何も手伝えないかもしれないけど、少しでも勉強しておきたい」と言ってくれたので、マドカもお店に連れて行くことにした。



 前日の仕込み作業のメインは、麺のタネを作って置き、寝かせておく作業。

 ウチの店では、専用のミキサーで粉を練ってタネを作り、そのタネを専用の保管器で寝かせて置く。 一応人力で粉から練ることも出来るが、人手や効率の面で機械に頼っている。


 その辺りを実際に作業しながらマドカに説明した。

 マドカはメモ帳片手に時折質問を挟みながら、俺の説明を真面目な表情で聞いていた。



 ひと段落付いた所で、お茶を煎れてカウンターで二人で座って休憩している時に、俺の方から聞いてみた。


「女将さんにココでの仕事に誘ってもらった時、俺の将来のこと言ってたけど、俺とうどん屋を始めたいって考えたの?」


「うーん、正直言うとそういう未来も良いなって思ってる。 12月にマサくん見つけた後にね、どうやったらマサくんの傍に居られるんだろ?って色々考えて、岡山に移住しても今までみたいな普通の会社勤めじゃダメなんじゃないかって思ったの」


「なんでそう思うの?客商売なんて凄く不安定だし、会社勤めと比較は難しいけど、色々とストレスが溜まる職種でもあるんだよ?」


「でも、マサくんだってソレ分かっててこの道を選んだんでしょ? ファミレスで働いてた時だって色々苦労してるはずなのに、ファミレスの時よりももっと不安定な道なんでしょ?」


「そうだけど・・・」


「苦労するからダメとか、不安だから止めとこうっていうのは考えない様にしたかったの。 そんなこと気にしてたら仕事辞めてココまで来れないよ? だから今は、マサくんがうどん職人の道を選んだのならそのサポートが出来るようになりたいって思ったのね。 私は飲食店とか客商売とか全然分からないし、だからこそマサくんのお荷物にならない様に自分でも商売のこと勉強したいと思うの。 それにマサくんがお世話になった恩人の方たちが私の面倒も見てくれるって言ってもらえるなら、私にとってこんなに都合が良い話ないって思ったの」


「でも、俺が自分のお店持てるようになるかどうかは分からないよ? それでもいいの?」


「良いよ。お店が持てるかどうかより、マサくんの傍で一緒に働けることのが大事だもん。 昔はマサくんの仕事のこととか全然理解出来てなかったけど、今度は仕事のこともちゃんと分った上で一緒に働きながら暮らせるのなら、こんなに幸せなことないと思うよ」


「そっかぁ、ソコまで考えての話なら俺としては有難い話だし、マドカの好きなようにすると良いよ。 俺も出来る限りフォローするようにするからさ」


「ありがと。うふふ」




 その後は、一通り作業を終えると、片付けや掃除をマドカに教えながら二人で協力して終えて、2階の女将さんに一言報告してから、アパートに戻った。


 夕食は、マドカの就職祝いってことで焼き肉を食べに行き、食事をしながら今後の生活に関して色々と相談をした。



 今まで食事は全部大将の家で世話になっていたけど、今後は夕飯は自宅で食べ、朝と昼は大将の家やお店で。 洗濯物も今後はマドカの物もあるので、自宅で済ませる。


 洗濯機、冷蔵庫、掃除機、テレビ、炊飯器等の家電を買う。 

 調理器具や食器、食料品や消耗品なんかも買う。


 お金は俺のお金で支払いする。 

 俺は週1の定休日しか時間が空いてないから、急ぎで必要な物は、仕事の後にマドカが買いに行く。(マドカは6ー15時の勤務で夕方以降は空いている)

 買い物や用事が有る時には、マドカには俺の車を自由に使って貰う。


 結婚式のキャンセルに掛かった費用の負担に関しては、マドカが固辞した為、今後の家賃や光熱費に食費を俺が負担することで、決着。 昨日返して貰った現金をそっくりマドカに渡して、昔作った共有口座に入れて、マドカに管理を任せることにした。


 また、両方の実家への謝罪は直ぐに行くべきだけど、まずはマドカが岡山での生活や仕事を慣れることを優先しようと、3月に入ってからに仕事の都合をつけて行くことにしたが、マドカとより戻すことになった話や一度実家に報告をすることを伝える為に、俺の実家に約5年ぶりに電話したら、滅茶苦茶怒られ、そして心配されて、近々両親の方から岡山に来ることになった。

 因みに、マドカのご両親も1度岡山に来るそうだ。 先に俺から出向いて謝罪するべきだと言ったけど、「ウチの両親は、マサくんに対して全く怒ってないよ。むしろ私のせいで申し訳なかったって謝罪したいって言ってるの」とのことで、マドカの両親も近々岡山に来ることに。




 この日はこれらのことを相談して決めて、あとはアパートに帰って風呂入って寝ることにした。



 そして、もう入籍することは決まったし、今夜からは気を使って車で寝る必要は無い。

 つまり、久しぶりに恋人としての夜だ。



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