第20話 冒険者ギルド
「アタル、あそこに見える盾と剣の装飾がある建物が冒険者ギルドだよ」
「おぉ、あれが冒険者ギルドか」
エミリーに案内された先には木造3階建ての大きな建物があった。
異世界ものだとギルド内に入った途端に絡まれるのが定番だけど、面倒だからできれば避けたい。
絡まれたらどうしようか等と内心ドキドキしつつギルド内に入ると、内観は役所の窓口といった雰囲気であり、ギルド員が受付をしているカウンターや依頼表らしき用紙が貼ってある掲示板、幾つかのテーブルや椅子なんかが設置されていた。
そして、そんなギルド内では冒険者らしき複数の男性や女性が受付に並んでいたり、掲示板の依頼を見ていたりする姿が見られた。
おぉー! まさに冒険者ギルドって感じだな!
俺はゲームで見た世界と同じような光景が実際に見られたことに感動していると、一人の男が俺の方に向かってくるのに気が付いた。
くそ、やっぱり絡まれるのか!
そんなことを思いながら、近づいてきた男をよく見てみると、エミリーの兄であるトムであることに気が付いた。
「なんだトムかよ。知らない男に絡まれるのかと思ってドキドキしたじゃないか」
「勝手に勘違いしたお前が悪い。それよりアタル達は何しにここに来たんだ?」
「アタルが冒険者ギルドに行ってみたいって言うから私が案内して来たの! 別にお兄ちゃんの後を追いかけて来たんじゃないんだから!」
「エミリーが言うとおり、冒険者ギルドを見て見たかったんで案内してもらったんだよ。まあ、目的は冒険者登録だけどな」
「なら、あそこの受付で登録できるぞ」
トムが首を向けた方を見ると、【新規登録】という受付窓口があったので、俺はさっそくその受付に行き冒険者登録をすることにした。
……
「本日は冒険者の新規登録でよろしいですか?」
受付ではアンナさんという年齢20歳くらい、セミロングの水色の髪が特徴的な綺麗目なお姉さんが丁寧に対応してくれた。
「はい、そうです。魔境に行く予定なので冒険者登録しておこうと思いまして」
「えっ、アタルも魔境へ行くの!?」
俺に付いて来ていたのか、後ろからエミリーの驚いた声が聞こえたので、肯定の意味を兼ねて頷いておいた。
「そうなんですね。新規登録者だからといって魔境に行くことをお止めはしませんが、魔境の奥には行かないようにしてください。奥に行けば行くほど強い魔物が出現する傾向がありますので」
そう言いつつ登録用紙を渡され、名前や年齢等の必須項目の他、得意武器や使えるスキル、魔法なんかについて記載するように言われた。
ちなみに得意武器やスキル、魔法なんかは記載しておくと記載しておくと冒険者ギルドが自分に合うパーティなんかを紹介してくれるらしい。
とりあえず俺は必須項目だけ記載すると、アンナさんからA4サイズの金属の板に手のひらをつけるように言われたので、説明されたとおりにすると金属の板が淡く光った。
「これで登録完了です。こちらがギルドカードになります。依頼の受付や報告に必要になりますし、身分証明書代わりにもなりますので紛失しないようにお願いします。初回発行時は無料になりますが、万が一紛失されると再発行に5000K掛かりますのでお気をつけ下さい」
そういって名刺サイズの金属の板を渡されたので見てみると、名前や登録番号らしき数字、G級冒険者を示す『G』という文字が彫られていた。
「教えてもらえればでいいんですけど、さっきの金属の板は何ですか?」
「あれはアタルさんの魔力や指紋を登録するためのものです。魔力や指紋は一人ひとり違うので偽造や悪用できないようにするための措置ですね」
異世界にも指紋の概念があるんだな。それが登録できるってこの世界だとすごい技術だと思うんだがどうなってるんだろう。
気になって聞いてみたところ、ロストテクノロジーの一つであり、製造方法は判明しているものの、詳しい仕組みについてはわからないらしい。
「そうなんですね。あと冒険者の等級や依頼などについてもお聞きしたいのですが大丈夫でしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ。それでは説明していきますね」
その後、アンナさんは親切に色々と説明してくれた。
何故かエミリーが俺と一緒になってアンナさんの説明を聞いていたが、真剣そうに聞いていたのでそっとしておくことに。
ちなみにトムは俺が登録をしに行く前から「依頼を見てくる」と言って、掲示板を見に行ってしまっている。
