おもしろい人

久石あまね

散歩

 いつもは8時頃起きるが、この日は朝6時半に目が覚めた。

 春の肌寒い朝、僕は毎日の日課である散歩に出かけた。半そで半ズボンなので、かなり寒かった。

 音楽を聴きながら、しばらく国道沿いを歩いていると、前からひとりの男性が歩いてきた。65歳ぐらいに見えた。サラリーマンには見えない。カーキ色の長ズボンに白いワイシャツを着ていた。背中が少し曲がっている、165センチぐらいの色の白い男性だった。

 距離が縮まりすれ違うと、目があった。挨拶されたような気がしたが、マスクと音楽のせいでわからなかった。その時なぜかわからないが、面白そうな人だなと思った。なぜかそういう雰囲気を感じた。そして10メートル程歩いてから、さっきの男性が気になったので、足を止めて後ろを振り向いてみたら、その男性も足を止めてこちらを振り向いていた。不思議そうな表情でこちらを見ていた。僕はそれを見て、片手をあげて、軽く会釈した。その男性と会釈した。目は笑っていた。そして何事もなかったかのように、また颯爽と歩いていった。僕もまた何事もなかったかのように散歩を再開した。なんともなしに歩いていると、ジワジワとさっきの男性のことを考えていた。下の名前は何というのだろうか?仕事はしているのか、していないのか。どんな性格をしているのか?でも僕はひとつ確信していることがあった。あの男性は絶対にユニークな人だと思った。なんとなくそういう気がした。そんなことを考えながら、僕はいい気分になっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おもしろい人 久石あまね @amane11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る