#03 大学時代
大学に入学してからは、二人ともサークルには入らなかった。
入る必要性を感じなかったのと、二人で過ごす時間を優先したいとのマドカの希望もあったから。
大学では同じ授業を履修し、学校に居る間は常に一緒に行動した。
大学以外では、僕もマドカもアルバイトを始めた。
僕の方は地元のファミレスで週4日入った。
マドカは、家庭教師のバイトを週2~3で始めた。
「ファミレスだと学生のバイト多そうだね。ちょっと心配」
「うーん、そんなこと言われても家から近くて都合が良いから、今更変えたくないしなぁ」
「そこまでは言うつもりないけど・・・」
バイト先に対しての不安というかちょっとした不満を言われて、少しムっとしてしまい、マドカのバイトにも少し不安を零した。
「マドカの方だって家庭教師とかだと、生徒さんと二人きりなんでしょ? 中学生だっていうけど心配だなぁ」
「私の受け持ちは女の子だけだよ?」
「え、そうなの?」
「うん。そう希望出してそうして貰ったの」
「そうなんだ」
高校生の頃は、僕達は喧嘩をすることはほぼ無かった。
マドカが機嫌を損ねることは多少あったけど、だいたい僕に問題があったと自覚してたし、そういう時はすぐに謝り、マドカも後に引き摺るようなことは無かった。
だけど、大学に入るとちょっとづつ変わって来ていた。
マドカは僕に対して不満などを言う様になり、また、僕はマドカに対して少し嫉妬するようになっていた。
マドカはとにかくモテた。
高校の頃は僕と付き合っていることが周りに周知されていた為か、マドカに近寄って来る男子は居なかったが、お化粧をするようになり益々綺麗になったマドカに有象無象の男たちが近寄って来ていた。
そして、もう大学だと彼氏である僕の存在は何の役にも立たなかった。
学内での移動中や授業前、お昼の学食など、頻繁に男に話しかけられていた。
次から次へと「何学部なの?」「この教授なら去年のノート、コピー回そうか?」「サークル何にしたの?」「地元の子なの?」「今度ウチのサークルに顔出してみない?」と、入れ代わり立ち代わり、彼氏である僕の存在など目に入らないかの様に。
いや、あれは分かってて無視してたんだな。
言外に「こんなヤツより、俺たちのが楽しいぞ」って伝えていたのだろう。
マドカの方は、最初の頃はそんな男たちに戸惑いながら断る様にしていたが、その内慣れて来たのか、話しかけられても知り合い以外は無視するようになっていた。 その時の表情は、今まで見たことが無い様な冷たく相手を見下すような表情で、本気で怒るとこんな表情をするんだ、と僕は背筋が凍る様に内心ヒヤヒヤしていた。
◇
1年の夏休みに、僕だけ車の免許を取った。
自動車学校へ通う約1か月の間は、マドカと過ごす時間は減ったけど、そのことで特に不満を言われることは無かった。
免許取得後は、週末は親の車を借りてマドカを乗せてよくドライブに出かけた。
自分でお金を稼ぐようになり車という移動手段が出来たことで、二人で遊ぶ範囲が広がったし、ラブホへ行く回数も増えた。
そんな感じで大学生活も特別問題無く過ごすことができた。
二人とも単位を落とすことも無く毎年進級出来たし、バイトで稼いだお金で長期の休みには二人で旅行に行ったり、毎年4月の彼女の誕生日や5月の僕の誕生日にクリスマスに正月、バレンタインも一緒に過し、二十歳の成人式にも二人で行った。
セックスの方も2年3年となっても相変わらず全く不満は無かった。
マドカ一人としか経験が無かったけど、マドカとのエッチは全然飽きる事なく、いつまで経っても僕は夢中になっていた。
それはきっと、マドカの気遣いや努力があったからだと思う。
10代の頃は、お互い好奇心なんかもあって恥ずかしがりながらも色々なことを試したりハマったりした。
二十歳を過ぎてくると、変わったことにチャレンジするよりも、ゆっくりまったりするセックスがメインになってきた。
でもただ惰性でマンネリになっている訳では無く、マドカは普段とは違う大人っぽい下着を用意してくれて、中にはかなり刺激的でエッチなランジェリーなんかもあったりした。
コレがまた、普段の真面目で清楚なイメージとのギャップがあって、ただ身に着けてくれるだけでも僕はとても興奮した。
それらは通販とかで買っているらしく、本人が言うには「マンネリしないように私だって頑張ってるんだよ」と言っていた。
マドカのその心遣いは僕の心にビシビシ響いて、僕はマドカに感謝するように普段から大事にしていたし、他の女性へ興味を示すことも無かった。
ただ、気になることもあった。
僕は相変わらずファミレスでのバイトを続け、マドカは家庭教師を続けていたけど、僕よりも勤務時間が短いマドカの方のが金回りが良さそうだった。 お互い毎月の給料をオープンにすることは無かったけど、明らかに学生には手が出ない様なブランド物のバッグや、有名ブランドの化粧品なんかをいくつも持っていた。
1度マドカに聞いた時は、親が買ってくれたと言ってて、「マドカんちすげぇな。俺んちだと絶対そんな高い物買って貰えんわ」とビックリした。
◇
大学3年にもなると、就職やその先のことを考え始める。
まだお互い口に出したことは無かったけど、卒業後就職して仕事に慣れたら結婚するつもりだった。 それは当たり前のことだと思ってたから、敢えてお互い口にしていなかったというのもあったと思う。
就職に関しては、流石に別々の道を考えてた。
マドカは、一般の地元製造業を中心に就活していた。
僕の方は、ずっと続けていたファミレスの方で、エリアマネージャーからスカウトされ正社員として採用されることが決まっていた。
マドカは連日就活で忙しく動き回り、僕はのんびりバイトばかりしていた。
そんな中でもマドカは家庭教師のバイトを続けていた。
日数は週1程度に減ってはいたけど、「受験の子が一人居て、その子の為に途中で辞めたくない」と言って毎週金曜日にその生徒さんの家に行っているそうで、真面目なマドカらしいなと感心したし、頑張れと応援もした。
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