再会

 私が通された部屋は、外観から想像した通り、高級品があちこちに飾られている天井の高い部屋だった。

 昔ならお姫様が座ってたんじゃないか、と思うような椅子に座るように勧められる。

 私はまた遠慮がちに、その椅子に腰かけた。女性は「お待ちください」と言うと、私を部屋に残し、部屋を出た。

 女性が部屋を出てから、部屋を見回す。

 部屋には絵画が多かったが、その中の一枚に父親の姿を見つけた。

 私は父親に生き写しと言われたことがある。それで祖母にお願いして、父親の写真を見せてもらったことがある。

 その写真の父親が今、目の前の絵の中にいた。私は立ち上がり、絵の前に立った。

 絵の中の父は笑顔でこちらは見ていた。

 その笑顔はとても優しく、愛する人に微笑みかけるようだった。

 絵の前で私がぼんやりしていると、女性は帰ってきていた。

「それはあなたのお父さんです」

 静かにそう言われ、ハッとして振り返った。

「なぜ、ここに父の絵が?」

 私はそういいながら、女性が持ってきた人形を見て、ぎょっとした。

 着物こそ、着ていたが、その人形の顔は父親の顔だった。

「なんで?」

 私の心の声が漏れる。

 ここに来たのは間違いだったのでは?そう思う気持ちで動悸が起こった。怖くなっていた。自分の知っている顔そっくりな人形というもにがこんなに気味が悪いものだとは思わなかった。もちろん、私にも似ている。

「この写真を見てください」

 そう言って女性から渡された写真には、仲むずましい二人が写っていた。

 一人は父親。そしてもう一人は面影が女性に似ているが、明らかに男性だった。

「あなたのお父さんと私の弟です」

 女性は淡々とそう告げた。

 ああ。私はすべてを理解した。

「私の父とあなたの弟さんは恋人同士だったんですね」

 私がそう言うと、女性は頷いた。

「弟さんは今、どうされてるんですか」

「弟はずいぶん昔に死にました」

「まさか、母が?」

 私の言葉に女性は首を横に振った。

「弟は病気でした。不治の病で、もう助からいと分かり、あなたのお父さんと別れたのです。弟が病気で死ぬことはあなたのお父さんは知らないままです。弟の心変わりということにしたようです。そして別れるときに二人にそっくりなこの人形を作ったのです。そして、あなたのお父さんの人形を弟が持ち、弟の人形をお父さんが持ったのです。道ならぬ恋なので、仕方ないと思い、お父さんもお別れに同意されたのだと思います」

 そこまで言うと、座りませんか、と声をかけられた。

 私は椅子に座り、女性と向かい合わせに座った。

「では、なぜ父は死んだのですか」

 私は恐ろしい真相を想像しながらも、勇気を持って尋ねた。

「あなたが思ってる通りよ。あなたのお母さんがお父さんを殺してしまった。」

 それを聞いた瞬間、私の目の前は真っ暗になった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る