第4話《創生》

『誰でも使える創生スキル』か……


 スキルが当たった場合は本が出現するんだな。

 ということは、この本を読むと表紙に書かれている創生スキルとやらが使えるようになるのか?

 しかし、この本は結構な厚みがあるから読むのが大変そうだな。

 まあ、読むだけでスキルを習得できるのなら文句を言うのは贅沢というものか。


 俺はそんなことを思いながらも、本のレア度を確認しようとスマホの画面をみると、本のイラストが表示されており、その上に


 ☆7《創生》


と表示されていた。


「うぉーー!! ☆7キターー!!」


 俺はまさかの結果に思わず叫んでしまった。


 正直、☆7は確率が低いため、当たるわけがないと思っていたのですごく嬉しい。


 リセットしてやり直すことはできないので、口では「☆7来い」とか言ったが、正直使えるスキルなら☆5でもいいやと思っていた。


 まさに無欲の勝利だな。


 俺はにんまりとしながらも、創生スキルの説明文について確認しようと思い、イラストをタップすると『とある女神がこの世界を創り出すのに使用した力のひとつ。生命以外のあらゆるものを創りだすことができる。使用方法:創りたいものをイメージしながら「創生」と唱えることでイメージしたものを創り出せる。レア度、大きさ等に応じて魔力を消費』

 

 Lv.1 創生できるものはレア度☆1相当のものに限る。1日に1回のみ使用可能。

 Lv.2 ???

 ……

 ……

 Lv.10 ???


と表示された。


 おぉー、女神がこの世界を創るのに使用した力とかすごいな!

 生命以外ならあらゆるものを創りだせるとか完全にチートスキルだろ。

 レベル1では大したものは創れなそうだけど、レベル10になったら何でも創り出せそうだ。

 1日に1回しか使えないのは残念だけど、これだけのスキルだから制限があるのも当然だよな。

 レベル2以上はどんなことができるか表示されていないが、きっとレア度が高いものが創れるようになるのだろう。

 問題はどうすればスキルレベルが上がるのかだけど、同じスキルを合成しなきゃいけないとかだったら最悪だな。

 できれば、熟練度に応じてレベルが上がるシステムだといいんだけど……


 しかし、イメージしたものを創り出せるってことは、地球産の便利な品物の数々や食べ物も作れるってことだろうか。

 だとすると、異世界での生活も快適に送れそうだが、そういった物のレア度がどうなっているかが問題だよな。

 ☆1のレア度のアイテムはたしか泥水やカビたパンとかだったから、少なくてもスキルレベルが2にならなければ実用性は無さそうだ。

 それに俺に魔力があるかもわからないし、創生スキルを使うのにどのくらいの魔力を消費するのかもわからないから検証する必要があるな。


 俺は創生スキルの活用方法について検討しつつ、出現した本を手に取って開いてみるとダミーブックであり、表紙をめくった先のページの中央部分に【習得】と書かれたボタンが配置されているのみで他に何の記載もされていなかった。


 うわっ、ダミーブックかよ。

 分厚い本を読む必要がなくなったのは嬉しいんだけど期待を裏切られた感がすごいな。

 それに【習得】と書かれたボタンがあるだけだけど、もしかしてこのボタンを押すだけでスキルを習得できるのか?


 何とも簡易的な習得方法であるが、面倒がなくてありがたい。


 そんな簡単に覚えられるならと俺は早速【習得】ボタンを押してみた。


 すると本が野球ボール程の大きさの丸い光に変化したかと思うと、その光が俺の体の中に吸い込まれてしまった。


 これで《創生》を習得したのか?

 特に体に変化は感じないけど本当に使えるのか……


 まあ、実際に使えるかどうかは試してみればわかるだろうと思い、俺は試しにレア度☆1に表示されていたカビたパンをイメージしながら

「創生」と唱えてみた。


 すると体の中から何かが抜けていく感覚がしたかと思うと、目の前の地面にポンッという音を立てながら、俺がイメージしたとおりのカビたパンが出現した。


「おぉー! 本当に創れるとは……しかし、今後食べものを創るときはテーブルの上とかに創り出すか、包装されているイメージを付け足さないとだめだな」


 俺は地面の上に出現したことで、底の部分に土が付いてしまったカビたパンを見て今後は気をつけようと思った。


 俺はカビたパンが本物か確かめるために、手に取って触ったり、匂いを嗅いでみたりしたが、感触や匂いから本物であると感じられたが、さすがに試食する気にはならず、勿体無いが処分することにした。


 うーん、さっき体から何かが抜けていく感覚がしたが、あれが魔力かな。

 倦怠感がけっこう強いんだが、俺の魔力が少ないのか、創世で消費する魔力が大きいのかわからないが使い勝手はあまり良くなさそうだ。

 ステータス機能なんかがあれば、俺の魔力の総量や創生スキルを使ったことでどのくらいの魔力を消費したのかわかるんだろうけど、そんな親切な機能はないよな……


 試しに「ステータス」、「パラメータ」、「ウィンドウ」等とそれっぽい言葉を色々唱えてみるも、何も起こらなかったことから俺は諦めて草原に寝っ転がって休憩することにした。


 やっぱり駄目か……まあ、そんなに都合良くはいかないよな。

 それより、倦怠感が強いのは消費した魔力が大きいのが原因な気がするから、魔力を回復するか、増やす手段が欲しいな。

 

 魔力を回復する手段は、傷を治すポーションがあるのだから、魔力を回復するポーションもあるだろう。

 召喚で手に入りそうだけど、入手手段を運頼みにしたくないからできればどこかで購入するか、値段が高ければ自分で作れるようにしたいよな。

《創生》で創れるようになるのだろうが、スキルレベルの低い今のままでは無理だろうから、《調合》や《錬金》みたいなスキルが手に入るといいんだが……

 いや、他のスキルも《創生》と同じようにスキルレベルがあるのだとしたら、どっちにしても直ぐに作れるようにはならないのか?

 まあ、考えてもわからないな……


 次に魔力を増やす手段だけど、よくラノベなんかだと限界まで魔力を使うことで増加する場合があったけど、今の倦怠感を考えると魔力を使いすぎるのは危険な気がする。

 とすると、魔力が増加するようなスキルを入手するか、地道に何度も魔法やスキルを使うことで魔力が増えるのを祈るしかないかな。

 もしくは、この世界に魔物がいるのであれば、倒すことでゲームみたいにステータスが上がるといいんだが……


 そんなことを考えているうちに、俺はいつのまにか寝てしまうのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る