第21話 いざ魔境へ

 ここまでお読みいただきありがとうございます。

 久々に投稿しようとカクヨムを確認したら総合が週間41位になっていて驚きました。

 前見た時は1500位くらいだったので、何があったのかと思って調べてみると《カクヨム運営公式》でレビューを書いていただけたのが理由みたいでした。

 本当にありがたいことなので、できるだけ頑張って投稿を続けていきたいと思いますので応援よろしくお願いします。 

 投稿は毎週月曜午後6時にしていきたいと思います。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


冒険者ギルドで資料をある程度読んだ俺はとりあえず魔境へ行くことを決めた。


 行くことを決めた理由は単純に魔境がどういった場所なのか気になったのと色々な魔物を見てみたいと思ったからだ。

 

 当然、魔物が危険なことは分かっているが、空想上でしか存在しなかったドラゴンやグリフォンなんかの魔物が実在していると知ってしまったからにはこの目で一目見てみたいと思ってしまうのはしょうがないと思う。

 

 あとは魔境から徒歩で30分もかからない距離にフレスタという町があるらしく、その町の宿の中なんかで【冒険】を始めれば、移動に30分は取られてしまうが、魔境の探索を30分は危険を冒すことなく行えることが判明したのも行くことを決めた理由のひとつである。


 3Dモデルであればやられても問題ないので、まずは脅威度が高い魔物と戦闘してみてどの位の強さなのかを確認し、もし自分でも倒せそうであれば、生身でも魔境を探索してみるつもりだ。


 魔境の奥に行けば行くほど脅威度が高い魔物が出るそうであるが、その分貴重な素材なんかも多く採取できるらしいので、どうにか魔境内に拠点を構え、【冒険】による探索時間を延ばせるようにしたいとも考えている。

 

 資料によると魔境は大樹海となっており、地面の下は大樹の根が張り巡らされているらしい。

 そのためかモグラやミミズのような地面を掘り進んでくるような魔物は今のところ確認されていないみたいなので、異世界初日のように土魔法で地下室を作れば拠点を作れるのではないかと思っている。

 ジャイアントラビットみたいにちょっとした穴を掘る魔物はいるかもしれないが、その辺は壁や天井を何かしらで補強すれば大丈夫だと思いたい。


「アタルは魔境へ行くの?」


 俺がそんなことを考えていると、いつのまにか資料を読み終えたのか、エミリーに話しかけられた。


「うん、とりあえず行ってみようとは思っているけど、最初は魔境の外周部の探索だけかな。魔境の中に進むとしたら脅威度3の魔物とも余裕を持って戦える実力がついてからかな」


「そうなんだ。私はお兄ちゃんと相談してみるつもり。本当は魔境で採れるサフロスっていう花を自分達で採取しに行きたかったんだけど、資料を見たら結構魔境の奥に行かないと採取できないみたいなんだよね。単純に見つけづらいだけなら自分達で採取しに行こうと思っていたんだけど考えが甘かったよ……」


「そっか、ちなみにその花が欲しい理由って何かあるの?」


「うん、お母さんが魔力欠乏症っていう体内の魔力が徐々に減少してしまう病気に罹ってしまったんだけど、それに効く薬の材料になるみたいなの。最初のうちは体が少し怠く感じる程度みたいなんだけど、2、3年も放っておくと衰弱して死んじゃうらしいんだよね……でも不治の病って訳でもないし、最近罹ったばかりで時間もまだあるからコツコツお金を稼いでそのうち冒険者ギルドに採取依頼を出そうと思うよ」


 母親のことが心配だろうに無理に明るく振る舞うエミリーに何て声をかけるべきかと迷っていると、話はおしまいとばかりに「そういえば、まだ宿決まってないよね。おすすめの宿に案内してあげる」とエミリーに手を引かれて資料室から連れ出されてしまった。


 10連召喚で以前手に入れた《霊薬エリクシル》であればその病気も治るのであろうが、俺にとっても貴重なアイテムだし、何の対価もなくあげる訳にはいかない。

 まだ時間に余裕があるとのことだからエミリー達のお母さんには悪いけど暫く我慢してもらうとして、俺にできるのはサフロスの花を探してあげるくらいかな。

 当然、生身じゃなくて3Dモデルで探索するつもりだけど。


 ……


 資料室を出て、冒険者ギルドの1階に戻ると、トムの姿が見当たらなかった。


「アタルにおすすめする宿は私たちがいつも泊まっているところだから、お兄ちゃんは放っておいて大丈夫だよ」


 俺がトムを探しているのに気づいたのか、エミリーがそんなことを口にしたので、俺はトムを探すのをやめた。


 エミリーの案内に従って道を進むこと数分、大通りから少し外れた場所にある一軒の宿に到着した。


『溶けるスライム亭】

 木造3階建てのわりと大きめの宿。

 店主が子どもに倒されてドロドロになったスライムを見て、誰もが気軽に倒せるスライムのように誰もが気軽に利用できる宿にしようと思い立ってこんな宿名にしたということ。

 

