#18 結婚式1週間前
結婚式の1週間前にもなると、仕事の方は店長業務をほぼ後任に任せるようにして、自分は従業員の教育しながら通常オペレーションに集中するようにしていたので、仕事の負担は一気に減った。
そして、元々引っ越しをする為に月曜と火曜は有休を取っていたので、予定通り仕事を休み、一人で実家から私物を新居に運び込み、そのまま新居での生活を始めた。
逃亡をすることが決まっているので、逃亡時に持っていかない物は実家に置いて来たり捨てたりして、なるべく荷物は減らした。
運び込んだ荷物はどうせ金曜日(23日の逃亡決行日)の深夜にはまた車に積み込むことになるので、それを意識して直ぐにまとめられるように極力荷ほどきしないようにして、必要最低限の肌着とか下着だけタンスにしまった。 それと、新しいスマホや岡山のアパート関連の書類なんかは部屋に置いておけないので、自分の車のトランクにしまっておいた。
そしたら、月曜日の夕方、仕事を終えたマドカが連絡無しに突然来やがった。
仕事を終えて帰宅してから着替えもせずにそのまま自分で車運転して来たらしく、油断してたところにやって来て「まだ荷物ほどいてないの?」と聞かれて少し焦ったけど、「今日は疲れてたから、明日やる予定」と言うと、特に怪しまれずに済んだ。
その日は結局様子を見に来ただけの様で、俺の作った夕食を二人で食べたら大人しく帰って行った。
この日、新居で初めて一人で寝たけど、なんだか妙な気分だった。
なんというか、自分の家なんだけど、居心地悪くて落ち着かない様な。
「この部屋に馴染んではいけない。この部屋での新婚生活の誘惑に負けたらダメだ」と無意識に心にバリアを張っていたのかもしれない。
火曜日は、またマドカに怪しまれない様に荷ほどきして、一通り片づけて、銀行に行ってお金を降ろしたり、後は逃亡決行日の細かい計画を練ったり、逃亡中に一泊するビジネスホテルの予約したりして過ごした。
水曜日は、新居から職場に出勤して、定時で上がりそのまま新居に帰宅。
特に何もなし。
木曜日は、マドカが引っ越しの日だったので、シフトを午後からにしており、午前中はマドカの引っ越しを手伝い、12時出勤して21時に上がって帰宅した。
帰宅すると、マドカの荷物はほぼ片付けが終わっていて、食事もマドカは一人で済ませ、俺の方も職場で済ませていたので、すぐに一緒にお風呂に入ってからエッチをした。
この日のセックスが、最後のセックスとなった。
事を終えると、マドカは疲れていたのか一人でスヤスヤ寝息を立てていた。
俺の方は、「これで最後か」としばらくマドカの寝顔を眺めていた。
金曜日は、朝起きると二人で一緒に最後の食事をした。
もちろん、マドカは最後だとは知らないけど。
朝食を食べ終え出勤準備を終えると、一緒に部屋を出た。
部屋を出る時に、「お仕事がんばってね」とキスをしてくれた。
これが最後のキスとなった。
マドカは、この日の夜と翌日の土曜は、独身最後を家族と過ごす為、新居には来ない。
次に新居へ帰ってくるのは、結婚式当日の予定だ。
仕事の方は、この日を最後に勤務は終了。あとは有休の消化となる。
8時から17時まで普通に勤務して定時で上がって、ロッカーの荷物(この中には興信所の報告書もある)を回収して帰ろうとすると、古株のアルバイトの女の子に泣かれて、ちょっと困ったけど、でも嬉しかった。
因みに、後任店長の後輩には「俺が退職後、元婚約者や家族から問い合わせが来て迷惑かけるかもしれん。 何か来ても、既に退職したから解りません、で押し通して欲しい」とお願いしてある。同様の事を元エリアマネージャーの上司にもお願いしてある。
こうして、遂に逃亡決行の最終段階に入った。
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