アンナさんの説明を受けてわかったのは、冒険者の等級は上から順にS、A、B、C、D、E、F、Gとなっており、等級によって受けられる依頼が決まっているとのことであった。
依頼を受けなくても等級が下がることはないそうなのでその辺は非常に助かる。
等級を上げるためには等級に応じた依頼を達成したり、昇級試験に合格する必要があるそうだ。
俺の場合、冒険者登録したのはゲーム等で冒険者に憧れていたのと、冒険者ギルドに魔物の素材等を売ったり、身分証明書の代わりにギルドカードが欲しかっただけなので昇級意欲は特にない。
会社なんかでも上の役職になっても給料は対して上がらないにも関わらず、責任だけが重くなり、部下がやらかすたびに評価が下がったりしていく様子を何度も見て来たので平社員がベストだと俺は勝手に感じている。(会社によりけりだから異論は認める)
実際にSランクやAランクなんかになると国や貴族達なんかから色々な指名依頼をされるそうだ。
俺はのんびりしたいので目立たずにそこそこの金額を稼げるようになれればいいと思っている。
アンナさんの説明を聞き終えた後、冒険者ギルドの2階で魔境で確認されている魔物、薬草や鉱石等の各種素材についてまとめられた資料なんかを見れる資料室があることを教えてもらったので、アンナさんにお礼を言いつつ、俺は資料室へと向かった。
当然のようにエミリーも付いてきたが、エミリー達も魔境に向かう予定の筈だから得られる知識は無駄にはならないだろう。
資料室へ行くと、いくつかの本棚が並んでおり、棚には『冒険者の心得』、『魔物解体新書』、『薬草図鑑』等といった本に混じって、数十枚の紙を綴った冊子がいくつか収納されていた。
試しに1冊の冊子をとると表紙に『魔境に生息する魔物について』と書かれていたので読んでみることに
冊子の中身を確認すると、ちゃんとした本というよりは、冒険者が実際に戦った際の魔物の特徴や攻撃方法、素材になった部位等が書かれていたが、ページ毎に字体が違ったので色々な冒険者のメモ書きを寄せ集めたものであろうと思えた。
読みづらいけど初見の魔物だと何するかわからないから、こういったメモ書きでも魔物の特徴や素材がわかると参考になるな。
冊子を見ていくと魔境に生息する魔物のほとんどが脅威度3以上の魔物だとわかった。
魔物の脅威度については、以前倒したジャイアントラビットが脅威度1であるが、只の一般人が倒すには厳しそうなレベル。
ジャイアントラビットにビビッといた俺からすると脅威度3の魔物はかなりやばそうな気がする。
ちなみに魔物に対する冒険者の推奨等級としては
脅威度1がG、F級 ジャイアントラビット等
脅威度2がE、D級 ゴブリン、コボルト等
脅威度3がD、C級 オーク、リザードマン等
脅威度4がC、B級 オーガ等
脅威度5がB、A級 グリフォン等
脅威度6がA、S級 ワイバーン等
脅威度7がS級 レッサードラゴン等
脅威度8がS級複数 各種ドラゴン等
となっており、ゲーム等でお馴染みのモンスターの名前がいくつも載っていて楽しみが増えた。
あくまでこれは推奨等級であるため、実際にはワンランク下の魔物を複数名で討伐するのが冒険者の基本とのこと。
魔境の魔物のほとんどが脅威度3以上ということであれば、少なくてもC級複数名での探索が理想だということだろう。
うーん……今の俺の実力だと魔境に行くのはやばそうだな。
しばらくは魔境に行かずにスキルのレベル上げをするか、それとも別の場所に行ってみるか。
「ねえ、アタル。私とお兄ちゃんじゃ、魔境で活動するのは厳しいかな?」
そんなことを考えていると、エミリーも同じことを考えていたのか俺に意見を聞いてきた。
「うーん、この町に来るまでに何度かエミリー達の戦闘も見たけど、脅威度2以上の魔物の強さを見たことがないから何ともいえないな」
「そっか、そうだよね……」
エミリーはそれだけ言うと、また真剣な様子で資料を読み始めたので、俺もエミリーを見習い、資料を読むことに集中するのであった。
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申し訳ありませんが、仕事多忙につき一旦投稿を中断します。再開時期は未定となります。
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