第49話 五人との別れです。
アレクセイが【臣下リスト】でポーラのステータスを確認すると――。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
【名前】:ポーラ
【年齢】:7
【性別】:女
【種族】:普人種
【ジョブ】:ーー
【ギフト】:軍師
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
スキルに関しては――。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
【知謀】:思考・情報処理能力に補正。
【万魔の才】:全魔法に補正。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
まだ七歳なのでジョブは授かっていないが、それでもちゃんとギフトが付与されている。
他の十歳未満の子どもたちにはギフトが付与できなかった。
ポーラが特別なんだろう。
「へえ、【軍師】か。これは凄いね。ポーラにピッタリだ」
ポーラの並外れた賢さを反映したギフトだ。
【知謀】と【万魔の才】、どちらも優秀なスキルだ。
とくに【万魔の才】はスタンピード対応に役立つ。
「よろしく頼むよ。スタンピードまで一週間。万全の用意で迎え撃とう」
「全力を尽くします」
「ああ、ポーラには期待しているよ」
予想外の戦力を得て、アレクセイはポーラを作戦に組み込むことにした。
「さあ、みんなのところに戻ろう」
「はい」
アレクセイが手を伸ばすと、ポーラはおずおずとその手を掴む。
小さな手からは確かな信頼が伝わってきた。
二人が村外れの墓地に向かうと、村人が勢ぞろいしていた。
すでにアントンから話は伝わっているようで、沈痛な空気が漂っていた。
「待たせたね。さあ、アントン、始めてくれ」
村には村の弔い方がある。
アレクセイはアントンに任せる。
墓地とは言っても質素なものだ。
盛られた土に、大きめの石が乗っているだけ。
それがいくつも並んでいる。
新しく盛られた土に、新しい石。
木の棒で組まれた墓標には、アミュレットがかけてある。
骨のひとつも残らず、遺品は役目を終えたアミュレットのみ。
――これが村を守った五人の墓だ。
その周りに村人たちが輪を作る。
中心はアントンで、アレクセイはスージーとともに輪の外に並ぶ。
手はポーラと繋いだままだ。
「今日、我らの家族が五人帰ってきた。我らが領主アレクセイ様が、彼らを連れてきて下さった」
アントンの言葉で葬儀が始まった。
「悲しい再会ではあるが、それでも我らはまた会うことができた」
「アレキシ、ヴィニー、マトス、ニール、トレヴァー。五人は村のために戦い、命を落とした。だが、彼らの魂は我らに受け継がれる。我らの中で永遠に生き続ける」
「感謝と敬意、そして、愛情とともに、彼らを送り出そう」
アントンはキリエに目で合図する。
一歩前に出たキリエは墓の前に膝を付き、祈りの聖句を唱える。
「天にまします主上の神よ――」
厳かな祈りが紡がれていく。
「――彼らの御霊を受け入れ給え」
皆の祈りが届いたのか、雲の切れ間から一筋の光明が差す。
もともと、彼らの生存は期待されていなかった。
静かに涙を流し、肩を寄せ合う程度で、式はひっそりと行われた。
皆、悲しみよりも、ひと区切り付いたという思いが強いのだろう。
葬儀の締めくくりにアレクセイが述べる。
「彼らの思いに報いるためにも、僕たちは生き伸びなければならない。スタンピードは目の前に迫っている。総力で立ち向かおう」
村人たちの目に怯えはない。
「大丈夫、僕たちは勝つ――」
それからの一週間。村人総動員でスタンピード対策が行われた。
◇◆◇◆◇◆◇
【後書き】
Alexi Laiho (8 April 1979 – 29 December 2020)
Vinnie Paul (March 11, 1964 – June 22, 2018)
Andre Matos (14 September 1971 – 8 June 2019)
Neil Peart ( September 12, 1952 – January 7, 2020)
Trevor Strnad ( - May 11, 2022)
偉大なアーティストでした。
R.I.P.
次回――『決戦開始です。』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます