救済と捧げモノ(自己肯定感の低い子、献身的な愛)
風呂上がり、傷口に消毒液をかけて絆創膏で傷口を覆う。
体中に付いた血の跡を流し清潔なガーゼを禊の身体に当てる。
「ねぇ」
「ん?」
俺に手当をされる彼女は俺に背を向けたまま話しかける。
「どうして、どうして亮ちゃんは自分で自分を傷つけられるの?」
か細く、躊躇いがちに呟く声色からは何か心配というよりか不満を持っている力強さがどことなく含まれていた。
「言っただろう。傷ってのは……」
「うそつき!」
禊は俺の手をからガーゼを奪い取り、俺の肩を掴む。
「ホントにそれだけならただ、今ある傷で満足するんじゃないの!?今だって肩の傷を作って、ほったらかしで!」
「それは……治療行為で」
「それなら、自分でやることじゃない。病院でしてもらって」
「……」
「どうしてそんなに……躊躇無く自分を切れるの?」
俺はその問には答えられない。否、答えたくない。
「亮ちゃんはいつもあたしに構ってばっかで、自分のことなんて後回し」
「でも、わからなくもない」
「え?」
「あたしだって……亮ちゃんに会うまでは自分のことが好きになれなかったから……」
「この火傷があるからって何かと理由を付けて、いじめられて、馬鹿にされて、何度もひどいことを言われた。せっかく仲良くなった人にも出会えてこの火傷のことを知られるとみんな距離を置いてくる」
俯いて座る俺に被さる様に抱きしめて、懇願するようにか細い声で、禊は囁いた。
「亮ちゃんだけだったんだよ。変わらなかったのは……亮ちゃんだけがあたしの味方だったから……だから亮ちゃんにだけ、亮ちゃんだけ居て欲しいから」
「だから教えて。もっとあたしを亮ちゃんだけに染めさせて」
その最後の一言だけは俺を真っ直ぐ見据えて真剣に言い放たれた。
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