#17 結婚式1か月前



 4月になると3月以上に忙しくなった。


 仕事の方では、新入社員の店舗研修を二人預かることになり、そのせいで4月前半はどうしても残業が増えた。


 お陰で、移住先のアパートの契約の書類揃えたり、銀行行ってお金を振り込んだりするのに少し時間が掛かってしまい、早くしないと空きが埋まってしまう!と結構焦ったりもした。


 無事に契約が完了した連絡を貰った時は、心底ほっとした。





 また、式のことは全てマドカに任せているのに、マドカからいちいち確認の連絡が来るのにも辟易した。


 これも、何も無くて本当に結婚するのならちゃんと誠実に対応してたんだろうけど、今じゃ全くやる気無いからね。 それなのにそれを態度に出すわけにもいかないから、精神的に苦痛になっていた。


 だけど、マドカの方も忙しい中で式の準備を進めている為か、情緒不安定気味の様でちょっとしたことで泣き出したり、「会いたい」コールが増えていた。


 特にマドカの誕生日も4月にあったのだが、その日は酷かった。

 その日、休みを合わせて一日デートをして夜はホテルに行って過ごしたのだけど、帰り家まで送ると「まだ帰りたくない」と我儘言い出して車から降りようとせず、結局車を降りて家に入った時には0時を過ぎていた。




 それと、マドカのSMクラブの方は「もう俺には関係ない。好きにすればいい」と思いながらも、ふと「結婚してからも続けるつもりなのか? それとも結婚を期に辞めるのか?」と気になり、久しぶりにお店のHPを確認したら、花蓮女王様の写真が無くなっていた。


 いつ辞めたのか?

 もしくはどこか別の店に移籍したのか?


 その辺りが気になったので、お店に客のフリして電話して聞いてみると、2月いっぱいで引退したと言われた。


 まぁ今更だけど、俺との結婚生活にSM嬢としての裏の顔を持ち込まないつもりだったのかな?と、少しだけ安心したりもした。






 ◇






 5月に入ると、新居の鍵を受け取り、本格的に新婚生活の準備を始めた。



 二人で休みを合わせて掃除をしたり、家電や調理器具に食器、バス用品なんかを買いそろえた。 また、マドカが立ち会って家具の搬入も終えて、一通り生活出来る程度には準備が整った。



 それでマドカが「新生活始める前に、お試しでお泊りしようよ」と言い出した。


 お泊りは、マドカが休日の土日。

 マドカは土曜の朝から新居で片づけなんかをして過ごし、俺はその日仕事を終えたら新居へ帰ってマドカの作った食事を食べて、一緒にお風呂に入って、エッチして一緒のベッドで寝た。


 因みに、コンドーム用意してないから出来ないと思ってたら、マドカの方で用意していた。


 次の日も俺は仕事だったから、新居からそのまま出勤して、仕事を終えたら新居に帰って、マドカの作った食事を食べて、一通り片づけたら、マドカと別々に車で実家に帰宅。


 こんな感じで毎週末お泊りをした。






 また、5月は仕事の方で俺の後任が来たので、その引継ぎ業務も始めた。


 後任が、店長未経験の後輩で、ある意味俺の我儘で店長を任されることになった様なものだったから、出来る限り困らない様にと色々苦心した。


 パートやアルバイトのレベルや意識が低いと、それらのしわ寄せがどうしても店長やマネージャーに来てしまうので、パートさんやアルバイトの子達には「置き土産に時給上げたいから、俺が居る間にそのつもりで頑張ってほしい」とニンジンを見せつつスパルタでビシビシ鍛えた。


 また、人手不足も新人店長には頭の痛い問題となる為、アルバイト募集の広告を依頼したり在籍してるアルバイトの子達に友達とかスカウトしてくるようにお願いして、ガンガン面接をして何人か採用して確保した。


 


 因みに、5月には俺の誕生日もあったけど「結婚式の前で忙しいから、式が終わってからゆっくりお祝いしてほしい」と言って、何もせずに済ませた。




 こんな感じで、とにかく忙しい日々をなんとか乗り切り、結婚式の1週間前となった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る