 そんな変な宿名であるが、素泊まりプランや連泊割引、カプセルホテルのような横になれるだけのスペースしかないような激安部屋等、誰もが気軽に利用できるように多岐に渡るプランや部屋が用意されており、お値段もリーズナブルな値段設定がなされていた。


 エミリー達はいつも二人部屋を素泊まりで利用しているらしく、今回も二人部屋を確保していた。

 俺はとりあえず一人部屋を素泊まりで宿泊することにした。

 

 案内された部屋自体はベッドとちょっとした荷物がおけるスペースしかなかったが、部屋はわりかし綺麗であった。

 トイレは共用があるのみで風呂も当然なく、体を拭くためのタオルと桶一杯の水が別料金で利用できる仕組みであった。

 それでお値段は3000K。

 シリル村での宿が夕食、朝食付きで同じ値段であったが、都会と田舎で物価が違うことを考えると妥当な値段な気がする。


 エミリーとは一度別れ、トムが宿に来たら一緒に近くの食事処に行く約束をしたので、それまでは部屋でスマホをいじりながらゆっくりすることにした。


 一時間後、トムが宿に到着したのでエミリー達と食事に行き、食事を取りながらお互いの今後の予定なんかを話した。

 俺は金銭面にそこまで余裕がないことから、明後日には魔境へ向かうことを伝えると、トムが「じゃあ俺たちもそうするか」と軽いノリで魔境行きを決め、魔境の直近にあるフレスタの町まで一緒に乗合馬車で向かうことになった。

 

 フレスタまでは馬車で5日程かかるみたいなので明日はモーケルさんのお店に行き、色々と旅に必要そうなものを購入するつもりである。


 そして食事を終えて宿に戻ると、日課のデイリーミッションをこなしたり、2Dモードで【冒険】をするなどしてから就寝した。


 ……翌々日。


 昨日はモーケルさんのお店に行き、買い物ついでに魔境へ行くことを伝えた。

 すると魔境で必要になりそうな物や便利グッズを色々と教えてもらったり、値引きしてもらえたので色々と購入してしまった。


 その後は町中をぶらついて食べ歩きをしたり、武器や防具、魔導具のお店なんかを見に行ったりして過ごした。


 武器なんかはゲームでもあるような片手剣や大剣、槍、斧等、色々な武器が販売されていたが、大剣を振れたらかっこいいと思い、店の人にお願いして試しに自分の身長程もある大剣に触れさせてもらったところ重すぎて持つことすら出来なかったのは切なかった。


 また、魔導具に関しては地球にある電化製品のようなものが多く見られた。

 ガスコンロや冷蔵庫、照明器具等、魔石を電池代わりに魔法陣という電子回路を通じて火や氷、光等様々な魔法を発動させているらしい。

 その分、お値段はそれなりにお高くなっており、当然今の俺の所持金では何も購入することができなかった。


 昨日はそんな1日を過ごし、今日はいよいよ魔境へ向けて出発である。


 トム達と一緒に馬車乗り場に向かい、フレスタ行きの馬車に乗車。

 乗合馬車に乗るのは初めてだが、馬車は屋根はあるが壁はないバスのような構造をしており、2人掛けの座席が中央の通路を挟んで左右に置かれており、それが5列、合計20名が乗れるようになっていた。


 俺たちが乗車したのは出発30分前であったが、既に冒険者らしき女性だけの4人パーティーとソロの男性、男女の二人組の7人が乗っていた。

 

 トムは相変わらずのマイペースぶりで一人でゆったり座りたいからと隣に座ろうとしたエミリーを俺と一緒に座らせたので、エミリーはトムに怒りつつ、俺に申し訳なさそうに謝ってきたので俺は気にしないでいいと伝えた。


 その後はソロの女性の冒険者が一人乗車してきたのみで、遂に出発時間となった。


 馬車ガタゴトとゆっくりと動き出し、少しすると門を抜けて町の外に出た。


 後ろを振り返ると少しずつ遠ざかるグロシアの町。

 俺は前を向くとまだ見えぬ魔境へ期待を膨らませつつ、魔境までの道中を楽しむことにするのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 次回更新は8/22予定となります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る