#15 逃亡先を決める



 マドカの事や新居の事を考えていると、どうしても心がチクリと痛むことがある。


 逆に、移住先のことを考えていると、楽しい。

 嫌なこと忘れて、テンションが上がってくるんだよね。




 それで、移住先なんだけど。


 まず最初に思ったのが、雪国とか寒い土地は止めておこう。温かい所がいいな。

 その条件から、岡山、広島、福岡に絞った。



 そして、知り合いが居ない土地。


 福岡は、大学時代の友人が住んでたはずだ。

 人口の多い都市だから、まさか偶然会う様なことは無いとは思うけど、何があるか分らないしな。



 ということで、岡山市と広島市の2つまで絞った。




 ネットで色々調べての土地の印象は、岡山は交通の要所。

 関西から山陽地方、山陰地方、四国を繋ぐ窓口となっている都市で、交通網が集中している。

 つまり、人の出入りが多い都市だと言える。


 広島の方は、お好み焼きのイメージが強すぎて、特に他の印象が残らなかった。


 そして、広島には昔旅行で行ったことがあるけど、岡山には行ったことが無い。


 ということで、岡山市を移住先に決めた。

 そう決めた途端、早く岡山に行ってみたくてワクワクしてる。




 次に決めるのは、住む住居だ。


 岡山市の賃貸情報を調べると、驚いたことに、安い。

 今、俺達が住んでいる都市は、岡山市より全然人口少ない市なのに、岡山のがよっぽど安いのだ。 立地とかよく分かんないし、車は持っていく予定だから、駐車場完備と築年数でいくつか候補を絞っておいた。



 早速自分の足で岡山へ下見に行くことにして、お店のシフトを店長権限で調整した。


 次の自分の休みの前日を、朝から夕方までのシフトにして、休みの翌日を昼から夜までのシフトにした。 こうすれば、休みの前日の深夜にコチラを出ることが出来るし、帰ってくるのが休日の夜遅くなっても次の日の仕事に支障が出ない。



 これで岡山へ下見に行く日程も決まったので、今度は候補を絞ったアパートの不動産屋を1件だけアポを取った。





 ◇





 前日仕事が終わったらすぐに家に帰って飯食べて寝て、夜中の3時に起きて車で出発。

 東名高速道路に乗って伊勢湾岸ー新東名ー名神と乗り換え、山陽自動車道の岡山ICで降りた。


 途中2度ほどトイレ休憩を挟んだけど、深夜で空いていたせいか、4時間程で着いた。


 ただ、岡山市内は丁度朝の通勤渋滞でちょっとうんざりしてしまい、眠いのと長距離運転で疲れたのもあったので、適当なコンビニで車を停めて1時間程仮眠した。



 起きてから、そこのコンビニでおにぎりとお茶を買って車内で朝食を済ませ、市内を1時間ほど目的も無しにウロウロとドライブをしてから、10時前にアポを取っていた不動産屋を訪ねた。





 不動産屋では、県外から来てることと5月から入居したいことや駐車場が必須なことを話して、ネットで調べた物件の空き状況を確認して貰った。


 いくつか空きがあるというので、早速内覧出来るか聞くと出来るというのでお願いした。


 ついでに同じような条件で2件ほど担当者から紹介があったので、そちらも内覧をお願いして、直ぐに担当者の車に乗せてもらい出発した。


 移動しながら、岡山の美味しい食べ物や夏や冬の気候の話なんかを聞かせてもらい、益々移住後の新生活に夢を膨らませた。


 アパートについては、結局ネットで見つけた物件が一番気に入ったので、そこに決めることにしたが、直ぐに住む訳じゃないし、必要な書類や印鑑なども無いので、後日改めて空き状況を確認して、契約関連の書類は郵送で対応して貰う事となった。


 不動産屋から出ると12時すぎだったので、近くにあった天どんのお店に入って昼食を取りながら岡山市の観光情報を調べて、特に面白そうな物が無かったので、早めに帰ることにした。






 ◇





 14時過ぎに岡山ICから山陽自動車道に乗り、途中渋滞にハマりながら19時過ぎに帰宅した。


 帰る途中、マドカからメッセージが来てたようで、帰宅してからそれに気づいた。



『今日ってお休みでしょ? 会えるかな?』と18時前に来ていた。


 慌てて返信を送る。


『ごめん。ちょっと遠出してて今帰ったところ。 ずっと車運転してたから気づけなくて遅くなった』


『そうなんだ。 少しでも良いんだけど、どうかな?』



 ぶっちゃけ超疲れてて面倒だ。

 でも今まではどんなに疲れてても、会いたいって言われたらコッチから出向いて会いに行ってたんだよな。


 はぁ

 しんどいけど、行った方が良いか。


『わかった。30分後くらいに迎えに行くよ』


『ありがと。待ってるね』







 

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