第88話 正当化ドラゴン

 さてっ私の出る幕は終わったので再び就活軍団にダンジョンのモンスターの相手は任せてしまおう、私は後ろの方でボス顔をしていた。


 ここは既にダンジョンの中と言ってもいいのかも知れないがやはりダンジョンのメインとは違う、見てのとおりモンスターはいても宝箱とかみたいなダンジョンのお約束的なのがないからだ。


 無論ダンジョンマスターがけち臭いヤツとかはダンジョンの財宝をダンジョンの一番奥のおく~に隠してるタイプのヤツもいる。

 しかし道中に何にもないとか頑張ってダンジョンを進んでる冒険者からすれば酷い話だ。


 努力に対する報酬がないなんて有り得ない、ご褒美を寄こさない会社と上司は死刑であるがモットーのご褒美ドラゴンはそんなけちなダンジョンが大嫌いだ。以前私に財宝を根こそぎ奪われたアホな神族がいたけど、ヤツのダンジョンはまさにそんな感じだった。


 数日前探索した結果お宝ゼロである、だからもうやる気も無くしたのでドラゴンの暴力でさっさと解決したのだから。


 そうっあの時のダンジョン粉砕もなんやかんやと言われるが……私のしたことは正しかったのだ。

 そうに決まってる。まあ最期には島を一つ消してしまったのは少しアレだったとしても概ねドラゴンさんのする事に間違いなんてないのだよ。


 私は自らを正当化した。


「アーク様、島のモンスターは問題なく倒せる相手だ。このまま一気に攻略出来ると思いますか?」

「流石にそれは早計ですね、ダンジョンは基本的に幾つかステージがあります。例えば…」


 私は浅はかな就活軍団全員に歩きながら説明した。以前破壊した島のダンジョン、あるいはなんたらって女王様の時もだが大抵我々が冒険する舞台ってのは何かのタイミングで様変わりする、それこそゲームのステージをクリアしたら全く新しいステージへと続くように。


 ダンジョンはそれだ、先ずは島の地上を探索しその後は大抵ダンジョン側が用意した広大な遺跡やら地下空間、或いは異空間へとステージが移り変わっていく。


 出て来るモンスターの種類や厄介さも当然パワーアップしてくるだろう、地上で雑魚モン相手にブイブイ言わせてる程度でダンジョンを攻略した気になるなど百年早いわ!


 そんなことを話した、所詮この場にいるのは美女でも美少女でも全てはガワだけの連中である、暴言も吐くにも躊躇なく言えるというものだ。

 しかしその考えだとこの裏の世界で出会った女性の大半が本来はモンスター、その元々の姿も……いやっこれについては思考しない。


 世の中とかそういう物だ、かくも奇妙な関係で成り立っているのである。

 まあそれはいいとして、現在ダンジョンでエンカウトするモンスターは戦闘重視のモンスターばかりだ。


 しかし本来ならダンジョンコアの力で様々なモンスターを生成出来るダンジョン側からすれば同じようなモンスターばかり並べても芸がないと思われるので普通はしない。


 基本的に冒険者のパーティーと似た感じで幾つかの役割を持つモンスターをダンジョン側は用意するのだ。中でも先制攻撃で冒険者の頭数を減らそうってモンスターを多様してくるダンジョンはクソである。


 そういう問答無用なダンジョンは冒険者から嫌われる。当たり前だ、冒険者から目の敵にされるようなモンスターを量産するダンジョンとか有り得ない、高難度を謳い文句にするダンジョンとかドラゴンさんがダンジョンの外からドラゴンブレスで消し飛ばしてしまうよ?


 まあダンジョンに対する思いは人それぞれ、その鬼畜さが良いと言うマゾマゾ族も世界にはいる。そういう連中の存在は許容する私だ。

 世の中は広くてなんぼって所あるじゃない。


 やがて就活軍団の足が止まる。

 モンスターは出て来なくなり代わりに何かしら発見したようである。


「ベースキャンプ地だ! この先に冒険者達が作ったベースキャンプ地を見つけたぞ」


 そう、以前チワが言っていた先の方にあると言うベースキャンプ地。そこを私達は目指していたのだ。何でもこの近くに新しいダンジョンの入口があるはずだからな。


 さらに個人的な思いとしては様々なコスプレをした美少女やら美女がいるらしいと聞いたので一度は足を運ぼうと決めていた。


「ここについては事前に情報を得ています、危険はないはずなので向かいましょう」

 私の言葉に返事をする就活軍団、私もコスプレを楽しみにしながらベースキャンプへと向かった。

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