第9話
同じ校区内の中学に入学した娘の目には
何が写っていたのだろうか?
行きたかった?
それとも行きたくはなかった?
入学式の最中に倒れた娘は、
救急車に運ばれてしまった。
"貧血だろう"とか、"大げさな"という声も
チラホラ聞こえたが、娘の顔には
血の気はなく意識も失っていた。
呼吸もどこかおかしい。
救急車を呼ぶように、先生方に言ったが、
担架を持ってきた先生方は、とりあえず
保健室に運びますと言い、体育館で
執り行われてた入学式をあとにした。
"式の最中に倒れて迷惑なヤツ"
って言う感じの苛立ちがにじんた
教師たちに運ばれたのだった。
担架に乗せられそのまま、保健室の
かたいベッドに担架のまま乗せられた。
結節性硬化症
(けっせつせいこうかしょう)
指定難病158である結節性硬化症という
耳慣れない病の事を、保健師の先生や
担任だという男性の先生に説明した。
感情を抑えながら伝えるのは難しかったが
感情的になれば、救急車を呼ぶのが
遅れると思ったからだ。
今から思えば、職場で貸与されている
携帯電話で自分でかければよかったかもしれない。
この病は全身の疾患で、皮膚、神経系、
腎、肺、骨などいろいろなところに
"過誤腫"と呼ばれる良性の腫瘍や
過誤組織と呼ばれる"先天性"の病変が
できる病気だという事、小学生の頃から
顔の出来物などでイジメられていたことも
軽く伝えた。
意識がない娘を前に、怒りがふつふつと込み上げた。
入学するにあたって、大量の資料の中にも
健康に関する書類、生徒の調書などあり
事細かく書いたのに、伝わっていなかった。
救急車がやっと呼ばれ、受け入れてくれる
病院を救急隊員が探していた。
気を失ったままなのに、このままで
いいのか?と焦っていたから
時間がすごくかかっているかのような
錯覚をおこしていたかもしれない。
自分の仕事場の本体?かかりつけの病院を
伝えるとすんなり病院に搬送された。
難病指定からの難病だった。
リンパ脈管筋腫症
Lymphangioleiomyomatosis:LAM
平滑筋様細胞(LAM細胞)が肺、
体軸リンパ節(肺門・縦隔、後腹膜腔、
骨盤腔など)で増殖して病変を形成し、
病変内にリンパ管新生を伴う疾患。
労作時息切れ、気胸、血痰などが
きっかけで診断されたりするそうだ。
入院手続きをとりしばらくの間
中学校を休む事になった。
***
1週間後、個室から6人部屋に移った。
そこには、さまざまな病気を抱えた
小学生高学年から高校生がいた。
娘のような難病の子や、小児ガンの子もいた。
6人部屋で、4人目のこころは
他の子から小学生だと思われたようで
見た目、元気そうな同室の女の子たちと
楽しそうにすごし、テレビやゲーム、
最近のアイドルの話などしていた。
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○月○日
日記なのかポエムかよくわからないけど
ヒマだからかいてみた。
からだが、しんどい。
こころの心がしんどい?
オヤジギャグのようで、
なんだか変。
なにかから逃げたいって思うけど
しょうがないし、そんな事出来ない。
逃げたぶんだけ、時間やきょり
あとになればなるほど
悪くなり、ダメになる。
逃げずに、立ちむかえるだけの
勇気と元気がほしい。
とりあえず、明日も笑おう。
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