アミエルの天使日記

富本アキユ(元Akiyu)

第1話 天使アミエル。地上へ

目を覚ますと、私は真っ白な空間にいた。


「ここは……?どこ?」


何も覚えていない。自分が誰で何をしていたのか。


「アミエル。アミエル」

「誰!?誰かいるの?」


気が付けばそこには、女の人がいた。


「アミエル。探しましたよ」

「アミエル?」

「あなた自分が誰か分からないの?」

「はい……」

「そう。ここがどこかも分からないの?」

「分かりません……」

「そう。あなたも天使病を患ってしまったのね」

「天使病?」

「天使が時々なってしまう病気よ。自分が誰で何をしようとしていたのか分からなくなってしまうの。簡単に言うと、天使の記憶喪失ね」

「記憶喪失……」

「あなたはアミエル。天使なのよ」

「私が……天使……?」

「天使は人間を幸せにする為に働いているの。あなたは人を幸せにする事が生き甲斐の素晴らしい天使だったわ」

「私が?」

「さあアミエル。また人間の元に行って。誰かを幸せにしてきなさい。そうすればあなたの記憶もきっと戻るわ」


その瞬間、真っ白な空間は消えた。

立っている地面が消え、私は空から地上に落ちていった。


地上に降りると、私は急にお腹が空いてきた。

ぐうううう……。ぎゅるるる……。

お腹の音が鳴る。


「お腹空いた……」


何か食べる物はないかとウロウロしていると商店街に来た。

肉屋さんの前でコロッケを買って、今にも食べようとしている女子中学生を食い入るように見つめていた。


じいぃーー。


「……視線が気になるんだけど。あ、あのっ……。何?」

「美味しそうだなって思って」

「食べる?」

「いいの!?」

「うん」


私はコロッケを貰い、食べた。


「んーっ!!美味しいー!!ありがとう」

「どういたしまして」

「よしっ、決めた!!」

「えっ……。な、何?」

「コロッケのお礼に、私があなたを幸せにしてあげる!!早く記憶を取り戻さなくちゃ!!」

「えっ?何?記憶?」

「実は私、天使なの」


私は事情を女子中学生に説明した。


「なるほどね。記憶喪失の天使アミエルね」

「そうなの。だから誰かを幸せにするのが私の使命!!……らしいの」

「そっか。私を幸せにしてくれるんだ」

「うん。コロッケのお礼」

「私は一条アリサ。14歳の中学生。よろしくね」

「うん、アリサ。よろしくねー」

「それでアミエル。これから行く当てはあるの?」

「んー」

「住む家とかご飯とか」

「ない!!記憶がないから!!」

「……と、とりあえずうち来る?私、両親は二人共、海外で仕事してるから家に一人だし」

「うん。行く」


私はアリサの家へと案内された。


「おおー、ここがアリサの家かー」

「はい、お茶」

「ありがとうー」

「ねえ。天使ってさ、どうやって人を幸せにしてくれるのかな?何か魔法を使えるの?」

「分かんない。どうやるのか」

「だよね。記憶がないんだもんね」

「アリサはさ、どうやったら幸せになれる?」

「そうだなぁ……。お父さんもお母さんとも時々ビデオ通話するくらいだから……。ちょっと寂しいかな。家族と一緒に生活できれば幸せになれるかも」

「じゃあ私がアリサの家族になるよ」

「えっ?」

「そうしたらアリサは幸せになれるんでしょ?」

「うん。まあそうだけど……。でもお父さんとお母さんに話してみないと……」


アリサはお父さんとお母さんに私と一緒に暮らしてもいいかを聞いた。


「いいんじゃないか。別に」


とお父さんが言った。


「そうね。アリサのお友達なら別にいいわよ」


とお母さんが言った。


「あっさりとオッケー貰っちゃった」

「やったあ。これで私達、家族だよ」


こうして天使アミエルと女子中学生、一条アリサの日常が始まった。

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