優等生ちゃんと不良ちゃん

哘 未依/夜桜 和奏

不良ちゃんの門出

「暖かな……花と共に、私たちは中学生に……」


 


 微かに聞こえる声。日が当たらないこの場所。


「素敵じゃん。私、不良してるって気がする」


 ひとりでに呟く。この場所には誰もいない、私は自由だ……と、数分前までは思っていました。


 え、怖い、普通に怖い。今までの習性か、本能が叫んでる。こんなところにいてはいけないよ、さぼってないで早く体育館に入りなさいと。


 私の天使ちゃん、今回ばかりは言うこと聞かないもん。今は悪魔ちゃんの声にしか反応しないからね、うん、ほんとだよ?決して怖くなんかない……もんね。


 私は息を整えた。こんな中途半端では終われない。だからもう少し、一人でいる……つもりだった。


 そんな私の前に、一人の少女が躍り出てきた。これ、ゲームとかだとぴこぴこという電子音とともに倒す、逃げるとか選択肢が出てくるやつよね。普通に逃げる一択な気がする、けど不良の私としては逃げるわけにはいかない。

 意を決して、目の前の美少女に話しかける。


「なんか用?」


 出来るだけ声を低くし、制服の上から羽織ったパーカーのポッケの中に手を突っ込んで睨んだ。

 うん、これで完全に不良だ。


「あなた、クラスからはぐれちゃったのかしら?」


 は?ぇ?おかしい、絶対おかしい。なんでそうなる。優等生ちゃんだったころの私でも、クラスに行くように促すぐらいで放っておく。


「あんた、何言ってるんだよ。私は私の意志でここにいるの!」


 口調では強気に言ってるつもりだけど、内心はひやひや。汗がぴちょんぴちょんとたれていく。この状態が続くと水たまりでもできてしまいそうな気がする。


「う~ん。じゃぁクラスに行こっか」


 美少女は話が通じない系の子なのか!?

 先ほどの汗で少し湿った腕を、ためらいもなくつかんでくる。え、ちょっと待って。力が強すぎる。


 そして私は何も反抗できずに教室まで連行された。


 こうして私の波乱万丈な中学生活が幕を開けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

優等生ちゃんと不良ちゃん 哘 未依/夜桜 和奏 @Miiiii_kana

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