第8話


毎年一月になると会社の新年会があった。

ホテルでのバイキング的なディナー。

総勢300人位の人数、家族参加型。

職員と職員家族である中学生までのお子様の

参加型の新年会パーティーだった。

代表取締役やら役職の挨拶、勤続年数5年ごとの

発表と金一封、プチ有名人を招いての

新年会は、豪華な商品があたる抽選会になった。

特賞は旅行券10万円、電動自転車、

最新式の家電などであった。

大人向けにはコーヒーや紅茶、

そしてちょっとした高級な

クッキーがお土産だった。

その当時の我が子は、まだ小学生だった。


お子様には、スナック菓子の詰め合わせだった。

初めて参加した娘は大喜びで

小学校に上がった娘と先輩のお子様

2歳年上のちかちゃんとも仲良くなった。

普段買わないちょっとリッチなお菓子は

もちろん、フォークとナイフを使う

高級な料理に喜んでいた。

豪華な衣装、ドレスや着物を着ている人もいて

どこの世界に迷い込んだのか?という

一大イベントの新年会。

先輩も新しいドレスに美容院でセットした

可愛い髪型、ちかちゃんも可愛い髪型、

我が子は、ちかちゃんのお下がりだけど

可愛いドレスを着て喜んでいた。


身体の発疹も消えないまま、肌を

あまり見せない様な作りの、

プリンセス型?長袖のドレス、

レンタル商品の型落ちだと言っていたが

新年会で使う以外に子どものドレス

使い道ない気がすると思っていた。

新年会とハロウィンパーティー?

先輩の子どもも寒いからと言ってくれて

子どもなりに気にしてくれているのか

ちかちゃんとこころは長袖の

ドレスでの参加した。

勤続年数10年目の先輩は

表彰台に上がり、社長たちの前で

ガッツポーズをしていた。

抱負を聞かれた先輩は、

「楽しく仕事、楽しく子育て、たまに旦那を

かまいます。」という抱負?を言い

会場に笑いをもたらせていた。

来ていた芸人さんにも、「俺らより

上手いやん!」と言われていた。


抽選会、番号札8番と24番。

娘のこころ8歳、私24歳、勤続年数7年目。

今年は何が当たるかな?

昨年は入浴セット、その前はお菓子詰め合わせ

お弁当箱?ピクニックセットなど

当たらなくても、外れた番号札と交換に

帰りにお菓子の詰め合わせセットや

ラップ、アルミホイル、洗剤、だしの素

などと交換できる。実質ハズレなし。

「…番号札…20番台です。」

ドキドキ。この芸人さんたち、早く

まいてほしい。タメすぎだよ。

「……番号札、な、な、なんと……。」

うわぁ、しつこい。

中盤になり、景品も高額になり

最新式の家電や電気ポットが当たる様になった。

髪の毛が寂しくなった男性職員に

ヘアアイロンが当たったのは笑ってしまった。

「将来の奥さんにあげます。」と

言っていた。独身だったのか…ガンバ?

と自分も独身なのに何故か、なぞの

応援してしまった。

「番号札24番。」

「………。」

「この中に番号札24番さん、いませんか。

いたら6969秒以内に手を挙げて下さい。」

「6969秒長いやろ~!」

「それじゃあ~「69秒、早いやんけー!」

被せるようにセリフを言う

芸人さんたちは会場をわかせていた。

「先にオレのセリフ言うなや!!」

「あっ、は、はい、ハイハイはい!!」

「ハイは、69回!」

「えっ?」

ここは、ハイやろ~、お姉さん。と

お笑い芸人さんに突っ込まれたが

番号69じゃなくて、えーと24番を持って

商品が何かわからないまま、壇上に

娘と行った。

ボケたつもりはなく、商品は何ですか?

と聞いたらすごく笑われた。

「お嬢ちゃん、おもろいお母さんやな?

それとも姉妹かな?」

「天然ボケの母です。」と娘が

嬉しそうに答えていた。

ほとんどテレビを見ない私には

わからなかったけど、わりと有名な

お笑い芸人さんで、娘はちゃっかり

サイン色紙をもらい喜んでいた。

景品にサイン書こうか?という流れも

あったらしいが、娘は断ったらしい。

「しっかりしてるは~親の顔が見たいわぁ。」

と芸人さんは私の顔をしきりにみていたが

残念ながら芸人さんの"ボケ"が

よくわからないまま、私は豪華な商品、

最新式の電動自転車をもらった。

抱負を聞かれたが、頭が真っ白になり

「電動自転車嬉しいです。頑張って

一生懸命に自転車こぎします。」

芸人さんにとってまたもや、突っ込みにくい

"ボケ"だったようで、電動だから

軽いでしょう?とよくわからない

ツッコミをされながら私と娘は、自宅の

アパートに電動自転車の配達手続きをした。

番号札8番は、帰りにお菓子セットと

交換しほくほくしながら帰ったのだった。

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