第2話 ドM、迎え入れる

 一人孤独に座るソウマが授業を受けていた。ソウマは外見は完全にヤクザなのだが普段の態度で教師たちの信頼を勝ち取っている。しかし、今のソウマは吹っ切れて完全に態度からヤクザのそれになっている。


「おい宮本!ちゃんと授業聞いてんのか?」

「あ゛?」

「っ………!」


 人を怖がらせるのが楽しいと感じてしまっているソウマはもう止めることは出来ない。


 そのままソウマは先生の2時間分の授業を聞き流し一日を終える。ホームルームを終え学校が終わったと同時にヒナがソウマに駆け寄ってきた。


「ねぇ、一緒に帰ろ」

「いや、一人で帰る」

「…ねぇ、なんで?もしかして他の女と帰るの?」

「お前に関係ねぇだろ」

「関係あるし!!だってソウマの彼女だし!」

「は?…俺たちもう別れただろ」


 わざとみんなに聞こえるように声が大きくして言う。そしたらクラスのみんなが「え?マジ!」とか言いながらヒナに寄ってくる。


「ちょっとどいて!」

「ねぇねぇ別れたってホント?」

「どいてって!」

「教えてよー」


(こんな時に民衆クラスメートは役に立つんだな)


 そんなことを思いながらソウマは教室を出る。そして階段を下りて、校舎の門を通りかかったときにソウマは不意に視線を感じた。


(ん?…視線を感じるな。誰だ?勘違いか?)


 容姿のせいでヤクザとか不良とかに絡まれることが多かったのと、みんなから恐怖の視線から視線に敏感になっている。もともと格闘技の才能があったのか暴力でソウマが負けることなどほとんどない。


 前まではドSが覚醒してなかったので中身と外見は違ったが今はあながち間違っていない。


 そのまま気に留めずに岐路に付くソウマであった。


 数分間歩き続き家に付き、家に入るとすぐにインターフォンが鳴った。


(……誰だ?早すぎね?まぁいいか?)


 ソウマがドアを開けるとそこには後輩の矢野アオイが茶髪の髪が肩ぐらいまで伸ばし、立っていた。


「…何の用だ?」


 実に興味がなさそうにソウマが口を開く。


「あ、あのっ!…そのっ!」

「用があるなら早くしろ。俺は暇じゃないんだ」


 嘘である。この男暇で暇で仕方がなく、娯楽に飢えてる。最近見つけたのがアニメという娯楽だ。スポーツと違ってただ座ってるだけでいいという完ぺきな娯楽。


 だがアニメをほとんど見終わってしまったので正確に言えばアニメに飢えている。


「…あ、の…私の、私の…あのご、ごしゅ、ご主人様になってくれますか!?」



「………………………は?」



「だ、だから…その」

「いや、大丈夫だ。2度言わなくていい。…一つ聞いていいか」

「な、なんなりと!」

「なんで?」

「それは、じ、実は私はド、ドMなんです。せ、先輩はドSっぽかったので」

「…そうか。あながち間違いじゃないぞ」


 ソウマがニヤリと笑いアオイを一瞥する、するとアオイがブルリと震わせる。


(こいつよく見ると細身でいい感じの体してるじゃねぇか)


「そうか、ははは…そうか、そうか。別にいいぞ。はははは」


 ソウマは今感動している。誰かを支配するのは犯罪になってしまうので、さすがにい犯罪を犯すつもりはなので「合法的に誰かを支配できる!?」とすごい興奮状態にある。


「ほ、本当ですか?……じゃあおねがいします」


 そんなことを言いながらソウマの家にアオイが入ってきた。


「おいおい、何やってるんだよ!」

「え?あの、今日からソウマ様の家で…」


 現在のソウマは一人暮らしである。中学3年生の時に両親が仕事の都合で海外に転勤、2人とも同じ会社に勤めていてそれほど年収が高くなく転勤した方が年収が増えるので1か月に一度お金がソウマに送られてくる。


 ちなみにソウマは1人っこである。


 ちゃっかりソウマ様になっている。


「だめ、ですか?」

「…いや別にいいぞ」


(別に誰もいないしもうどこぞのドS彼女はいないからな)


「じゃ、残ってる家事をやれ」

「はい!」


 とりあえず何か命令してみたソウマであった。


(え?なに?どんな命令でもいいのか?…どうすればいいんだ?)


「ふぅ…」


 とりあえずソウマはソファーに座り携帯を取り出しなろうとカクヨムを読み始めた。ほとんど気になる小説は全部読んでいるのでただ更新されているかチェックしそれを読む。


 数分立った後アオイがソウマの前にやってきて今できる家事はすべて終わったと伝える。


「はやっ。お前、本当にやったんだろうな」

「はい、家事は得意なので」

「…そうか」


 素直に驚くソウマさんとそれでも異常なアオイさんだった。

 

「あ、そういえばお前、ベッドとかいらないよな」


 犯罪者面でアオイに話かける。ビクンと体を震わせ答える。


「っ………!い、いらないです…」

「そうだよな」


 にやっと笑いながら当たり前のように返事をするソウマであった。


 

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