首なし騎士と骸骨魔術師
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──首なし騎士と骸骨魔術師
『目標、ブラック・デルタ。マーク』
『目標、バイオレット・リマ。マーク』
戦術脳神経ネットワークでそれぞれの目標情報を共有する。
『アルファ・ファイブ。神は信じてるか?』
『あまり』
『なら、今からクソみたいに信じろ。連中を殺すにはそれが必要だ』
お神酒を滴らせた銃弾を装填し、的矢たちがデュラハンを狙う。
『射撃開始』
『射撃開始』
そして、デュラハンへの攻撃が始まる。
デュラハンは第303特殊環境作戦群の時と違い、撃たれると反応を見せた。明らかに苦痛を感じている。化け物が苦痛を感じている様は愉快だ。化け物どもにたっぷりと祝福をくれてやるとしよう。
撃って、撃って、撃って、撃ちまくる。
デュラハンは駆けまわるが、的矢たちの射撃は命中する。
デュラハンは報復だとばかりに槍で突撃しようとするが、銃弾の嵐を前にしてはまっすぐ進むことすらできず、狙いが剃れる。
的矢たちはデュラハンを相手にしている間、陸奥とシャーリーはグレーターリッチーを相手にしていた。グレーターリッチーはデュラハンを援護しようと魔術を放とうとするが、それを陸奥たちが射撃で阻止する、陸奥はM906重機関銃から銃弾を浴びせかけ、シャーリーは適切にグレーターリッチーの頭や杖を狙撃する。
ふたりがグレーターリッチーを押さえている間に的矢たちはデュラハンの撃破を試みる。デュラハンに向けて銃弾を雨あられと浴びせかけ、確実に体力を削っていき、機動力を低下させていく。
そして、椎葉がトドメを刺そうとする。
「祓え給い、清め給え」
椎葉が唱える祝詞を前に、デュラハンが明らかに動揺する。
祈りの危険を察したのか、デュラハンは高速で逃げ始め、椎葉から距離を取ろうとする。だが、椎葉にはその動きは簡単に把握できていた。この状態の椎葉はかなりの精神力と戦闘力があるのだ。
「神ながら守り給い」
デュラハンが逃げることはできないと察して、椎葉への突撃を開始する。
デュラハンの槍が椎葉に向けられてデュラハンが真っすぐ突撃していく。
「幸え給え」
そして、銃弾が放たれた。
銃弾はデュラハンの心臓を貫き、そして即死させた。
馬ごとデュラハンが倒れ、デュラハンはそのまま灰になっていく。
『ふい。まず、1体撃破です』
『よくやった、椎葉。その調子だ。行くぞ』
続いて、的矢たちはグレーターリッチーとの戦闘に突入する。
『魔術攻撃が来ます!』
『全員散開!』
全員が散開する。陸奥も重機関銃を抱えて移動した。
そして空間が爆ぜる。
それから即座に的矢たちの反撃が始まる。
『銃弾を浴びせろ。化け物に鉛玉をたっぷり食わせてやれ。お神酒付きの鉛玉だ。化け物にはもったいないぐらいじゃないか、ええ?』
的矢がグレーターリッチーに向けて銃弾の嵐を浴びせる。
グレーターリッチーは怯むも、まだ倒れるまでとはいかない。
『アルファ・フォー。行けるか?』
『援護があれば行けます』
『よし。聞いたな。全部隊、アルファ・フォーを援護。グレーターリッチーにトドメを刺す。あのクソッタレな骸骨魔術師に灰になってもらうぞ』
そう言って的矢たちが銃弾をグレーターリッチーに浴びせかけて魔術攻撃を誘導し、その隙に椎葉が銃口を真っすぐグレーターリッチーに向ける。
「掛けまくも畏き、伊邪那岐大神」
椎葉が祝詞を唱え始める。
すぐさまグレーターリッチーが反応した。
怯えた様子を見せたグレーターリッチーに的矢たちが銃弾を叩き込み続ける。
「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に」
グレーターリッチーの攻撃の矛先が椎葉に向かおうとするのを的矢たちが全力で阻止する。今の椎葉は無防備だ。今攻撃されては敵わない。
50口径と7.62ミリの銃弾が吹き荒れ、グレーターリッチーが揺らぐ。だが、杖はしっかりと椎葉に向けられていた。
「禊ぎ祓へ給ひし時に」
グレーターリッチーの攻撃が炸裂する。だが、それは不思議と椎葉に達さず、椎葉を逸れて、明後日の方向で炸裂した。そして椎葉は全く動揺していない。普段の彼女が嘘のように冷静に祝詞を唱え続けている。
「生り坐せる祓戸の大神等」
グレーターリッチーが狼狽えているのがうかがえた。何故自分の攻撃が当たらなかったのかとでも考えているかのような状況だ。そこに的矢たちが銃弾を浴びせ続け、第二撃を阻止しようとする。
「諸々の禍事、罪、穢、有らむをば」
グレーターリッチーは再び椎葉に杖を向けようとして銃弾の雨を浴びる。それでもグレーターリッチーは必死に杖を椎葉へと向ける。
「祓へ給ひ清め給へと」
グレーターリッチーの攻撃が再度実行された。
グレーターリッチーの攻撃はまたしても明後日の方向で炸裂し、椎葉にはダメージを与えられないでいる。グレーターリッチーはもう一度攻撃しようとするが、的矢たちから銃弾の嵐を浴び、怯む。
「白すことを聞こし召せと」
グレーターリッチーはついに逃亡を試みた。
その場から逃げようとして足を引きずり、そして銃弾の雨を浴びる。銃弾という物理攻撃にお神酒という宗教要素が加わっただけで、銃弾によるグレーターリッチーの足止めが行えていた。
「恐み恐みも白す」
そして、銃弾が放たれる。
銃弾がグレーターリッチーの心臓を貫き、グレーターリッチーにトドメを刺した。
グレーターリッチーは地面に崩れ落ち、灰へと変わっていく。
『クリア』
『クリア』
信濃と椎葉がそれぞれ宣言する。
『やりましたー!』
『よくやった、椎葉。お前がMVPだ』
椎葉が歓声を上げるのに、的矢がそう言う。
『アンデッドには強いな、椎葉ちゃん。あれだけ攻撃が飛び交っていたのに』
『なんでしょうねー? 何か冷静になっちゃうんですよね。攻撃が来ても私には絶対に当たらないっていう確信があるみたいな。もちろん、油断は禁物だって分かってますよ。でも、どうなんでしょうね?』
信濃が言うのに、椎葉は首をひねった。
『何はともあれ、90階層は制圧だ。ブラボー・セルを呼ぼう。そして、ハルバードにも連絡を。90階層攻略完了と第303特殊環境作戦群の壊滅を知らせろ』
『了解』
それからブラボー・セルが降りて来て第303特殊環境作戦群の死体を日本陸軍の工兵とともに回収し、的矢たちは羽地大佐にことのいきさつを話した。
「ご苦労だった、的矢大尉。彼らの犠牲は痛ましいことだが、これを強行した人間にはしかるべき責任が追及されるだろう。責任は向こうにある。作戦を強行したのは陸軍だ。そして、一部の政治家と官僚たちだ」
羽地大佐の言葉からして、もう首謀者は特定されてるようである。
「しかし、いよいよ90階層だ。100階層までは残り僅か。油断せずに攻略していってくれ、大尉。いよいよ“グリムリーパー作戦”も大詰めだ」
「はい、大佐」
だが、的矢はこの場に来て“グリムリーパー作戦”への意欲を失っていた。
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