#36 気になってたこと
マドカは5年もの間隠し事をし続け、その結果結婚式をすっぽかされて捨てられるという経験をすることになった。
その上で『私も、もう隠し事も嘘もつかない。 マサくんに信用して貰えるように頑張る』と言ってくれた。
言葉では言うのは簡単だと思う。
でもマドカがこれまで経験してきたことを思えば、言葉に重みを感じられた。
「マドカ、話してくれてありがとう」
「ううん、それは逆だよ。 私の方こそ話を聞いてくれて、ありがとう。幻滅したでしょ?」
「幻滅かぁ・・・5年前なら幻滅してただろうけど、今はあまり無いかな。 思ってたよりも酷い話じゃなかったからかな。 良くも悪くもマドカはやっぱりマドカだった、って思うよ」
「そうなの?」
「うん」
「そっか。 マサくんはやっぱり私の一番の理解者だったんだね。つくづく自分で自分が嫌になっちゃうな」
「あ、でもまだいくつか確認したいことはある」
「うん、何でも聞いて。 全部ちゃんと答えるから」
「うーんと、1つ目は、俺が把握してたのは、マドカは結婚の3カ月くらい前、確かその年の2月いっぱいでお店辞めて引退してるだろ? それは結婚するから? それとも他の理由?」
「うん、間違いなくその年の2月で完全に辞めたよ。もちろんそれから今日までいっさい風俗には関わっていないよ。 それで本当はね、2月じゃなくて3月に引退するつもりだったの。 でも昨日も話したけど、マサくんの様子に違和感感じるようになって、風俗でアルバイトしてることがバレるんじゃないかって凄く怖くなりはじめてね、それで直ぐに辞めることにしたの」
「そういえば、昨日そんな話してたね。 俺にバレてて捨てられるんじゃないかって不安で、しょっちゅう呼び出して会ったり、デートの後に車から降りたくないとか言ってた話でしょ? 丁度あの頃か」
「うん。 怖くて怖くて仕方なかったから」
「なるほど。 当時は俺との結婚生活にSM嬢の仕事を持ち込むつもりは無かったってことで間違いない?」
「うん。誓ってそのつもりは無かったよ」
「わかった。 それで2つ目に聞きたいのは、学生時代からラブホとか行くときに、マドカがエッチなランジェリーとか用意してくれてたじゃん。 あれってお客さんからのプレゼントだったの?」
「うーん、プレゼントで下着貰ったこともあったけど、使うことは無かったよ。気味悪いでしょ? だから自分で買った下着しか使わなかったよ」
「そっか。 なんかさ、俺の勝手なイメージだけど、風俗のお客さんからのプレゼントって下心100%だろっていうイメージがあってさ、俺はそれを知らずにマドカがお客さんから貰った下着を身に着けた姿に喜んでたのかって考えると、結構凹んでさ。 心の狭いつまんない男って思うだろうけど」
「ううん。そんな風には思わないよ。 私だって、もしマサくんが他の女の子から貰ったプレゼントとか使ってるのみたら、凄い嫉妬するもん」
「そうか。まぁそうだよな。 今なら余裕持ってそう理解出来るけど、やっぱ当時はそういうこと考えるだけでもキツかったからな」
「うん、そうだよね。ホントにごめんね?」
「ああ、別に今更責めてるつもりじゃないから。 マドカと一緒で、あの頃は俺も若くて余裕無かったってこと言いたかっただけ」
「そっか。 それで他にも聞きたいことはあるの?」
「えーっと、最後に1つだけ。 疑ってるとかじゃなくて、あくまで確認」
「うん」
「他にはもう隠し事とかない? 例えば、浮気したことあるとか、借金があったとか。 SM嬢のことは俺は偶然知って興信所使って調べたから把握出来たけど、他に何かあったとしても、俺は全く知らない。だから、もし何かあったのなら、マドカの口から教えて欲しい」
「浮気や借金は一切無いよ。 風俗のアルバイトのことずっと隠してた私が言っても説得力無いと思うけど、絶対に無い。 私はマサくんとしかキスもセックスもしたことない。他に後ろめたいことも無いよ。 疑うなとは言えないけど、信じて欲しい。 信じて貰う為だったら、何だってするよ」
「わかった。 別に疑ってて聞いたわけじゃないから。 俺だってマドカのこと信じたいって思ってるからね。だから最後の確認として聞いたの」
「うん。 でも私は何を疑われても、それだけのことをしちゃってたから、そのことで不満とか言うつもりはないからね」
「了解。 あ、それと、ごめん。 俺嘘付かないって言いながら、さっき1つだけ嘘言った。 風俗行ったこと無いって言ったけど、実は1度だけある。 マドカがSM嬢してるの知った後、何とかマドカの事を理解出来ないかって悩んで、それで1度SMプレー体験してみようって行ってみたことがある。 さっきの話の流れで思わず行ったことないって言っちゃった」
「え?え?マサくんSMプレーしたの? その話、すっご~く気になるんだけど?」
「その時の話はまた今度な・・・結構なトラウマだからさ・・・」
マドカの話を聞いて、一番に思うのは「過去は過去」
若かったあの頃は、その過去に囚われて、マドカを傷つけ逃げることを選んだ。
でも今の俺は、過去よりも未来だ。
うどん職人の道を選んだ俺。
マドカと結婚して、再び一緒に暮らす道を選んだ俺。
俺は逃げるのはもう止めると決めたから、敢えて『結婚』に拘り、自ら逃げ道を塞いだ。
そしてマドカの話を全て聞いた上で、俺の決意の証を今度こそ。
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