第89話 偽称ドラゴン

 ベースキャンプは幾つもの大きなテントが並んでいた。そしてマジで行き交う者は皆美人、そしてコスプレをしていた。


 その種類も事前にチワから聞いていた通り様々で、ミニスカ女子高生、ビキニ、ナース、チャイナ、スチュワーデスみたいな現代風のヤツを露出補正をアップさせたヤツから踊り子、女騎士、魔法使いみたいなファンタジー風なのを露出補正アップさせたのまでいる。


 一部SFっぽいのもあった、あの露出補正はほぼゼロだが身体のラインがハッキリでるラバースーツの未来バージョン、女性の方は良いけど野郎の方はノーセンキューなアレを装備してる美人もいた。


 武器の類は剣とか弓とかの文明レベル中世なヤツなのだがね。まあそんなのまでダンジョンから出て来てたら世界観が台無しになるからそこはダンジョンマスターを褒めてあげよう。


 そして行き交う美人に目を奪われているのは私だけではない。就活軍団もだ、やはり無職集団は異性にも縁が無いのか視線をキョロキョロさせながら驚きの声をあげている。


「なっなんだあの格好は…殆ど裸みたいな水着を着ている者がいるぞ」

「ここはダンジョンなんだよな?」

「あのピンク色の服装は一体なんなんだ、やたらとスカートが短くて胸元を露出しているな」


 アレはビキニとナースですな。どちらも美人が着てる上にエロさがパワーアップしていてポイント高い。


「アレは魔法使いか? ローブの下の服装が…」

「それならあの騎士の鎧はなんなんだ、胸元以外にもヘソや太ももをわざと出してる」


 魔法使いはローブの下はいもくさい服装ではなく、不自然なまでに露出補正された私服であった。一肌脱げば逮捕されそうなヤツである。

 女騎士も何一つ防御力に期待出来なさそうな謎の鎧を装備してる、まあ胸元解放は私も食らってるので偉そうな事は言えないがな。


 行き交う美人達を見て、自分達もあんな装備をする事になるのだろうかと若干不安そうにしている就活軍団。そんなの私だって見たくないのだよ、何とかパチもん美人達にはその手の装備には手を出さないで欲しいもんである。


 しかし予想はしていたがこの光景はそれを超えてきた。ここはある意味男の理想郷なのかもしれない、一部にガワだけの連中も混ざっているがそんな汚物には視線を向けなければいい。


 行き交う女性は若く美しく、スタイルも抜群からツルペタまで様々なニーズに応えている。確信した、ここのダンジョンマスターはとんだスケベ野郎だと。許せない、ありがとうございます。


 そんな美人達の光景に驚愕する就活軍団、そこに一人の見知ったヤツが現れる。

 黒髪を肩にかかる辺りで切り揃えたセミショート、そして青い瞳の美少女剣士のエリカである。


 以前と変わらず装備してるのは軽装の鎧だ。少し残念な気分のドラゴンである。


「あっもしかして新人さんかな? まっ私や仲間もここに来てばっかりの新参者なんだけどね」

「あっああ、少し驚いていた所だ。ここに挑む冒険者はみなあんな姿をしてるのかと思ったぞ」


「アレね? 何でもこの先から行けるダンジョンには結構宝箱があって、中にはあんな装備が沢山あるらしいんだ。 見た目はアレだけど魔法が付与されていて下手な鎧よりも守りは堅いらしいよ? 私は着ないけど」


 エリカとワカメヘッドが話をしているうちに思案する。はたしてここで私は自らの正体を明かすべきなのかと、だって怪我かなんかでドラゴンライダーだけど戦闘には不参加ってスタンスだったからさ。


 今更全て嘘だと言うにはもっとタイミングが良い時を狙いたい。少なくともここでそれを説明する事はしたくなかった。

 ゴブリンの時とかも戦えるのに戦えないふりをしていた事を指摘されたら困るからね、ここは適当にモブキャラを演じて。


「………ん? な~んかその鎧、ウチの出資者様の鎧に似てるね」

「そっそうですか?」


「私はエリカ、見てのとおり剣士よ。貴女も冒険者よね? もし良ければ自己紹介しない?」

「……………」


 やはりモブキャラになるには今のドラゴンは美少女過ぎてしまってようだな、仕方ない……。


「私の名前はアージェン、職業は暗黒騎士です。よろしくお願いしますね」


 私は自らの職業を偽称する事にした。どうせドラゴンライダーだったとしても乗るドラゴンもいないので何とでも言えるから問題ないのである。

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