#16 結婚式2か月前
マドカの家に迎えに行くと直ぐにマドカが出て来たので、車に乗り込むと車を出さずにそのまま話し始めた。
「急に会いたいって、何か話とかあったの?」
「うーん、ちょっと顔が見たくなったの」
「そっか。 俺、今日は疲れてしんどいから、このまま車でお喋りでもいい?」
「うん。 遠出してたんだよね? ドコまで行ってたの?」
この質問は想定していたから、予め考えてた嘘を話した。
「静岡の沼津。 急に美味しい魚料理食べたくなって、沼津港まで行って来た」
「えー!私も行きたかった!」
「そうなの?じゃあ今度行くか。 結婚した後ならゆっくり遠出する機会もあるだろうし」
「うん! それで何食べたの?」
「アジのフライ定食」
「えー、いいなぁ、美味しそう。 今度絶対に連れて行ってね?」
「うん、わかった」
そんな話をしつつ、結婚指輪の予算を話し合ったり、新居の家具や家電を見に行く日を決めたり、新居を引っ越し前に掃除をすることや、カーテンなんかの話を聞いたりした。
22時になると、マドカは俺に抱き着いてキスしてから車を降りて行った。
マドカが玄関に入ったのを確認してから車を発車させ、家に帰るとシャワーも浴びずに倒れるように寝た。
◇
3月に入ると、新しいスマホを購入した。
岡山に移住してから使う物なのでまだ使わないけど、アパートの契約等は全部こちらの電話番号にするので、早めに用意することにした。
しかし、まだ全く使わないし、マドカに見つかりでもしたら怪しまれるに決まってるので、持ち歩かずに自分の部屋のキャビネットの奥にしまってある。
そして、3月にはホワイトデーがあるので、それも用意した。
新居で使うティーカップのセットを買った。
マドカの趣味に合うものがどんなのか分からなくて実際にお店に行って色々見てたんだけど、途中でどうでも良くなって、安くも高くも無いのを選んだ。
購入したティーカップのセットは、車に積んだままにして、14日に仕事帰りにマドカの家に寄り、直接渡した。
渡したら直ぐ帰るつもりだったけど、マドカが凄く喜んでくれて「上がって行って!」と言われてしまい、帰りたくても帰れず1時間マドカの部屋でお喋りに付き合わされた。
また、3月には新居用の家具や結婚指輪を見に行った。
引っ越しシーズンの4月になると品薄になるだろうからと、3月中に最低でもベッドとリビング用のローソファーやテーブル、洋服ダンスを買っておこうと決めていた。
俺は自分が使う訳じゃないからどうでも良かったし、そうじゃなくてもマドカの意見を優先するべきだろうから、全部マドカに選んで貰って、俺はたまに意見聞かれたら答える程度にしていた。
一通り家具を決めて、ついでにカーテンもその家具屋で選んで、届けてもらう住所や日付とかを確認して、支払いもその場で全部済ませた。
家具は5月上旬に新居に届くので、その前に1度部屋を掃除して、配達当日はマドカが新居で立ち会うこととなった。
結婚指輪は、婚約指輪を買ったお店で選んだ。 家具と同じく俺は希望とか意見は無いので、全てマドカに任せて選んで貰った。
着々と結婚生活の準備が進んでいる。
式場の細かい打ち合わせは全部マドカに任せてるし、後は家電とか寝具を揃えるのと、自分たちの引っ越しくらいか。
それと、3月下旬に岡山の不動産屋にアパートの空き状況を確認すると、まだ大丈夫だと言うので、契約する旨を伝えて必要書類を送付して貰うように依頼した。
因みに、送付先は職場の店舗にしておいた。 自宅に送られて親にでも見られたら全てが台無しになりかねないからね。
結婚式2か月前の3月は、こんな感じで忙しく過ぎて行った。
この時期になると、仕事で忙しかったり、マドカの急な「会いたい」コールに付き合わされたりして疲労困憊な日なんかは、「早く逃亡して解放されたい」と考えるようになってきていた。
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