第85話 プリンセスティアラ

 何やら話がきな臭くなってきた。コイツらが何を言ってるのかあまり聞きたくなくなってきたぞ。


「ああっ、あの人間の世界にいた竜だろう? 目覚めて直ぐに違法とは言えダンジョンを一つ潰してそこのお宝を根こそぎ奪ったって言う…」


「その通りだ、お陰で中小規模のダンジョンは次は自分達のダンジョンが竜の気まぐれで潰されないかとビビりまくってしまった」


「その結果として必要最低限の人数以外はダンジョンを畳むから一斉解雇って訳か…」

「その通りだ」


 う~わなんか、この場にいたくなくなってきたな。もう帰りたくなってきた。


「俺達はなんとしても新たな仕事先が欲しい、その為にここまで来たんだ…」

 ヌメヌメはその眼に強い意思を宿していた。なんか瞳の奥にやる気の炎が燃えている。

 しかしそんな眼をされても私にはどうする事も……ハァッ。


「ならこの島のダンジョン、そのダンジョンマスターの所まで行って直談判してみます?」

「そっそんな事が出来るのか!?」


「出来ます、ようはブレシアさん達を追い返せして実力を見せるのではなく。このダンジョンを踏破して実力を見せるんです、無論それで雇ってもらえるかまでは分かりませんが…」


「いやっそれでも構わない、ダンジョンマスターと一度でもいいから直接面接を希望したい」

「…そうですか」


「そして出来ればあのピンク髪の女は倒してしまいたいな」

「…………」

 そこは私怨なのでノータッチである、余程好き勝手な言動をしたのだろうかねそのピンク髪の人。


「けどアーク、このダンジョンは…」

「そこは問題ありません。実は少しこのダンジョンの攻略を進めて、男でも先に進める可能性の高い方法を思いついたんですよ」


 私はアイテムボックスから『プリンセスティアラ』を取り出して正座モンスター達に見せる。


「こちらの魔法のアイテムにはそれなりに強力な変身系の魔法が付与されています、要はこれと同等以上の魔法で姿を美女や美少女に変えられればダンジョンに侵入出来るんですよ」


 正座モンスター達とブレシア達が少しザワつく。

「そのアイテムに付与された魔法、かなり強力な代物だろう? それ以上の魔法を使えるヤツなんて国の宮廷魔導師レベルじゃないか?」


「そうでしょうか、案外いる所にはいますよ?」

 いまいち現状が理解出来ていないようなのでもう私が話を切り出した。


「つまり私がその魔法を使えます、そして貴方達をダンジョンに侵入可能にしてダンジョンの最深部にいるであろうダンジョンマスターの元に連れて行きますのでそこからはそちらで頑張って下さいって話ですよ」


「ダンジョンの最深部になんて、アンタにそんな事が可能なのか?」

「可能です」


 先程、私の正座スパークペインを食らった連中なので魔法の腕については質問をしてくる者はいなかった。

 こちらとしても万が一このお目覚めドラゴンが考えなしに異世界ライフを送った結果この世界に不景気を持ち込んでしまったのなら流石に無視するのもアレなので多少は力を貸しましょうって話だ。


 まあこの連中に私がドラゴンである事は絶対に知られない様にするつもりだけどな。

「あっブレシアさんにはこれを…」

「これは『若返りのポーション』じゃないか」


「これから少しダンジョンに行ってくるので今のうちに渡しておきますねお代は要りません」

「……良いのかい?」


 これも美人からのポイント稼ぎの一環である、早速私は正座モンスター達を引き連れて島の方に向かった。後船を少し見て壊れた所は魔法で修復とかもしておこうかな、これで双方の関係を少しでも良くしておきたい。


 ブレシア達は船に残ると言うので私と正座モンスター達だけで島の結界の傍まで移動する。

 そして結界を指でチョンチョン、やはり弾かれるな。それでは早速…。


「先ずはこの『プリンセスティアラ』で本当にダンジョンの結界を通り抜けられるのかを試して見ますか」


 正座モンスター達を見るが誰も自分が『プリンセスティアラ』を使ってみようとするヤツはいなかった。どうせ直ぐ私の魔法で美人か美少女になるってのにコイツらは…。


 そんな消極的な態度だから以前勤務していたダンジョンからクビを言い渡されるんだぞ!

「…………それじゃあ私が使ってみますよ」


 渋々だが私自身が試すしかないか、やっぱりこんな連中見捨てた方が良かったかもと思わなくもないな。取り敢えず頭に『プリンセスティアラ』を乗せる私だ。


 すると全身が淡く光出した、その光は徐々に強くなり私の全身を光のヴェールで覆った。そして数秒間程経つ。

 その光のヴェールが消えた後には変身した私の姿があった。


 黒髪黒目なのは男の姿の時から変わらず、しかし髪は肩まで伸びてサラサラ感がある。顔立ちも女性らしくそして整った顔立ちをしていた、体付きは私自身の嗜好が影響したのか出る所はしっかり出ていて腰は括れてる。


 太ももとかムチッとした感じなのに腕や足は細く女性らしい感じだ。年齢は十八歳から十六歳に位に変更した感じである。


 確かにこれなら美少女だと言ってもどこからも文句は出ないレベルだと言い切れるな。そして頭には『プリンセスティアラ』を着けていて着込んでるのは服じゃなくてドラゴンライダーの黒い鎧である。


 しかし鎧のデザインが少し変わっていた、なんかゲームに出て来る女キャラで鎧を着込んでるヤツにありがちな不自然に胸元の部分がなくなったり腰がスカートになっていたりしてる、何だよこれは…。


 まあいいか、話を進めよう。


「………それでは」


 そして結界に手を伸ばす、結界は美少女ドラゴンを弾き返す事はなかった。その場の正座モンスター達から驚きの声が上がる。


「どうやら成功のようですね、後のモンスターの方達は私の魔法で代用しますのでそこに並んで下さい」


 『プリンセスティアラ』による変身が問題ないなら私の魔法でもいける筈だ、私は正座モンスター達に変身魔法を発動した。

 ちなみに正座モンスター達はとっくに正座は辞めていたりするぞ。


 

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